アメリカへの入国をよりスムーズにするため、米国税関国境警備局(CBP)が公式提供する無料のプログラム「モバイルパスポートコントロール(Mobile Passport Control、以下MPC :エムピーシー)」があります。この記事では、MPCの特徴、利用方法、注意点を詳しく解説します。
MPCの主なメリット
- 無料で利用可能:専用アプリのダウンロードや利用に費用は一切かかりません。
- 審査の迅速化:MPC専用レーンにより、通常の入国審査より迅速な手続きが可能。
- グループ利用対応:1台のデバイスで最大12名の情報をまとめて提出できます(団体、家族、親子、友人など)。
- ペーパーレス:紙の税関申告書(paper declaration form)記入が不要で手続きが簡素化。
トラステッド・トラベラーズ・プログラムの条件には合致しないものの、審査の高速化を利用したい場合や、トラステッド・トラベラーズ・プログラムの申請を済ませて審査結果待ちの場合にもおすすめであることが、米国税関・国境警備局(CBP)の公式サイトに明記されています。
MPCを利用できる対象者
MPCを利用できるのは、以下の人です。
- アメリカ市民
- 米国永住権(グリーンカード)保持者
- B1/B2ビザを持つカナダ国籍者
- ビザ免除プログラム(VWP)参加国籍者で、ESTA(エスタ)承認済みかつ過去に米国への渡航歴がある人(初めてのVWP利用者は利用不可)
ビザ免除プログラム(VWP)利用者の注意点
VWP参加者がMPCを利用する場合、以下の制限に注意が必要です。
- ESTA(エスタ)の承認が必須:搭乗前に必ずESTAの承認が必要です。
- 初回渡米者は利用不可:初めてVWPを利用する場合はMPCを利用できません。
さらに、以下の条件に該当する場合は、VWP自体を利用できません。
- 2011年3月1日以降、イラン、イラク、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン、または2021年1月12日以降にキューバへの渡航歴がある場合。
- キューバ、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリアとの二重国籍者。
これらの場合、通常の米国ビザ申請が必要となります。
MPCの利用可能な場所
MPCは以下の場所で利用可能です。
- シアトル(SEA)、ロサンゼルス(LAX)、ニューヨーク(JFK)など、アメリカの主要国際空港
- カナダ、アイルランド、カリブ海の一部の事前入国審査施設
- マイアミやサンフアンなど一部のクルーズ港
MPCアプリの利用手順
- 空港の状況確認:米国入国に利用する空港がMPCを受け付けているか確認。受け付けている場合、2へ。
- アプリをダウンロード:Apple App Store または Google Play Store からダウンロード。
- プロフィール作成:パスポート情報をスキャンして個人情報を登録。
- 情報提出:米国到着の4時間以内または着陸直後に自撮り写真を撮影し、アプリ画面に表示される入国審査の質問に回答。この入力内容は4時間のみ利用可。
- QRコード取得:提出後、デジタルレシートとQRコードを受け取る。
- 入国時に提示:米国到着後、MPC専用レーンでパスポートとQRコードをCBP審査官に提示。団体の場合、12人まで一緒に手続きを受けることが可能。
MPC専用レーンがある空港でも、何らかの理由で一時的にMPC 専用レーンがなくなっていることもあります。その場合は、普通のレーンを利用する必要があります。トラステッド・トラベラーズ・プログラム専用レーンは使えません。
MPCとグローバルエントリーの比較
米国の空港で入国審査を加速化するプログラムには、有料のグローバルエントリーというプログラムもあります。どちらも米国税関国境警備局(CBP)ですが、MPC とは違いがあります。ここでは、その違いを簡単にまとめました。
項目 | MPC | グローバルエントリー |
---|---|---|
費用 | 無料 | 5年間120ドル |
申請手続き | 不要 | 申請・面接が必要 |
身元確認 | 不要 | 要 |
指紋(fingerprint)提出 | 不要 | 要 |
アプリ | MPCアプリのダウンロードが必要 | GEアプリまたは空港で機械を利用 |
TSA PreCheck | 含まれない | 含まれる |
利用可能場所 | 一部空港・港 | 一部空港・港・陸の国境検問所など |
入国審査官と対面で質問回答 | 常時必須 | 常時ではない |
入国審査で最終確認のための写真撮影 | 自撮りの写真とは別に必要 | 不要(GEアプリやポータルで自撮り写真の場合のみ) |
利用可能な旅行者 | アメリカ市民、米国永住権(グリーンカード)保持者、B1/B2ビザを持つカナダ国籍者、ビザ免除プログラム(VWP)参加国籍者でESTA(エスタ)承認済みかつ過去に米国への渡航歴がある人(初めてのVWP利用者は利用不可) | 米国市民、米国永住権(グリーンカード)保持者、複数の国の国籍保持者で、審査に合格した人 |
グローバルエントリーは費用がかかり、身元調査などの審査に合格する必要がありますが、TSA PreCheckが含まれる上、最速の入国手続きが可能となります。一方、MPCは、手軽かつ無料で迅速な入国手続きを望む旅行者に最適です。
MPCを活用して、快適なアメリカ渡航を楽しみましょう!