ワシントン州のボブ・ファーガソン知事は20日、今後2年間で州支出を8%以上（約60億ドル）増加させる総額780億ドルの2025-2027年度州運営予算に署名しました。新しい州予算には、財政赤字への対応と、主に州職員の昇給、医療・教育・住宅支援などの社会サービスの維持を目的として、今後4年間で約90億ドルの新たな増税が盛り込まれています。
就任当初、ファーガソン氏は「支出に厳しい姿勢で臨む」と公言し、富裕層への新たな課税案（いわゆる「富裕税」）を拒否していましたが、今回、民主党多数の州議会が承認した、幅広い増税措置を含む予算を承認しました。
増税の主な内容
ファーガソン知事が署名した法案には、以下のような住民や企業に影響を与える税制改正が含まれています：
- 法人B&O税（営業税）引き上げ：複数業種の税率を引き上げ、大企業（課税所得が2億5000万ドル以上）に追加課徴金を課す。
- 消費税の適用範囲拡大：これまで非課税だったデジタルサービス、警備、派遣サービスなどに消費税を課す。
- キャピタルゲイン税の増額：高所得者を対象とした株式などの利益への税率を引き上げ。
- EVクレジットへの新課税：特にテスラが多く保有するEV優遇税制を対象に、新たな課税措置を導入。
- Discover Pass（州立公園利用許可）や各種許可証の料金引き上げ：ハンティング・釣りライセンス、車両登録、結婚許可証、酒類販売許可証など。
- ガソリン税引き上げ：2025年7月1日から1ガロンあたり6セント増税。毎年段階的に引き上げ、交通インフラ整備に充てられる。交通予算には、ガソリン税引き上げに加え、自動車の販売・レンタルに対する増税および手数料の引き上げ、さらにシアトルとレドモンド間の州道520号線における新たな通行料金制度の導入も盛り込まれています。
なお、住宅ローン利子控除を終了する提案については、地域銀行の住宅ローン供給への影響が懸念されることから、知事が拒否権を行使しました。
支出と政策の焦点
新予算では、以下の分野での支出拡大が決定されました。
- K–12教育に10億ドル以上の追加支出
- 州職員への昇給（前政権下で交渉された労使合意に基づく）
- メディケイドや低所得者支援（現金給付）など、主要な社会サービスの維持
一方で、女性刑務所や更生施設、障害者支援施設の閉鎖などを含む支出削減が実施されています。また、知事は合計2500万ドル分の小規模助成・調査予算に対して拒否権を行使しました。
政治的な反応と今後
シアトル・タイムズや KUOW によると、民主党や進歩派団体はこの予算を支持し、「州の不公平な税制度の是正に向けた一歩」と評価。一方、共和党は「州史上最大の増税」として厳しく批判しています。
Beginning with my inaugural address I've emphasized a number of key points for our budget. Use realistic revenue projections. Preserve our rainy day reserves. Find billions of dollars in savings and efficiencies. Include a $100 million grant program for more law enforcement…
— Governor Bob Ferguson (@GovBobFerguson) May 21, 2025
ファーガソン知事は、より大きな税案（当初案では4年で210億ドル）を回避したと述べ、財政的には「バランスのとれた対応」だったと主張。また、州の緊急予備費（約20億ドル）には手を付けておらず、今後の経済変動や連邦予算削減への備えを確保したと強調しました。
シアトル・タイムズによると、知事は署名後の会見で、「いくつかの税には今後見直しが必要」と述べ、来年1月に開会する立法会期までに再評価を行う考えも示しています。