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ワシントン州の火山:マウント・セント・ヘレンズ 1980年噴火と今の姿

2023年9月撮影

毎年5月は、ワシントン州の「火山防災月間(Volcano Awareness Month)」です。これは、57名の犠牲者を出し、推定10億ドルの被害をもたらした1980年5月18日のマウント・セント・ヘレンズの大噴火をきっかけに制定されたもので、火山の危険性や災害リスクについて広く認識を深めるために州内各地で関連イベントや啓発活動が展開されます。

この記事では、マウント・セント・へレンズが伝える自然の猛威と復興の軌跡、そして今なお人々を惹きつける登山・観光の魅力をご紹介します。

マウント・セント・ヘレンズとは?|カスケード山脈で最も活発な火山

ジョンストンリッジ展望台からの眺め
2023年9月撮影

約4万年前に誕生したとされるマウント・セント・ヘレンズ(Mount St. Helens)は、ワシントン州南西部に位置し、カスケード山脈の中で最も火山活動が活発な成層火山です。

この山はかつて、その美しい円錐形から「アメリカの富士山(Fujiyama of America)」とも呼ばれていました。

ネイティブ・アメリカンはこの山を「Louwala-Clough(煙を出す山)」と呼んでいましたが、18世紀にこの地域を探検したイギリス海軍のジョージ・バンクーバー艦長が、友人であるセント・へレンズ男爵にちなんで命名しました。

1980年の大噴火:火山活動の前兆と被害

噴火日時:1980年5月18日(日)午前8時32分

2カ月前から1万回を超える地震、100回以上の蒸気噴出、北側斜面の大規模な膨張など前兆が続いたのち、マグニチュード5.1の地震をきっかけに大噴火が発生。

この噴火は、世界史の面から見ると例外というほどの規模的ではなかったものの、1914年に噴火したカリフォルニア州のラッセン・ピーク以来、米本土で66年ぶりの火山噴火として記録され、大きな注目を浴びました。

ワシントン州の「火山防災月間(Volcano Awareness Month)」

ワシントン州の「火山防災月間(Volcano Awareness Month)」は、地域住民が自分たちの暮らす地域に存在する火山の危険性を知り、備えるきっかけとなる重要な機会を作ることが目的です。

マウント・セント・へレンズの噴火を機に、火山観測・警報体制が大きく前進しました。

Photo by Jared Lisack on Unsplash

現在の火山活動状況と防災

その後、2004年~2008年にかけて小規模な噴火活動が再開。

2025年5月現在は活動は沈静化しており、ガス量も少なく、大規模噴火の可能性は低いと見られています。全米火山早期警報システム(NVEWS)のもと、米国地質調査所(USGS)がマウント・セント・ヘレンズを含むカスケード火山帯を継続して監視しており、火山噴火の予測精度や警報体制も年々強化されています。

米国地質調査所によると、マウント・セント・へレンズはカスケード山脈にある他の火山と同じく、溶岩や火山灰などの火山噴出物が左右対称の円錐状に何層にも重なってできたいわゆる成層火山(stratovolcano)で、噴火が大規模になる傾向があります。ハワイにある傾斜が緩やかな盾状火山(shield volcano)は、一般的に噴火が爆発的ではなく、活発な火道(vent)から出る溶岩が長い距離を流れるのが特徴です。

登山とハイキング情報(登山許可証が必要)

真夏の頂上

マウント・セント・ヘレンズへの登山には、年間を通じて「登山許可証(Climbing Permit)」が必要です。特に4月1日~10月31日は1日あたりの登山人数が制限され、Recreation.gov での事前予約が必須となります。

登山許可証(Climbing Permit)の取得方法(2025年版)

期間人数制限料金発行方法
4/1~10/31人数制限あり$20/人・日Recreation.gov で事前購入・印刷
11/1~3/31制限なし無料トレイルヘッドで自主発行

注意点

2020年6月中旬の頂上からの眺め
Photo by Awar Meman on Unsplash

詳細は Recreation.gov の登山許可証ページ をご確認ください。

観光スポット・ビジターセンターと火口からの距離

Windy Ridge Viewpoint(ウィンディ・リッジ展望台)【火口から約6.4km】

Johnston Ridge Observatory(ジョンストン・リッジ展望台)【火口から約8km】

ジョンストンリッジ展望台を過ぎたところにあるベンチ
Photo by Dave Hoefler on Unsplash

ジョンストン・リッジ展望台は閉鎖中:2024年5月14日、大規模な地滑りが発生し、マウント・セント・ヘレンズ国立火山記念碑の北側にあるジョンストン・リッジ展望台へ続く道路の上部区間、SR 504が閉鎖されています。現時点で、再開予定は2027年となっています。

Castle Lake Viewpoint(キャッスル・レイク展望台)【火口から約11km】

Elk Rock Viewpoint(エルク・ロック展望台)【火口から約13km】

Mount St. Helens Visitor Center(マウント・セント・ヘレンズ・ビジターセンター)【火口から約48km】

Forest Learning Center(フォレスト・ラーニング・センター)【火口から約27km】

Spirit Lake(スピリット・レイク)【火口から約7km】

スピリットレイク
Photo by Peter Robbins on Unsplash

防災と自然再生への学び

1982年に火山国定公園National Volcanic Monumentに指定

マウント・セント・ヘレンズは、火山の脅威と同時に自然の復元力を実感できる場所です。

1982年に「火山国定公園(National Volcanic Monument)」に指定され、調査・教育・レクリエーションの拠点として整備されてきました。火山活動の影響を自然に任せるという方針のもと、森林の再生や野生動物の回復も観察されています。夏季には、エメラルドグリーンのメタ・レイク、アメリカで3番目に長い溶岩洞「エイプ・ケイブ」なども人気です。

毎年5月の火山防災月間を機に、火山の仕組みや噴火への備えを学び、自然との共存を考える機会として活用してみてください。

🧭 最新の火山活動状況や登山許可証の情報は、USGS公式サイト または Recreation.gov にてご確認ください。

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