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第31回 臨時社員及び派遣職員を採用する際の法的手続き

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クリスマスが近づき、小売業者をはじめとする多くの企業では人手不足を解消するため、臨時社員や派遣職員を採用してこの忙しいシーズンを乗り切ろうとしています。

雇用者としては、見通しの立たない経済状況でも売り上げを期待して臨時社員を採用する企業は少なくありません。今回は、そうした臨時社員の雇用に関する法的手続きとその要点を取り上げます。

雇用契約
雇用に関する条件を臨時社員にも了解させることは重要です。雇用が臨時雇用であることと、期間が限られていること、また、”Employment at Will”(解雇自由の原則)に関しては、簡単な告知として書面にすることをお勧めします。後に臨時社員を正社員として迎える場合、何人かのうち一人だけを正社員として選択するなら正当な理由がないと、正社員として採用されなかった臨時社員が差別として雇用者を訴えることも法的に可能です。

Form I-9 (移民に関する書類
正社員はもちろん、臨時社員からもこの I-9 Form が必要です。なお、米国市民ではない人物の場合、臨時採用でも移民局からの労働許可が必要です。詳しくは「第19回 I-9 Form に関わる差別問題を防ぐための注意点」をご参照ください。

企業規定
企業としては、企業秘密情報が漏れないよう、また企業の法的責任の負担が増えないよう、最善の努力をすることが必要です。臨時社員だからといって企業の電子メールアドレスの使用を許可したり、企業の資料や情報を共有したりする場合は、その利用に関する制限や規定を臨時社員にも理解させ、企業が差別防止に関する法律に従っていることを示す資料を渡すことは重要です。その後、社員規定に関する確認書に署名させることをお勧めします。

残業
雇用者の中には、社員を残業代の支払い対象にならない臨時社員として雇い、残業をさせておきながら残業代を支払わない雇用者もあります。業務分野や期間によってはこの扱いは法的に許されています。しかし、規定外の業務分野や期間で働いた臨時社員が残業代の支払いを求めて雇用者を訴える案件が多くありました。また、臨時社員だからといって正社員と異なる昼食時間や休憩時間を与えることも避けるべきです。

未成年者の採用
未成年(18歳以下)の採用に関しては、州から許可をもらうことが義務づけられています。また、未成年者が働ける種類の仕事と時間には制限があります。

福利厚生等
雇用者の中には、臨時社員を1年以上そのまま採用し続けることもあります。もしこの臨時社員が妊娠したり、家族の都合で休暇を取ることを申請した場合は、正社員同様、介護休業法 (FMLA) が該当する場合があります。従って、休業の許可を与えずに解雇した場合は法的問題になりかねません。介護休業法 (FMLA) について、詳しくは第2回のコラムをご覧ください。

解雇について
臨時社員の解雇は正社員の解雇ほど法的な制約がありません。ただし、正社員を解雇して臨時社員を正社員に変更する場合は、差別待遇の可能性も秘めているので、十分検討したうえで解雇を決定する必要があります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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