5月からスタートした本連載も、今回でいよいよ最終回となりました。これまで乳児期の便秘やコリックのおうちケア、そして親子の絆を深める「わらべうた」などの歌と遊びの魅力をお届けしてきましたが、最後は「幸福度」、そして人生最初の1001日における「触れる(スキンシップ)」の本質的な意味についてお話ししたいと思います。
日本の幸福度と「人生最初の1001日」
「日本人の自己肯定感や幸福度は先進国の中でも低い」というデータを目にしたことがある方も多いかもしれません。なぜ、私たちはどこか生きづらさを抱えてしまうのでしょうか。その背景には、将来への不安や人生の選択肢の乏しさ、そして他者とのつながりや「ありのままを受け容れ合える寛容さ」の不足が指摘されています。
では、どうしたら子どもが自分の人生を自分らしく幸せに歩んでいけるのでしょうか。
人とのつながりの土台になるのは、幼少期の親子の関係性です。その根底にあるのは、やっぱり「自分は存在しているだけで愛されている」という深い実感に他なりません。
脳や心が驚くほどのスピードで発達する「人生最初の1001日(妊娠期から2歳頃まで)」に受け取った「愛されている実感」は、その後の長い人生のどんな波風からも子どもを守る、一生ものの心の安全基地(セーフスペース)になります。
予測不能なAI時代だからこそ必要な「生のふれあい」
信じられないほどのスピードで変化し続ける、これからの時代。AIが身近になり、デジタルと隣り合わせで育つ今の子どもたちには、何が「ホンモノ」かを見極める力や、折れないしなやかな心(レジリエンス)が求められます。
しかし、どれほど時代が進んでも、心の土台=「安心感」がなければ、子どもたちは健やかに伸び伸びと育っていくことはできません。そしてこの大切な心の土台は、決して特別な英才教育やトレーニングで身につくものではないのです。
「安心できる大人が、そばで見守ってくれる」
「自分はそのままで大切にされている」
そう思えるセーフスペースは、日々の何気ないやりとりや、肌のぬくもりを通してゆっくりと築かれていきます。どんなに技術が進化しても、肌と肌が触れ合うぬくもり、じっと見つめ合う目と目、心から溢れ出る言葉の温もりだけは、絶対にAIに代わることはできません。
ベビーマッサージは「言葉を超えた、やさしさの教育」
「ベビーマッサージは赤ちゃんだけのもの」と思われがちですが、実はそうではありません。「触れる」というケアは、形を変えながらあらゆる年代の子どもたちの心に届き続けます。
赤ちゃん期に心地よいマッサージを受けて育った子が、幼児期になると自分から「お昼寝の前に背中トントンして」と甘えてくるようになり、やがて疲れたお母さんやお父さんの手を小さな手で優しく撫で返してくれるようになる。思春期になって心が揺れる時期にも、難しい言葉の代わりに「マッサージして」とすり寄ってくる―。年齢とともに変化していくその愛おしい反応は、言葉を超えて繋がり続ける親子の絆そのものです。そして、子どもたちはまた明日から新しい挑戦に挑んでいけるのです。
私の教室では、「愛されている実感をすべての子どもたちに」という大切なモットーがあります。
これは決して「完璧な親になりましょう」ということではありません。
余裕がなくて怒ってしまう日があってもいい。疲れて一緒に泣きたくなる日があってもいい。だって私たちはみんな、手探りで一生懸命生きている人間なのですから。
ありのままの自分の感情を受け入れ、目の前のアタッチメントを求めている子どもをぎゅっと抱きしめる。その背中をそっと優しく包み込んでくれる魔法こそが「触れる」ことなのです。
皆さんのこれからの海外生活と子育てジャーニーが、たくさんの笑顔と温かいふれあいに溢れたものとなりますように。慣れない環境で孤立しやすい海外子育ての中で、私がいつでもあなたの「Village(子育てを支える村)」の一員として寄り添います。
写真・画像:本人提供
リビングストン 祐后(ゆうこ)
元看護師。ベビーマッサージ教室主催&産後ドゥーラ。2008年より東京都立小児総合病院(旧・清瀬小児病院)にて、小児科や産科など多岐にわたる領域で10年以上の臨床経験を積む。2024年、Blossom&Berry ベビーマッサージインストラクター認定。現在はシアトル近郊を拠点に、日本語と英語のバイリンガルで親子向け教室を開催。発達心理学に基づいたアタッチメント(愛着形成)を軸に、マッサージを通じた「子どもの心を育む親子の絆づくり」をサポートしている。
公式サイト:yukomylilnest.podia.com
公式インスタグラム:@yuko_lilnest_babymassage
メール:yukoliv0513@gmail.com
