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アメリカで「リモートで働きたい」は合理的配慮になる?米国企業の判断ポイント

Image by StockSnap from Pixabay

RTO(Return to Office)という略語が定着するほど、パンデミック期に広がったリモートワークを、出社と組み合わせたハイブリッド、または完全出社へ切り替える雇用主の動きが話題となっています。

先日SHRM(人材マネジメント協会)が、合理的配慮(Reasonable Accommodation)に関する記事を掲載しました。合理的配慮とは、障害のある従業員が仕事を遂行できるよう、雇用主に過度な負担を生じさせない範囲で必要な変更や調整を行うことです。米国拠点を運営する中で、耳にした方も多いのではないでしょうか。

その記事では、社交不安障害のある従業員への合理的配慮が取り上げられていました。社交不安障害とは、人前で話すことや対人コミュニケーションなど、社会的な場面に強い不安や恐怖を感じる状態です。米国では、一定の条件下で連邦法や州・地方の法律上の障害に該当する可能性があります。

こうした従業員が「リモートワークで勤務したい」と伝えてきたら、皆さんはどう対応しますか?

「出社が原則だから」と断るか、「医師の書類があれば認める」か。しかし、この二択だけでは判断できません。今回はこのケースをもとに、検討ポイントと対応例をご紹介します。

見るべきポイントは、必要不可欠な職務内容

医師の書類があり、本人が希望しているだけで、リモート勤務を認める義務が生じるわけではありません。

合理的配慮の目的は、変更や調整によって従業員が Essential Functions(必要不可欠な職務)を遂行できるようにすることです。ただし、会社にその職務自体を取り除く義務はありません。

例えば、対面での顧客対応や訪問営業、展示会への参加が必要不可欠な営業職では、どのような配慮で職務を遂行できるか、個別の検討が必要です。配慮を行っても遂行できない場合には、その職務の継続が難しい可能性があります。その際も、空きポジションへの配置転換など、他に必要な配慮の検討余地が残る場合があります。

一方、職務の大部分をPC上で行い、顧客や同僚との連絡もオンラインで完結できる職務なら、リモート勤務も選択肢になりえます。

リモート勤務以外の選択肢も検討する

従業員がリモート勤務を希望しても、会社が必ずそれを採用する必要はありません。本人の希望を考慮しつつ、別の有効な配慮で必要不可欠な職務を遂行できるのであれば、その方法を選ぶことも可能です。

例えば、突発的な対面コミュニケーションが負担なら、可能な範囲でメールやメッセージを増やす方法があります。会議での発言が難しい場合には、議題の事前共有やオンライン参加、通院が必要なら勤務時間の調整も考えられます。

従業員が抱える困りごと考えられる配慮の例 
突発的な対面コミュニケーションが難しいメールやメッセージによる連絡を増やす/対外的な職務を段階的に任せる
会議で突然発言することが難しいアジェンダを事前共有する/オンライン参加を認める
通院や治療が必要勤務時間を柔軟に調整する
人の多い場所で強い不安を感じる静かな勤務スペースを提供する

双方向の対話を通じて適切な合理的配慮を検討する

Doctor’s Note などの医師の書類だけで、提供する配慮が決まるわけではありません。医師は、従業員の医学的な制限や必要と考える配慮について情報を提供します。会社はその情報を踏まえ、従業員との双方向の対話(Interactive Process)を通じて、実際の配慮を判断します。本人の制約と必要不可欠な職務を確認し、事業運営への影響も含め、どの方法で職務を継続できるか話し合うことが重要です。

例えば、医師が「週3日のリモートワーク」を推奨しても、それだけで認める義務が生じるわけではありません。必要不可欠な職務を自宅で行えるか、出社による制約は何か、なぜ週3日必要か、別の配慮の可能性がないかを確認します。リモート勤務が唯一有効な方法で、雇用主に過度な負担が生じない場合には、認める必要があります。

検討した選択肢や従業員とのやり取りを記録することも重要です。配慮を認めた理由や別の方法を提案した理由を説明できるようにしておくことで、一貫性のある判断につながります。

土台になるのは Job Description

こうした要請に対応する土台になるのが、Job Description(職務記述書)です。職務の内容や要件を客観的・具体的に定義し、必要不可欠な職務、スキル・経験、所属部署や上司の職位、Exempt・Non-Exempt の分類、想定労働時間、身体的要件や職場環境などを整理します。

採用向けの求人内容だけでは、合理的配慮の判断に必要な情報としては不十分です。また、Job Description の記載だけでなく、実際の職務内容や過去のリモート勤務実績も確認することが重要です。

合理的配慮では、職務に何が必要か、本人にどのような制約があるか、どの方法で職務を継続できるかを確認します。そのうえで、従業員との対話を通じ、リモート勤務以外の方法も含めて判断します。普段から Job Description を整備し、要請時の確認事項や検討プロセスを社内で整理しておきましょう。

執筆者

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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