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「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

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「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

3年前に写真家として活動をスタート。まだ幼い二人の子どもの母親でもある。

さまざまな家族の姿を撮る写真家のあつみ・サリバンさん。被写体の親子、兄弟姉妹、夫婦の方々の関係性などが、不思議なほどギュッとキャプチャされているような印象を抱きました。撮影した写真やご自分の生活についてインスタグラムに書かれているコメントがとてもざっくばらん。どんなふうに写真と向き合っているのかぜひお話を聞いてみたいと思い、取材を申し込みました。

【公式サイト】www.atsumisullivan.com
【公式インスタグラム】www.instagram.com/atsumi_sullivan/

「日本の外に行こう」と思っていた子ども時代

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

私が初めて日本の外を意識したのは、小学校低学年のある日のことです。5歳離れた姉が友達から借りてきたイギリスのスパイス・ガールズのビデオを見ていて、衝撃を受けました。「世界どこかに、髪の毛が赤い人や金色の人がいるんだ!」と。田舎に住んでいたので、その衝撃は本当に大きかったです。そこから「私もそんな人たちに出会いたい」「日本の外に行きたい」という思いが強くなりました。

そして偶然、中学生の時に愛知県尾西市の姉妹都市ニュージーランドのオークランドに行くことができ、高校生の時は交換留学生としてコネチカット州に行きました。その後、社会人になってからオペア留学でニュージャージ州に行ったのですが、そこで今の夫と出会い、結婚。彼の地元のワシントン州に落ち着きました。ここは自然も多いですし、子育てするにもいい環境ですね。

カメラを買ったきっかけは夫婦喧嘩

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

昔からカメラには興味がありました。物心ついた時からフィルムのカメラを持っていて、小学校の低学年の頃から写真を撮って現像もしたりしました。

でも、フォトグラファーとして使うようになったカメラを買ったきっかけは、妊娠中の夫とのケンカです(笑)。夫は山登りがすごく好きで、道具がたくさんいる上に、どれも高いものばかり。私が妊娠中でも、「今しかないから」と登山に行くので、「私はどこにも行けないのに、私の趣味はどうなるの?」と。それで、Costco に行ってカメラを衝動買いしました。あまりインスピレーションがわく話しではないと思いますが、やりたいなという気持ちはずっとあったので、怒りが爆発した時に、それまで抑えていたものが飛んだのでしょうね(笑)。

そもそもそのカメラは生まれてくる娘の写真を撮りたいと思って買ったのです。でも、最初は散々でした。今はお蔵入りのような写真です(苦笑)。

家族の形をとらえる写真を

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

写真家として仕事を始めて、もうすぐ3年になります。たくさんいる写真家の方々の話を聴くと「写真の学校を卒業している」「写真を専攻している」「構図を勉強している」と言われます。私は学校で写真を学んだことがなく、すべて実践を通して学んでいるので、基礎知識がないからこそ、大胆な構図で撮影ができていると思うようになりました。本当に「いい」と思ったところに、ためらいなく踏み込める。そうして撮っていく中で、さらに理解を深めて、毎回毎回「次回はこうしよう」と考えて、成長していると思います。まさにフィーリングで進めていると言って差し支えないですね。

なので、撮影する時は、クライアントさんとお会いして、”Nice to meet you.” 「はじめまして」から始めて、すぐにそこを突き抜けて「私は家族の一員です」という気持ちになって進めます。日本人だとかしこまるところがあると思いますが、挨拶が終わったら、大切な礼儀を踏まえたうえで、クライアントさんが撮影を本当に楽しんでくれるよう、自分も楽しみます。

その間に、お子さんがよく笑う家庭だなとか、お子さんが緊張しているなとか、大人の方が無口だなとか見ながら、この家族が普段からどんなふうに接しあっているかを感じていきます。例えば、七五三の撮影をさせていただいたあるご家族の場合、家族全体に一体感がありました。誰と接しても、あまり差がなく、親御さんたちもお子さんも同じトーンだったのです。話し方も穏やかで、コミュニケーションもすごく取れている。私がそう感じたら、それが感じられる写真を撮影することができました。

新生児はすべてがかわいいのですが、まだお話ができないからこそ、撮影する私が感覚を研ぎ澄ませ、「この赤ちゃんは何を求めてるんだろう」「この赤ちゃんは何が欲しいのかな」「どういうふうにしたら寝やすいのかな」といったことを考えながら、撮影していきます。

ありのままを撮るということ

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

どんな写真を撮影するのかと聞かれたら、私は「ありのままを撮ります」と言います。何かを表現するというよりは、その写真を見た時に、クライアントさんが何を思うかということを、いつも考えますね。

人生は楽ではない、人生は厳しいことがたくさんある、と私は思っているので、その中で、私が撮ったこの写真がどれほど助けになるだろうかと思うのです。新生児の写真を撮ったら、「そのお子さんが大きくなった時に、この写真がどれだけ勇気を与えられるか」と考えます。また、そのお子さん、親御さん、おじいさん、おばあさんなどのまわりの方々が、人生のどの時点で見ても常に何かを与えられる、そんな写真を撮れたらと思っています。だから、「ありのままを撮りたい」という気持ちがあります。だから私もありのままでいたいと思うのかもしれません。インスタグラムのストーリーを通して、私という人間がどういう人間か知ってもらえるようにしているのも、それが理由かもしれませんね。

マーケティングにはインスタグラム、ピンタレスト、そして自分のウェブサイトを使っていますが、実際にビジネスに結びつくのは、やはり口コミです。まわりの友人やクライアントさんが次のクライアントさんを紹介してくださったりすることが本当にありがたいです。

惹かれるのは、人との出会い

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

本当に最近になって気づいたのですが、私が何に惹かれているかというと、写真を撮影するということがきっかけで、人に出会えることなんですね。

始めてまだ3年ということもあると思うのですが、撮影が終わった後も友達のようにメッセージをくださる方もいらっしゃいます。それを自分も楽しみにしているんだなと感じます。

年を重ねると、自分が心地いい範囲から出たくないという気持ちが出てきたりしますよね。でも、仕事がある、撮影がある、ということによって、その心地いい範囲から抜け出ることができます。写真を通して、自分がもっともっとオープンになっている気がします。

パンデミックの影響

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

子どもがもっと幼かったころは、寝かしつけてから午前2時頃まで仕事をしていました。でも、あまり無理もきかなくなってきたので、パンデミック中に仕事のやり方を見直しをしました。昨年の6月からとっている体制が、朝の4時に起きて仕事をして、日中は子どもと過ごす。それが私の「両立」という形です。

パンデミックでは撮影の仕事が一時的にできなくなりましたが、2021年の仕事の体制を整えるのにいい時期だったと思うようになりました。また、家族と毎日一緒にいることで、私はこの家族と合ってるんだなと感じ、家族愛を知ることができたので、良かったと思います。

そんなふうに思えることが、仕事にも反映されています。いい写真を撮るには、自分がいい状態でなくてはなりませんから。その状態にどう自分を持っていくか。それには、朝早く起きて、自分の時間を持つことが大事。そして、「いいことをしよう」という意識を常に持って生活することで、そういうメンタルを保つことができると、パンデミックによる自宅待機を通して学びました。

子どもと一緒に過ごす時もそうです。どんなふうにいいことができるか。例えば、近所の人と出会った時も、「子どもたちが見ている」と意識している時こそ、”Hello” だけで終わらず、”Hello, how are you?” と言うのが当たり前なんだと、私を見て身につけてほしいなと思っています。子どもたちがいるというのは大きいですね。応援されている気がします。

「つながりを大切に」

「惹かれるのは、人との出会い」写真家 あつみ・サリバンさん

今は旅行が難しい状況ですが、今年の夏は東海岸進出を目指しています。より多くの人と出会えるように。なぜ東海岸かというと、やはりそこが私のアメリカでのルーツで、留学生だった時のホストファミリーに会いたいですし、撮影してその時の恩返しもしたいからです。その方々がいたおかげで今の私があるので。思い出を大事にするというより、つながりを大切に、と思っていますね。

あと、心がけているのは、私には専門知識はないことですが、まわりのお母さんたちのサポートをしたいと考えています。お話ししたように、インスタグラムのストーリーを使って、日常の葛藤を伝えることで、「私も一人のお母さんで、日常の葛藤もあるし、子育ての問題もある、普通の葛藤もある。その中でもフォトグラファーの自分を、一人の人間として大切にしている」と、「見せる」わけではないのですが、「伝える」ことで、「なんだ、あつみにできるなら私にもできる」と、お母さんたちに自信を持ってほしい、勇気を持ってほしいと思ったりしています。自分自身もまだ完璧にできているわけではありませんが、もっと自分を大切にしてあげられる女性を増やしたいとひそかに思っています。

好きなこと、やりたいことをしている人はキラキラしていると思うんです。そういうのは子どもが見ているから、違う面で子どもが育つ。それはとても大事なことですよね。私が自分をありのまま見せることで、何か一歩出すことにつながらないかなと思っています。

掲載:2021年5月

取材後記:写真にとらえられた表情Zoom でお話しすること約2時間。いつも「なぜこのお仕事をされているんだろう」「そのお仕事に対する熱い思いは何なんだろう」「そこに至るまで、そして今は、どんな思いを持っているんだろう」と、いつも好奇心いっぱいでお話を伺うのですが、お話しし始めた時に感じたのは、スッと相手に寄りそうような、構えず、飾り気のないお人柄。「そのお子さん、親御さん、おじいさん、おばあさんなどのまわりの方々が、人生のどの時点で見ても常に何かを与えられる、そんな写真を撮れたら」という言葉にグッと来ました。

掲載:2021年5月 聞き手:オオノタクミ



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