信号待ちでスマホを取り出したら、走ってきた人にひったくられた ー SNSでは、海外でこうした被害に遭った人の体験談を見かけることがあります。在シアトル日本国総領事館の「安全の手引き」によると、シアトル周辺でも、バスの中で居眠りをしている間にバッグを盗まれたり、車内に置いたパスポートを車上ねらいで盗まれたりする被害が報告されています。被害に遭うのは自分とは限りません。家族や友人が、別の電話から「スマホを取られた」と連絡してくることもあり得ます。今は支払いも本人確認もスマホで済ませることが多いため、盗まれるとリスクが非常に高く、連絡も手続きも一気に止まりかねません。この記事では、万が一のときに最初にやること、連絡先、場面ごとの対応、事前の備えをまとめました。知識として読む人にも、関わる可能性がある人にも役立つよう、順番に見ていきます。
被害にあったら、まずやること
- 命を最優先にして安全な場所に移り(ショップやホテルなど)、警察「911(ナインワンワン)」に通報する。オペレーターの質問に答え、電話を切っても良いと言われるまで電話を切らないこと。警察が現場に到着するまで、きちんと具体的に対応することが必。もし英語を話せない場合は「911」にかけて “Japanese, please” と言えば、日本人の通訳が電話口に出てくる。緊急以外の連絡は、その地域の警察の非緊急電話番号へ。
- クレジットカードを止める(スマホのウォレットに登録したクレジットカードも忘れずに)
- スマホを遠隔でロックする(iPhoneは「FindMy(探す)」、AndroidはFind Hubかandroid.com/lock)
- 警察の届出番号を控える(保険とパスポートの手続きに必要)
- パスポートを盗まれたら、在シアトル日本国総領事館(ワシントン州、モンタナ州、アイダホ州北部を管轄)にメールする
犯罪に巻き込まれたり、犯罪を目撃したら、すぐに911に通報しましょう。日本と違って、アメリカには交番というシステムがありません。その代わり、警察が常時パトロールしています。
連絡先早見表
- 緊急(事件直後、犯人が近くにいる、けががある):911
- シアトル市警察(緊急でない届出):206-625-5011
- Sound Transit(ライトレール、サウンダー、STエクスプレスバス):206-398-5268(電話・テキスト、24時間)
- キング郡メトロのバス(メトロ交通警察):206-296-3311(24時間)
- 在シアトル日本国総領事館:206-682-9107/consul@se.mofa.go.jp
スマホを盗まれると、保存した画面も見られなくなります。この一覧は紙に書き写すか、一緒に旅行する家族とも共有しておいてください。
スマホを盗まれると、保存した画面も見られなくなります。この一覧は紙に書き写すか、一緒に旅行する家族とも共有しておいてください。
警察への届け出の方法
強盗に遭ったら、抵抗せず、命を守ることを最優先にしてください。在シアトル日本国総領事館も、「カードは再発行できても命は取り戻せない」として、身の安全を第一に行動するよう呼びかけています。
被害にあったばかりの時、犯人がまだ近くにいる時、怪我をした時は、日本の110番にあたる911(ナインワンワン)に通報します。自分のスマホがひったくられた時は、近くにいる人、近くの店やホテルなどに入って、911に通報するよう依頼します。緊急でない場合は、シアトル市警察(SPD)の非緊急番号206-625-5011が窓口です。
シアトル市内で起きた被害で、犯人の手がかりがなければ、シアトル警察の公式サイトからも届け出ることができます(Online Crime Reporting)。ただし、発生から30分以内の被害や、暴力を伴う犯罪(未遂も含む)は対象外です。ひったくりに遭った場合は、電話で届け出ることになります。
公式サイトから送信すると、まず「T」で始まる仮番号が表示されます。この画面は保存しておいてください。確認を経て、正式な届出番号が通常5営業日以内にメールで届きます。保険会社に伝えるのは、この正式な番号です。急ぐ場合は非緊急番号の206-625-5011に電話して仮番号を伝えれば、電話での届出に切り替えられます。あとからわかった位置情報などは、同じ公式サイトから補足報告として追加できます。シアトル市外で被害に遭った場合は、その市や郡の警察に届け出ます。
場面別の対応
路上でのひったくり
911への連絡が済んだら、家族や友人にも別の手段で知らせます。地元テレビ局のKIRO 7は、強盗が奪ったスマホからルームメイトに迎えを頼むメッセージを送り、駆けつけたルームメイトも襲った事件を報じました。「その番号からの連絡には応じないで」と伝えておくと安心です。
電車・バス
緊急時は911です。それ以外は、ライトレールやサウンダー、STエクスプレスバスならサウンドトランジットの206-398-5268、シアトル市内のストリートカーならシアトル市運輸局の206-684-7623、キング郡メトロのバスなら206-296-3311に連絡します。サウンドトランジットの窓口はテキストメッセージにも対応しているため、声を出しにくい車内でも知らせられます。テキストには車両の番号も書き添えます。
在シアトル日本国総領事館によると、バスの中で居眠りをしている間に、腕に抱えていたバッグを盗まれる被害も起きています。通勤や通学で毎日乗る人ほど、気が緩みやすい場面です。
車上狙い
車の窓を割られて荷物を盗まれた場合も、まず警察に届け出ます。シアトル市内で起きた被害で、犯人の手がかりがなければ、シアトル市警察の公式サイトからも届け出ることができます(Online Crime Reporting)。
在シアトル日本国総領事館によると、ワシントン州では自動車盗と車上ねらいが特に多く、パスポートを盗まれたという連絡の多くは、車内にパスポート入りのバッグを置いたままにしていたケースです。シアトル市警察も、財布やバッグは短い時間でも車内に残さないよう呼びかけています。レンタカーで旅行する人も、パスポートは車に置かず持ち歩いてください。
スマホの遠隔ロックと携帯会社への連絡
スマホを盗まれた場合、警察と携帯電話会社の両方に届け出て、端末を遠隔でロックします。
米連邦通信委員会(FCC)は、警察に機種名、シリアル番号、IMEI(端末を見分ける15桁の番号)を伝えるよう呼びかけています。携帯電話会社は、IMEIを使って端末を使えなくできる場合があります。日本の携帯電話をローミングで使っている人は、日本の携帯電話会社に連絡して回線を止めます。
iPhoneの場合:他のAppleの端末にある「探す」アプリか、ウェブサイト icloud.com/find から「Lost Mode(紛失としてマーク)を選びます。そうすることで、端末がパスコードでロックされ、Apple Payのカードも使えなくなります。なお、データを遠隔で消したあとも、端末を「探す」の一覧から削除しないでください。一覧から外すとロックが解除され、転売しやすくなるとAppleは説明しています。
Android の場合:Find Hubアプリかウェブサイト google.com/android/find から「紛失としてマーク」を選ぶと、端末がロックされます。事前に「リモートロック」をオンにしていれば、android.com/lock で電話番号を入力するだけでも画面をロックできます。
クレジットカードの停止と保険
クレジットカードはすぐに停止する必要があります。連絡が遅れるほど、負担が増えるおそれがあります。スマホのウォレットに登録したカードも止めるよう、カード会社に伝えてください。
アメリカで発行されたカード:連邦法で、利用者の負担に上限があります。クレジットカードは50ドルまでです。デビットカードは、2営業日以内に連絡すれば50ドルまで、それを過ぎると500ドルまで増額されてしまいます。
日本で発行されたカード:各社の補償規定に従います。
保険で損害を請求する際も、警察の届出番号が必要です。スマホや現金、カードが補償の対象かどうかは保険によって違うため、加入している保険会社に早めに連絡して必要な書類を確認してください。
身分証盗難の報告
身分証が盗まれた場合、信用情報機関(Equifax、Experian、TransUnion)に不正利用の警告を出せます。警察の届出番号があれば警告は7年間有効、ない場合は90日間です。
日本政府発行のパスポートの手続き
日本国籍保持者が日本政府発行のパスポートを盗まれた場合、居住地・滞在地を管轄している日本国総領事館に「紛失一般旅券等届出書」を出します。日本への帰国が迫っている場合は、日本に帰るためだけに使える「帰国のための渡航書」を申請します。
在シアトル日本国総領事館は、ワシントン州とモンタナ州に加え、アイダホ州のアイダホ郡とそれより北の地域を管轄しています。モンタナ州の国立公園やアイダホ州北部を旅行中にパスポートを盗まれた場合も、手続きの窓口はシアトルです。オレゴン州とアイダホ州南部(ボイシなど)は、在ポートランド領事事務所の管轄です。そのほかの州で被害に遭った場合は、その州を管轄する日本の総領事館に連絡します。
紛失届には、写真1枚、警察の届出書類(取得できない場合は届出番号)、日本の運転免許証などの本人確認書類が必要です。届出をした時点でパスポートは失効します。新しいパスポートは日本で作られるため、交付まで1か月ほどかかります。
日本への帰国が迫っている場合は、日本に帰るためだけに使える「帰国のための渡航書」を申請します。交付は一両日中が目安です。申請には、戸籍謄本など日本国籍を確認できる書類(電子戸籍パスも可)、搭乗日と便名がわかる航空券、写真、手数料(現金のみ)が必要です。航空券は、交付の時期を総領事館に確かめてから予約します。
紛失届と渡航書の申請は窓口予約の対象外です。まずメールで連絡してください。窓口は平日のみで、アメリカと日本の祝日の一部は休館日になります。
盗難を防ぐために
スマホは、支払いも本人確認も地図も一台で担っています。盗まれると、カードを止めたり端末をロックしたりするための手段まで失いかねません。犯罪全体は減っていますが、スマホとパスコードを狙う強盗や、2〜3人で動くスリは報告されています。出発前に次の準備をしておくと、被害を防ぎやすくなり、遭ったあとも早く動けます。
iPhone:「盗難デバイスの保護(Stolen Device Protection)」をオンにする
「盗難デバイスの保護(Stolen Device Protection)」は、自宅や職場などいつもの場所を離れているとき、保存したパスワードの利用や紛失モードの解除、端末の初期化にFace IDかTouch IDが必要になる機能です。犯人がパスコードを知っていても、これらの操作はできません。Apple Accountのパスワード変更などには1時間の待ち時間が設けられ、その間に持ち主が紛失としてマークできます。旅行中は「いつもの場所」の外にいるため、この機能が使えます。
「盗難デバイスの保護」は、iOS 17.3以降で使うことができます。「設定」→「Face IDとパスコード」→「盗難デバイスの保護」から設定します。ただし、Apple Payでの支払いはパスコードでもできるままです。人前でパスコードを入力する際は、手元を見られないよう注意してください。
Android:「盗難防止(Theft protection)」の機能をオンにする
Android の場合は、「設定」→「Google」→「すべてのサービス」→「盗難防止」から設定します。「盗難検知ロック」は、手からスマホを奪って走ったり、自転車や車で去ったりする動きを検知すると、画面を自動でロックします。「リモートロック」をオンにしておけば、Googleアカウントにログインできない状況でも、android.com/lock で電話番号を入力して画面をロックできます。使える機能は、Androidのバージョンや機種によって異なります。
どの機種でもしておきたいこと
- 2段階認証のバックアップを用意する:スマホが確認コードの受け取り先になっていると、盗まれたあとにアカウントへログインできず、遠隔ロックもできなくなるおそれがあります。Googleはバックアップコードを作っておくよう案内しています。ほかのサービスでも、スマホ以外の確認手段を用意しておきます。
- SIMにPINを設定する:スマホからSIMを抜かれて別の端末に差し込まれても、電話番号を使わせないようにできます。
- ロック画面に通知の内容を表示しない:ロックされた画面から、確認コードなどの情報を読み取られにくくなります。
- 6桁以上のPINを使う
- IMEIとカード会社の紛失・盗難窓口の番号を、紙に控える
- パスポートのコピーを取り、原本とは別の場所に保管する
路上・空港・飲食店では
- 歩きながらスマホを操作したり、イヤホンで音楽を聴いたりしない(総領事館は、「周りへの注意が鈍るうえ、金品を持っていると知らせるようなもの」と注意しています)
- バッグは斜め掛けにして、体の前で持つ
- 空港などで充電しているスマホから離れない(アウトレットにつないだまま離れて盗まれる例が起きています)
- 空港の手荷物検査では、X線検査機に通した荷物から目を離さない
- レストランでは、バッグを椅子の背に掛けたり、席取りに使ったりしない
- パスポート、カード、現金、航空券を一つのバッグにまとめない(すべてを一度に盗まれ、総領事館に助けを求める旅行者もいます)
盗難防止用のストラップ
スマホを体やバッグにつなぐ盗難防止用のストラップも、対策の選択肢の一つとして販売されています。選ぶ際は、次の3点を確かめると良さそうです。
- 切れにくいスチールワイヤーかどうか
- カラビナ(carabinar)にロックが付いているか
- スマホへの固定具が、ケースごと外れない作りになっているか
参考:Amazon.com 盗難防止ストラップの例
- Cocases:Anti-theft Phone Tether, Retractable Steel Line Phone Lanyard
- MNGARISTA:Retractable Keychain, Heavy Duty Carabiner Badge Holder
- CACOE:Phone Lanyard
ホテルの客室で盗まれた場合
フロントデスクに伝え、警察にも届け出ます。ただし、客室に置いたままの物は、ホテルからはほとんど補償されません。総領事館とSPDはどちらも、貴重品を部屋に出したままにせず、客室の金庫かフロントに預けるよう勧めています。金庫に入らないラップトップは、持ち歩くか、フロントに預けるのが現実的です。高価な機種を預ける場合は、書面で取り決めができるかを確かめておくと、補償の範囲がはっきりします。ホテルのロビーも置引きが多い場所の一つです。チェックインの手続き中も、荷物を床に置いたまま目を離さないようにします。
今夜のうちに、iPhoneなら「盗難デバイスの保護」、Androidなら「盗難防止」の設定画面を開き、オンになっているかを確かめてください。
参考リンク
【公式情報】
- シアトル市警察 オンライン届出
- シアトル市警察 なりすまし被害
- シアトル市警察 旅行者向け安全情報
- シアトル市警察 Crime Dashboard(犯罪統計)
- サウンドトランジット 安全とセキュリティ
- キング郡メトロ交通警察
- FCC スマートデバイスを守るために(PDF)
- Apple サポート「iPhoneやiPadを紛失した場合」
- Apple サポート「iPhoneの盗難デバイスの保護について」
- Google Android ヘルプ「紛失したAndroidデバイスを探す、保護する、データを消去する」
- Google Android ヘルプ「盗難から個人データを保護する」
- Google Android ヘルプ「紛失したAndroidデバイスを探せるよう準備する」
- 米消費者金融保護局(CFPB)デビットカードの責任上限
- 在シアトル日本国総領事館 パスポート
- 在シアトル日本国総領事館 総領事館案内(管轄地域・開館時間・休館日)
- 在シアトル日本国総領事館 安全の手引き
- 在ポートランド領事事務所 事務所案内(管轄地域・連絡先)
