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職場ストレスの本当の原因とは?「仕事が多い」よりも「仕事がわからない」が危険な理由

Man wearing glasses sits at a desk, holding his temples in frustration while looking at a laptop.

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職場のストレスについて話すとき、多くの人は「仕事量が多すぎること」を思い浮かべるのではないでしょうか。

人手不足の中で仕事量は増え続け、限られた時間でより多くの成果を求められる。毎日締切に追われながら働いていると、「ストレスの原因は忙しさだ」と考えるのも無理はありません。

しかし、2026年6月号の学術誌『Journal of Vocational Behavior』に掲載された研究は、こうした一般的なイメージとは異なる結果を示しています。オーバーン大学、オールドドミニオン大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、1964年から2024年までに発表された515件の研究を統合し、約80万人の労働者データを分析しました。研究の目的は、「職場で人を最も疲弊させるストレス要因は何か」を明らかにすることでした。

その結果、従業員を最も苦しめているのは単純な仕事量ではなく、「自分に何が求められているのかわからない状態」であることが明らかになりました。研究では、職場ストレスの主な要因を「役割の曖昧さ(Role Ambiguity)」「役割の衝突(Role Conflict)」「役割過多(Role Overload)」の3つに分類しています。

最も大きなストレス要因は「役割の曖昧さ」

研究で最も強いストレス要因として示されたのが「役割の曖昧さ(Role Ambiguity)」です。役割の曖昧さとは、自分が何を期待されているのかが明確でない状態を指します。例えば、優先順位が頻繁に変わる、あるいは自分がどこまで責任を負うべきなのか分からない。このような状況は、多くの職場で決して珍しいものではありません。

特に日系企業では、一人の従業員が複数の役割を兼務するケースが少なくないため、役割の曖昧さが生じやすい傾向があります。また、異なる職務や役割を持つ従業員同士が協力しながら業務を進める場面も多く見られます。その結果、他者の業務を支援しているつもりが、後になってその業務の責任まで負わされる、といった問題が発生することもあります。

人間は多少忙しくてもゴールが見えれば前に進めますが、何を目指せばよいのかわからない状態では、常に不安がつきまといます。今取り組んでいる仕事が正しいのか、自分の判断で進めてよいのかわからない。その状態が続けば、精神的な負担が大きくなって当然です。

どちらを選んでも苦しい「役割の衝突」

2つ目の要因は「役割の衝突(Role Conflict)」です。これは、組織から求められる内容が互いに矛盾している状態を指します。例えば、「コストを削減してほしいが、顧客満足度は向上させてほしい」「品質を向上させてほしいが、納期は短縮してほしい」といった要求です。どちらも重要な目標ですが、現場では両立が難しい場合も少なくありません。

また、複数の上司や部署から異なる指示を受けるケースもあります。どちらの期待に応えるべきか判断できず、板挟みになる従業員は少なくありません。こうした状況では、仕事そのものよりも意思決定の負担が大きくなります。どの選択をしても誰かを失望させる可能性があるため、常に緊張状態が続きます。特に管理職やリーダー層は、このような役割の衝突を経験しやすい立場にあります。

忙しすぎて何を優先したら良いかわからない「役割過多」

もちろん、業務量そのものが問題ではないというわけではありません。研究で3つ目の要因として挙げられたのが「役割過多(Role Overload)」です。これは、一人が処理しなければならない仕事量が多すぎる状態を指します。

近年の企業では、人手不足や採用難を背景に、一人あたりの業務負担が増加しているケースが少なくありません。本来であれば複数人で担当していた仕事を一人で抱えたり、新たな業務が追加されても人員補充が行われない場合もあります。

近年注目されるもう一つのストレス要因「雇用不安」

こうした職場内部の問題に加え、近年のアメリカでは新たなストレス要因も浮上しています。それが「雇用不安(Job Insecurity)」です。American Psychological Association(APA)が2025年に実施した調査によると、米国の労働者の54%が雇用不安によってストレスが増加していると回答しています。また、約4割が今後1年以内に職を失う可能性について不安を感じていると答えています。

背景には、経済環境の変化や企業のリストラ、組織再編、そしてAI技術の急速な普及があります。現在の業務内容が明確であったとしても、「この仕事は数年後も存在するのだろうか」「自分のスキルは将来も通用するのだろうか」という不安は、従業員の心理に大きな影響を与えます。

対応策

職場のストレス対策の出発点は福利厚生やリラクゼーション施策ではなく、従業員が自分の役割を理解し、何を期待されているのかを把握できる環境を整えること、組織として優先順位を明確に示すことが重要であるとこの調査は指摘しています。そして変化の大きい時代だからこそ、会社の方向性や将来について可能な限り透明性を持って伝えることも忘れてはなりません。

こうした日々のマネジメントこそが、従業員のストレスを軽減し、エンゲージメントを高めるための最も基本的で重要な取り組みといえるでしょう。

執筆者

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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