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労働市場に新たな変化をもたらす:アメリカにおける賃金透明化法の影響

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既にコロナ禍後として経済活動に制限がなくなって久しいですが、日本でもアメリカでも実は感染が再拡大しているのが現状です。そんな中で迎えた2023年、人事関連では例年通りの最低賃金引き上げだけでなく、新たに施行された法律もあることから、今回は再度、給与透明化に関する話題を取り上げます。

ご存じの方も多いと思いますが、「求人広告を掲載する際、給与を明記する」というのが賃金透明化法の主な要件です。これは、女性やマイノリティの賃金が同一の仕事をする男性と比較して低いことを是正することを意図しています。実施される地域はまだ限定的ですが、特にカリフォルニア州法は適用範囲が広く、雇用主にとっての要件も厳しいため、ホームオフィスやリモートワークも含め、カリフォルニア州で従業員を雇用する企業は注意が必要です。

ニューヨーク市の賃金透明化法施行後の現状

早くから候補者に過去の給与履歴を尋ねることを禁止するなど、前衛的な法律を持つ州のひとつであるニューヨーク州にあって、ニューヨーク市では昨年から求人広告の掲載に給与レンジを明記することが義務付けられました。しかしながら、現状ではこれに反発する企業も多いようです。

シティバンクが掲載した求人広告には「給与0~20万ドル」と書かれており、まったく給与の目安になりません。同様に、ニューヨーク・ポストは技術者を募集する広告で「5万~14.5万ドル」、ダウジョーンズはIndeed に出したソフトウェア開発エンジニアを募集する広告で「6万~16万ドル」としており、この法律に対する雇用主側の抵抗姿勢とも受け取れます。

また、ニューヨーク市の賃金透明化法では「Good Faith(誠実)」な給与レンジを開示することとしており、明確な基準は設けられていません。

シティバンクの例はさておき、どこまでが Good Faith と考えられるかは、多数の求人情報に関する苦情を受けたニューヨーク市人権委員会の調査結果が待たれます。

給与レンジが広くても、地域や資格、経験が考慮された結果であれば Good Faith とみなされると弁護士らは考えているようです。

なお、違反を指摘された場合、初回は罰金がなく注意喚起のみですが、30日以内に是正しなければ、最大25万ドルの罰金が課されます。言い換えると、指摘を受けたのちに掲載を取りやめれば罰金を科されることはないに等しくなってしまいます。このため求人サイト Indeed では、賃金透明化法施行前は 27%の求人広告にしか給与が掲示されていませんでしたが、施行後でも61%の開示にとどまっています。

ワシントン州の現状

2023年1月1日より、ワシントン州でも州同一賃金および機会均等法が施行されました。概要は下記の通りです。

なお、募集対象がリモートワークであることから「ワシントン州在住者は応募不可」と記載しても、この法律の適用を回避することはできないので注意してください。

カリフォルニア州の現状

カリフォルニア州でも2023年1月1日より賃金透明化法が施行されました。対象となるのは従業員数15名以上の雇用主で、求人広告に給与レンジの掲載が義務付けられます。

なお、この法律への違反に対する苦情申請は、「違反を知った時点から1年以内」となります。「違反の発生から1年以内」ではないので、保存性の高い紙媒体への掲載には特に気を付ける必要があります。

ニューヨーク州の現状

ニューヨーク州では昨年末にホーカル知事が賃金透明化法案に署名し、2023年9月より賃金透明化法が施行される予定です。

上記以外では、ロードアイランド州やコロラド州も同様の賃金透明化法があり、サウスカロライナ州やマサチューセッツ州でも導入が検討されています。

このトレンドはさらに拡大していく可能性があり、また、賃金透明化法を施行している州で従業員を雇用している場合、仮にリモート勤務であっても適用対象となる可能性があるため、注意が必要です。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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