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プリンス・ウィリアム・サウンド(3)

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各漁業基地が孤立している広いアラスカでの移動は、どうしても飛行機に頼らざるを得ません。ちなみに、米国での人口あたりのセスナのような小型機の普及率はアラスカ州が一番と言われています。

飛行機といえば、20年前頃、このプリンス・ウィリアムズ・サウンドにあるコルドバ(Cordova)からアンカレッジ(Anchorage)の南のキーナイ半島にある陸の孤島ポートグラハム(Port Graham)までの約250マイル(約400km)を、車輪が機体についたまま飛行する小型機で移動したことがあります。鮭の検品のため、どうしても行く必要があったのですが、プリンス・ウィリアムズ・サウンドの横断中はガスで大変視界が悪く、レーダーもなく、パイロットは感だけで海面すれすれに飛行し、その2~3時間は生きた心地がしませんでした。この小型機をチャーターして同乗した契約先の現地の水産会社の社長さんも本を読むどころではなく、やはり心配そうに外ばかり見ていましたが、なんとか目的地に着き、2人でほっとしました。

いつごろのことだったか、いつも通り鮭の検品と商談のため、日本からのお客様2人と共にアンカレッジからプリンス・ウィリアムズ・サウンドにあるバルデイーズ(Valdez)行きのプロペラ機に搭乗し、最後部の5人がけの席の真ん中に筆者、左側に日本からのお客様2人が座ったことがありました。筆者のすぐ右隣に中年の白人男性でした。シートベルトをし、客室乗務員が機内の安全確認を搭乗者に伝えた後、エンジン音が大きくなり、滑走態勢に入りました。滑走態勢に入る前後から、右隣の男性が何かぶつぶつ言いながら、両手に握りこぶしをし、苛立っている様子。筆者自身も非常に恐くなり、何かが起こると直感しました。案の定、機体が動き出した同時に、その男性は「飛行機を止めろ」と怒鳴り、客室乗務員が静かにするようになだめましたが状況は悪化する一方。エンジンはフル回転で離陸寸前でしたが、客室乗務員が機長に搭乗者の異常を伝え、結局、機長は離陸を断念し、ターミナルに引き返しました。本人を降ろした後は何事もなかったのようにアンカレッジを離陸しました。

後で、2人のお客様から、飛行機を降ろされた男性の隣に座った筆者は緊張で顔が青ざめ、またその男性は顔から脂汗が出ていたことを聞きました。個人的な見解ですが、この搭乗者の異常な行動は、爆撃戦闘機音か爆弾の炸裂音などがこの飛行機のエンジン音と重なり、何か悪いことを思い出したのではないかと推測します。と申しますのは、今年のアカデミー賞にノミネートされた話題作 『硫黄島からの手紙』 を観覧しながら、そうだこの音だったかと思ったからです。

さて、今年も、このプリンス・ウィリアムズ・サウンドにあるコルドバ(Cordova)から新物のアラスカはカッパーリバー(Copper River)産の生紅鮭(sockeye salmon:ソッカイ・サーモン)、およびキング・サーモン(king salmon、別名:chinook:チヌーク)が、本日宇和島屋各店に入荷しました。ぜひ、旬の天然鮭をご試食下さい。

掲載:2007年5月

『お魚豆知識』 は、宇和島屋鮮魚部の沖良三さんが発行している 『Seafood Newsletter』 の一部です。宇和島屋の入荷商品やおすすめ商品の情報が満載ですので、ぜひご購読ください。お申し込みは seafoodnews@uwajimaya.com まで、日本語でどうぞ。



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