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第3回 産前・産後のメンタルヘルス

Silhouette of a person standing on a hill under a colorful, star-filled Milky Way night sky for a dramatic landscape.

Photo by Greg Rakozy on Unsplash

妊娠・出産。幸せなはずなのに…。気持ちの面でお困りではありませんか?

妊娠から産後一年は特に、心の面で生涯で一番サポートが必要な時期です。
この時期は、5人に1人がメンタルヘルスの問題に苦しんでいると言われています。

あなたは独りではありません。

今回は、妊娠中や産後のメンタルヘルスのために行える、予防・早期発見をエビデンス(根拠)に基づきわかりやすくまとめています。地域サポートや医療機関の情報は記事の最後をご覧ください。

妊娠、出産のメンタルヘルス。まず知ることから始まります。

妊娠から出産後一年は、妊娠中の人と発育中の乳児にとっても、身体的だけでなく精神的にも重要な時期です。同時に、生涯で一番繊細な時期と言っても過言ではないかもしれません。メンタルヘルスとは、こころや思考の健康状態を指します。

世界保健機関(WHO)の統計によると、この期間中に約5人に1人のメンタルヘルスが著しく低下し、心の病を発症すると言われています。アメリカでも同じく5人にひとり、年間約80万人の方が発症する、最も件数の多い産後の健康問題とも言えます。

自分のケアは赤ちゃんと家族のケアにも繋がります。メンタルヘルス不調の予防を!


妊娠・産後の時期に自分を最優先することは難しいと感じる方も多いはずです。この記事を読んでいる方の中には、日本にいるご家族から離れ、慣れないアメリカの医療システムの中で初めて出産する方もいらっしゃるかもしれません。アメリカに住んでいる期間の長さに関わらず、多くの方は「妊娠・出産が初めてアメリカの医療にしっかり向き合うきっかけとなった」といいます。きっと、それぞれの悩みやストレスを抱えていますよね。

以下の点は身体的にも精神的にもプラスになり心の病の予防につながると科学的に実証されている習慣です。メンタルヘルスの不調を特に感じていなくても、ぜひ取り入れてみましょう。

心の病の最初のサインに敏感に:妊婦編

気持ちが落ち込み、以前楽しめていた場面で喜びをあまり感じられない。根拠のないイライラを感じる。自分に価値があると思えない。罪悪感や絶望感を感じる。考え事がやめられなくて夜に眠れない。疲れやすくベッドからも出られない。これらは最も多く見られるうつの症状ですが、個人によって症状の現れ方は異なります。

特に、睡眠は重要なポイントです。心身のストレスの有無に関わらず、妊娠中に不眠の状態が続くと、産後うつや不安症状のリスクが増加すると実証されています。また、妊娠後期で不眠治療をした人は、不眠の治療をしなかった人と比べて、産後うつの症状を予防または軽減できたことが報告されています。妊娠中に心の病を治療しないことは早産や低体重出産などのリスクと関連しており、また、生まれた赤ちゃんの神経発達にも影響を与えます。お薬の処方が適切な場合もあります。

産後のサインも見逃さずに:産後編

産後のホルモンの著しい変化で2、3日気持ちが落ち込んでしまうが自然に回復する症状を「ベイビーブルー」といい、85%もの人が経験するといわれています。でも、気分の落ち込みなどの症状が2週間以上続く場合は要注意です。

日々の生活や赤ちゃんとの関わりが難しくなるほどの気持ちの変化や虚無感、赤ちゃんが寝ていても自分が眠れない、極度の不安が1日の大半を占める、自己嫌悪を感じるなどは注意が必要であることのサインです。

この他にも個人によってさまざまな症状の現れ方がありますが、最も注意すべきは「自分がいなくなったらいいんだ」などと自死について考えたり、自身や赤ちゃんに害を加える気持ちを持った時です。

そうなった場合、自力で安全に移動できる場合は、家族などに付き添ってもらい、救急外来(ER)を受診してください。

まずは、誰かに話すことから始めましょう。

この記事を読み、少しでも当てはまると思ったら、担当の産婦人科医や、毎年の健康診断、日々の病気の相談などに利用しているプライマリケアークリニックなどで相談してみましょう。

ナースプラクティショナー(NP)、助産師・ナースミドワイフ(CNM)、Physician Assistant(PA)などは医師ではありませんが、各専門分野に加えて基礎的な心のケアと不眠治療の教育を受けているので、診断と処方をすることができます。もっと専門的なケアが必要とされた場合は、紹介状を用意してくれます。まずは、医療機関に相談することが第一歩です。

執筆者より:
残念ながら、人種的マイノリティのメンタルヘルスのケアはまだまだ見落とされがちで、統計的にも改善が必要であると警告されています。その改善活動の一環で、シアトル地域には日本語の資料がほとんどないと痛感することがあります。そこで、日本語を話すコミュニティーにもっと妊娠・出産のメンタルヘルスを知ってもらい、アメリカで妊娠・出産をするにあたって文化的違いや、言語の壁によってメンタルヘルスのサインが見逃されることがないようにと思いを込めて作成しました。

医療機関に関わるのであれば、特に重要なのがセルフ・アドボカシー(自分自身の健康ニーズを主張すること)だと感じています。個々人によって治療の形は異なりますが、アメリカの医療機関で働いて来た筆者の視点から言うと、こちらのメンタルヘルスケアの強みは、患者さんの意思決定を一番に尊重し、共に歩む基本姿勢があることだと考えています。もしも、少しでも心と体に違和感を持つことがあれば、躊躇なく医療機関に相談し、ご自分のニーズを伝えていただければと願っています。

下記の妊娠・出産のメンタルヘルスケアや地域のサポート団体のリソースページもご覧ください。


執筆者

倉本聖良
Sarah Kuramoto, DNP, PMHNP-BC 

シアトルのフリーモントにある個人メンタルヘルスクリニックで、ナースプラクティショナーとして日本語と英語で診察(診断・薬の処方・カウンセラーへの紹介)を行っています。

公式サイト:www.sprucepsychiatric.com/providers/sarah-kuramoto-en
診察をご希望の方はこちら:Request an appointment
※診察を受けたい方は Provider Preference Sarah Kuramotoとご指定の上、ご記入ください。
※患者さんの受け入れはケースバイケースとなります。また、保険をご利用される場合は、事前にBilling Teamにて適用可否をご確認のうえ、ご受診ください。なお、フロントスタッフは英語のみでの対応となりますので、あらかじめご了承ください。

参考:
1. Griffen A, McIntyre L, Belsito JZ, Burkhard J, Davis W, Kimmel M,Stuebe A, Clark C, Meltzer-Brody S. Perinatal Mental Health Care In The United States: An Overview Of Policies And Programs. HealthAff (Millwood). 2021 Oct;40(10):1543-1550. doi:
10.1377/hlthaff.2021.00796. PMID: 34606347.
2. Launch of the WHO guide for integration of perinatal mental health in maternal and Child Health Services. World HealthOrganization. Accessed October 8, 2023. https://www.who.int/news/item/19-09-2022-launch-of-the-who-guide-for-integration-of-perinatal-mental-health
3. Jahan N, Went TR, Sultan W, et al. Untreated Depression During Pregnancy and Its Effect on Pregnancy Outcomes: A Systematic Review. Cureus. 2021;13(8):e17251. Published 2021 Aug 17.doi:10.7759/cureus.17251
4. Poeira AF, Zangão MO. Construct of the Association between Sleep Quality and Perinatal Depression: A Literature Review. Healthcare (Basel). 2022;10(7):1156. Published 2022 Jun 21.
doi:10.3390/healthcare10071156
5. He L, Soh KL, Huang F, et al. The impact of physical activity intervention on perinatal depression: A systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2023;321:304-319.
doi:10.1016/j.jad.2022.10.026

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