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アメリカでの認知症・アルツハイマー病の現状と対策 Q&A (3/4)日常生活の工夫「すぐ使えるヒント」と介護

Caregiver in blue scrubs greets an elderly Japanese woman beneath a decorative banner that reads a dementia Q&A for Japanese living in America.

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アメリカで暮らすご家族やパートナー、あるいはご自身について、「最近、物忘れが増えたかもしれない」と不安を感じることはありませんか?海外という異なる言語・文化の環境下では、その不安はさらに大きくなりがちです。

この Q&A では、ワシントン大学准教授・家庭医の西連寺智子先生が、アメリカの日常生活での工夫と、介護、そして揃えておくべき書類などについて解説します。正しい知識を持ち、早期に適切なサポートへ繋げるためのガイドとしてお役立てください。

アメリカでの日常生活の工夫「すぐ使えるヒント」

科学的に効果が証明されているサプリメントや栄養補助食品はありますか?

科学的には、認知症の予防や治療において効果が確実に証明されたサプリメントは現時点でありません。ただし、ビタミンB12などの欠乏がある場合には補充によって認知機能が改善することがあり、栄養状態の評価は重要です。オメガ3脂肪酸やビタミンE、イチョウ葉なども広く研究されていますが、健康な人に対する明確な予防効果は確認されていません。

食事・運動・生活習慣でできる予防策や、進行を遅らせる方法はありますか?

今のところ、認知症を完全に予防したり治したりする方法はありません。しかし、発症のリスクを減らし、進行を遅らせる可能性がある生活習慣については、エビデンスは多少はあります。特に推奨されているのは下記のことなどです。認知症リスクの低下と関連することが報告されています。

  • 定期的な運動(週150分程度の有酸素運動)
  • 生活習慣病の適切な管理(高血圧・糖尿病・高コレステロールなど)
  • 健康的な食習慣:野菜や果物、魚、オリーブオイルなど
  • 十分な睡眠
  • 禁煙、適量の飲酒
  • 人との交流や読書・学習など知的活動を続ける

一つの習慣だけで認知症を防げるわけではありませんが、これらを合わせて実践することで、脳の健康を維持し、認知症の発症予防や進行抑制につながる可能性があると考えられています。特に、難聴がある場合には補聴器を適切に使用することも、認知機能の維持に役立つ可能性があることが近年の研究で示されています。

親から子への遺伝はありますか?

40~50代など若い年齢で発症する「家族性アルツハイマー病」は、特定の遺伝子変異が原因となることがあり、親から子へ遺伝する場合があります。

しかし、このようなケースはアルツハイマー病全体の1%未満ととてもまれです。一般的な高齢で発症する認知症では、生活習慣や環境要因も大きく関わっています。

アメリカでは運転免許(driver’s license)は認知症とどう関係しますか?州ごとに対応は違いますか?

運転免許に関する制度は州ごとに異なります。

ワシントン州では、認知症の診断により自動的に運転免許が取り消されることはありません。

しかし、運転の安全性が疑われる場合には、医師や家族が運転免許局(Department of Licensing)へ報告することができ、認知機能・視力・運転能力の再評価が求められることがあります。運転を継続できるかどうかは、認知症の診断名ではなく、実際の運転能力に基づいて判断されます。

徘徊時に活用される Silver Alert とは何ですか?どのような時に発動されるのですか?

行方不明になった高齢者や、認知機能に障害のある人を早期に発見・保護するための公的な緊急情報システムです。日本の「行方不明高齢者の捜索情報」に近い仕組みです。

発動されると、テレビやラジオ、道路の電光掲示板、携帯電話の通知、SNSなどを通じて、氏名や年齢、服装、車両情報などが広く市民に共有されます。

介護について

遠距離介護の場合、どのような見守り方法(カメラ、在宅サービスなど)が現実的ですか?

アメリカでも、遠距離介護を支えるさまざまなサービスがあります。自宅に見守りカメラやドアセンサーを設置したり、GPS機能付きの機器(Apple社のair tagなど)で外出時の居場所を把握したりすることができます。また、緊急時にボタン一つでオペレーターにつながる医療用緊急通報システム(Medical Alert System)も広く普及しています。

さまざまな在宅サービスもあります。訪問看護師やホームヘルパー、デイプログラム(Adult Day Health)や配食サービスなどがあります。さらに、高齢者一人ひとりに合わせてサービスを調整する高齢者ケアマネジャー(Aging Life Care Professional)が、家族に代わって医療機関への付き添いや生活状況の確認を行うこともあります。

介護者が燃え尽きないために、どのようなサポートがありますか?

介護者自身の心身の健康を守ることはとても重要です。家族が一人で抱え込まないための介護者支援(caregiver support)のためのさまざまな仕組みがあります。

その一つとして数時間〜数日間介護を代わってもらえるRespite Care、同じ立場の人と悩みを共有できる介護者サポートグループ、専門家によるカウンセリングや相談窓口などが利用されています。

自分で意思表示ができない・判断ができない状態になった時に備える法的書類について教えてください。

Advance Directive(事前医療指示書)と Durable Power of Attorney(DPOA:持続的代理権)は、認知症の方だけのためのものではなく、アメリカではすべての成人が将来に備えて準備しておくことが勧められている大切な制度です。

Advance Directive(事前医療指示書)は、自分で意思表示ができなくなった場合に備えて、延命治療、人工呼吸器、栄養・水分補給などの医療に関する希望をあらかじめ記録しておくものです。また、医療上の意思決定を代わりに行う人を指定することもできます。

Durable Power of Attorney(DPOA:持続的代理権)は、自分が判断能力を失った場合でも、指定した代理人が本人に代わって意思決定を行えるようにする法的な仕組みです。医療に関するDPOA(Health Care DPOA)は、認知症や重い病気、事故などで意思表示が難しくなった際に、本人の価値観や希望を反映した医療判断を行うために重要です。財産管理については、Financial DPOAを準備することもあります。

これらの書類は、認知症になってから作成するものではなく、本人に十分な判断能力がある健康なうちに準備することが重要です。

アメリカでは、認知症の有無にかかわらず、成人であれば誰もが将来の不測の事態に備えて、家族と希望を話し合い、必要な書類を整えておくことが勧められています。これは、自分の意思を守り、家族が難しい判断を一人で背負わないための大切な準備です。

また、デイサービスや訪問介護を利用して介護の負担を分散したり、地域の高齢者支援機関やAlzheimer’s Associationなどの団体から情報提供や相談支援を受けたりすることもできます。遠距離介護の場合は、ケアマネジャーなどと連携し、家族だけで全てを担わない体制を作ることが重要です。

執筆者

西連寺智子先生(さいれんじ・ともこ)
University of Washington Department of Family Medicine, Professor
Family doctor at UW Primary Care at Northgate Clinic and Northwest Hospital
米国マサチューセッツ州で幼少時代を過ごし、12歳で日本に帰国。国際基督大学卒業後、岡山大学に学士編入。卒業後、福岡県にある飯塚病院での2年間にわたる初期研修を経て、ピッツバーグ大学メディカルセンターで家庭医のレジデンシーとチーフレジデントを行う。同大学で医学教育修士課程とファカルティデベロップメントフェローシップを終え、現在はワシントン大学医学部(University of Washingon School of Medicine)で家庭医療の教授として医学生の指導を行いながら、UW Medicine のノースゲート・クリニックと Northwest Hospital で家庭医として勤務している。

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や医療アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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