夕方、玄関のチャイムが鳴ってドアを開けると、魔女やスーパーヒーローの格好をした子どもたちが「Trick or treat!」と声をそろえる。アメリカの住宅街では、10月31日の夜によく見られる光景です。初めてのハロウィンで、何を用意すればよいのか、玄関の明かりはつけておくべきなのかと戸惑った人もいるかもしれません。
日本でハロウィンといえば、繁華街に仮装した大人が集まる様子を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、アメリカでも大人向けのイベントもあるものの、一般的には子どもと近所の人たちが主役の行事として根づいています。
2026年のハロウィンは10月31日(土)です。この記事では、ハロウィンの由来から、トリック・オア・トリートの習慣、配る側の準備、子どもと歩くときの安全対策までを整理します。
ハロウィンとは
ハロウィン(Halloween)は、毎年10月31日に祝われる秋の行事です。10月に入ると、かぼちゃをくり抜いたランタン「ジャック・オー・ランタン(Jack-o’-Lantern)」が住宅の玄関先に並び、お店やカフェもハロウィンの飾りつけで彩られます。
当日のあいさつは「Happy Halloween!」。家庭や職場、学校でも、この一言を交わします。仮装した子どもたちが近所の家やショッピングモールなどを回ってお菓子をもらう一方で、大人は仮装パーティーを楽しみます。
日本との大きな違いは、子どもと近所づきあいが中心にあることです。全米小売業協会(NRF)の2026年の調査でも、ハロウィンの過ごし方として最も多かったのは「キャンディを配る」の61%でした。子どものいる家庭や子どもの多い地域では、近所の人と顔を合わせる季節の行事として受け入れられています。
ハロウィンの由来
ハロウィンの起源は、古代ケルト人の祭り「サウィン(Samhain)」にさかのぼります。中央・西ヨーロッパに暮らしていたケルト人は、11月1日を新年としていました。この日は暖かい季節と収穫の終わりと、暗く寒い冬の始まりでもありました。
ケルト人は、新年の前夜には生きている人の世界と死者の世界の境目があいまいになり、死者の霊が地上に戻ってくると信じていました。10月31日の夜には大きなかがり火をたき、動物の頭や皮で作った衣装を身につけて祭りを行ったとされています。
西暦43年までに、ローマ帝国はケルト人の土地の大半を征服しました。その後の約400年の間に、ローマの二つの祭りがサウィンと結びつきます。死者をしのぶ「フェラリア」と、果物と木の女神「ポモナ」をたたえる祭りです。ポモナの象徴はりんごで、水に浮かべたりんごを口でくわえる「アップル・ボビング(Apple Bobbing)」の遊びは、ここから来ているとみられています。
名前の由来はキリスト教にあります。8世紀にローマ教皇グレゴリウス3世が、11月1日をすべての聖人をたたえる日(諸聖人の日)と定めました。この日は「All-hallows」とも呼ばれ、その前夜が「All-Hallows Eve」、やがて「Halloween」と呼ばれるようになりました。イングランドでは、家々を回る貧しい人に「ソウル・ケーキ(Soul Cake)」という焼き菓子を配る習慣があり、これがトリック・オア・トリートのもとになったと考えられています。
History.com によると、アメリカでは植民地時代、ニューイングランドではプロテスタントの厳しい信仰からほとんど祝われず、メリーランドなど南部の植民地で祝われていました。ヨーロッパのさまざまな民族と先住民の習慣が混ざり合い、収穫を祝う集まりとして独自の形が生まれていきます。全国に広まったのは19世紀後半です。ジャガイモ飢饉(Irish Potato Famine)から逃れてきた大勢のアイルランド系移民が、その大きなきっかけになりました。今のように子どもたちが家々を回るトリック・オア・トリートが定着したのは、1920〜1950年ごろのことです。
ジャック・オー・ランタン(Jack-o’-Lantern)
かぼちゃをくり抜いて作るジャック・オー・ランタンは、アイルランドやスコットランドからの移民によってアメリカに伝わりました。
名前は、悪魔をだました「けちなジャック(Stingy Jack)」の伝説に由来します。ジャックは天国にも地獄にも行けず、火のついた炭をカブに入れてさまよい続けたとされ、その姿がジャック・オー・ランタンの起源といわれています。
アメリカではかぼちゃが手に入りやすかったため、カブではなくかぼちゃが主流になりました。秋になるとスーパーやファーマーズ・マーケットにさまざまな大きさのかぼちゃが並び、各地の農場では「パンプキン・パッチ」でかぼちゃ選びを楽しめます。パンプキン・カービング(Pumpkin Carving)用のキットを使えば、初めてでも自宅でランタンを作れます。
アメリカではパンプキンが手に入りやすかったため、カブではなくパンプキンが主流になりました。秋になるとスーパーマーケットやファーマーズ・マーケットでさまざまなサイズのパンプキンが販売され、各地の農場では「パンプキンパッチ」で収穫体験が楽しめます。
ハロウィンの食べ物とキャンディ
ハロウィンの時期には、トリック・オア・トリート用の個包装のキャンディが大袋で売られ、かぼちゃ形のクッキーやスイーツも店頭に並びます。パンプキンパイやパンプキンスープ、スパイス入りのラテなど、秋の味覚を楽しむメニューも人気です。
食べきれないほど集まったキャンディは、歯科医院の「キャンディ・バイバック(Candy Buy-Back)」に持ち込む方法もあります。シアトル周辺でもハロウィン明けに行う歯科医院があり、1ポンドあたり1ドル程度でキャンディを買い取ってくれます。集まったキャンディは、海外に駐留する米兵への支援物資として送られることが多いようです。
さらに、パンプキンパイやパンプキンスープ、スパイス入りのラテなど、秋の味覚を楽しむメニューも人気です。
ハロウィンのコスチューム
ハロウィンでは、年齢を問わず仮装を楽しみます。プリスクールや学校でも仮装が許されることが多く、大学や職場でも仮装して参加できるイベントが開かれます。
衣装は手作りでも市販品でもかまいません。猫の耳や悪魔の角などのアクセサリーをつけるだけでも、十分ハロウィンらしくなります。ただし、学校や職場によっては「顔が隠れるマスクは禁止」などの決まりがあります。前もって確認しておくと安心です。
トリック・オア・トリート(Trick or Treat)
トリック・オア・トリートは、ハロウィンを代表する習慣です。仮装した子どもたちが近所の家を訪ね、「Trick or treat!(お菓子をくれないと、いたずらするよ)」と声をかけると、お菓子をもらえます。お菓子を受け取ったら「Thank you!」とお礼を言うのがマナーです。
玄関の明かりがついている家や、ジャック・オー・ランタンが飾られている家は、子どもたちを歓迎しているしるしです。明かりが消えている家は訪ねないのが決まりになっています。
商店街やショッピングモール、公園などで、昼間や夕方早めのトリック・オア・トリートのイベントを開く地域もあります。暗くなってから住宅街を歩かなくても楽しめるので、小さな子どものいる家庭に向いています。
配る側の準備
初めてアメリカでハロウィンを迎える家庭は、配るかどうかを先に決めておきます。配る場合は玄関の明かりをつけ、配らない場合は消しておけば、それが合図になります。
キャンディの量は、子ども1人につき2〜3個が目安とされています。100人来るなら200〜300個です。
食物アレルギーのある子どもへの配慮として、「ティール・パンプキン・プロジェクト(Teal Pumpkin Project)」という取り組みがあります。食物アレルギー支援団体FAREが呼びかけているもので、光るスティックや小さなおもちゃなど、食べ物ではないものを用意している家は、玄関先に青緑色(ティール)のかぼちゃを置きます。青緑色は、食物アレルギーへの理解を表す色です。参加する家は、FAREのウェブサイトの地図に登録することもできます。FAREは、アメリカの子どもの13人に1人に食物アレルギーがあるとしています。
安全に楽しむための注意点
シアトルでは、10月31日の日没は午後6時前です。雨の日も多い季節なので、暗い中でも子どもの姿が見えるよう準備しておきます。
子どもと歩くとき
- 小さな子どもには、必ず大人が付き添う
- 光るスティックや懐中電灯を持たせ、黒っぽい衣装には反射材をつける
- 燃えにくい素材の衣装を選び、視界をさえぎるマスクは避ける
- 名前・住所・電話番号を書いたタグを身につけさせ、帰る時間を決めておく
- 明かりのついた家だけを訪ね、家の中には入らない
- 車道に出ず歩道を歩き、止まっている車にも近づかない
- 「特別なお菓子をあげる」と声をかけてくる人には注意し、連れて行かれそうになったら大声で助けを求める
もらったお菓子は
- 食べる前に、すべて大人が確認する。ワシントン州中毒センター(Washington Poison Center)は、よく知られたブランドの包装されたお菓子だけを子どもに渡し、開けられた跡のあるものは捨てるよう呼びかけています。
- 誤って口にして心配なときは、同センター(800-222-1222)に電話すると助言を受けられます。
車を運転する人は
夕方から夜にかけては、住宅街で子どもが急に道路へ出てくることがあります。いつも以上に速度を落として運転します。
配る家は
- 玄関までの通路につまずきそうな物を置かず、明かりで足元を照らしておく。
- ペットは仮装姿や物音に興奮することがあるため、玄関から離しておく。
当日の前に、子どもの衣装に反射材が付いているかを一度確かめておいてください。
まとめ・関連イベント情報
ハロウィンは、古代ケルトの収穫祭が長い年月を経て形を変え、今ではアメリカ全土で親しまれる季節イベントとなりました。パンプキンランタンや仮装、Trick or Treatといった習慣は、秋を楽しみながら地域とのつながりを感じられる大切な文化です。
2026年も、安全対策をしっかり行いながら、家族や友人とハロウィンを楽しみましょう。地域のパンプキンパッチやハーベスト・フェスティバル、自治体主催のハロウィンパレードなども事前チェックがおすすめです
