昨晩はマイナス1℃(-1°C)まで冷え込みました。比較的穏やかな気候のシアトルにとって、氷点下は立派な「寒波」です。路面の凍結や体調管理には、どうぞ十分ご注意ください。
そんな厳しい寒さの中、シアトル・チルドレンズ・シアター(Seattle Children’s Theatre)へ。ブルース・リー(Bruce Lee:1940-1973)の半生を描いた演劇『Young Dragon』のプレビューナイトに出席しました。
33歳という若さで世を去り、伝説となったブルース・リー。しかしこの舞台で描かれるのは、1960年代のアメリカで人種差別に直面し、文化の壁に葛藤する「一人の青年」としての姿です。
なぜ、今この場所でブルース・リーの物語が上演されているのでしょうか。
サンフランシスコで生まれ、香港で育ったリーは、18歳で再び渡米しました。シアトルのチャイナタウンにあったレストラン「ルビー・チョウ(Ruby Chow’s)」で皿洗いをしながら、ワシントン大学で哲学と演劇を学び、後に妻となるリンダさんと出会います。5年後に夫婦でロサンゼルスへ移るまでの、まさに「人格形成期」という大切な5年間を過ごしたのが、ここシアトルだったからです。
私自身、リーと同じような経験をしたわけではありませんが、日常の中でマイクロアグレッション(無意識の偏見による差別)を感じることはあります。特に昨今の、社会問題の原因を移民になすりつけようとする風潮の中では、リーの苦悩は決して他人事とは思えず、身につまされるものがありました。
そんな時代背景の中、リーが真の友人と出会い、「自分は何者なのか」「どう生きるべきか」と激しく葛藤しながら答えを見出していく…。本作の対象年齢は8歳以上、上演時間はわずか75分でしたが、俳優陣の熱い演技がその姿を見事に描き出しました。自分自身や先祖の姿を重ね合わせた観客も多かったのではないでしょうか。最後はスタンディングオベーションで大きな拍手が続きました。
主演のミケランジェロ・ヒョンさんは、韓国・ユダヤ系アメリカ人。鍛え上げた肉体に、リー特有のヘアスタイルで登場します。正直、事前に写真を見たときは「似ていないなあ」と思いましたが、物語が進むにつれて本物のブルース・リーに見えてくるから不思議です。わずか5人の俳優で十数人もの役を演じ分ける中、ヒョンさんはほぼ全編にわたって舞台に立ち続け、若き日の熱量を演じきりました。
プレビューナイトには、妻のリンダさんと長女シャロンさんも出席されていました。「自分たちの体験がそのまま舞台になっていて驚いた」というお二人の言葉に、俳優たちも感激の面持ちだったのが記憶に残っています。
おりしも、米国郵便局(USPS)からブルース・リーのデザインされた「フォーエバー・スタンプ(Forever Stamp)」が発売されたばかり。今よりも激しい人種差別や偏見を打ち破り、多方面に影響を与え続けるブルース・リー。パワフルな飛び蹴りを食らわせているその姿を見れば、没後50年以上が経過した今もなお、その存在意義が増すばかりであることが感じられます。
ブルース・リーと息子のブランドンは、シアトル市内のキャピトル・ヒルにあるレイク・ビュー墓地に埋葬されており、世界中からファンが訪れる場所となっています。
