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ワシントン州の広い空の下で | 学校教育の現場から見えてきたこと 大野奈々恵先生(3)最終回

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ワシントン州の姉妹都市である兵庫県から派遣教員としてワシントン州に来て、University Place学区のCurtis Senior High School(CHS)とCurtis Junior High School(CJH)で1年間勤務しました。この経験は、私の高校教員としての視野を広げ、帯同した家族は豊かな価値観を得て、かけがえのない時間となりました。最後のコラムで一年間を振り返ります。

「成果を評価するアメリカ、プロセスを評価する日本の教育」

日本の勤務校との俳句授業交流

日本語の授業や、他の科目の授業見学、他校訪問を通じて、アメリカの学校は成果を評価する教育だと感じています。

出席そのものよりも授業中のパフォーマンスが評価されます。課題には一定の期間と自由度があることが多いため、生徒ごとに成果の差は大きく開きます。しかし、成果へのアプローチに自由度が高く、それがクリエイティブな思考を生み出します。決められたことをするだけではなく、自分で考える余白があることで、新しい考え方が生み出されます。そしてクリエイティブな活動中、生徒の目の輝きは増します。

日本では、成果へのプロセスとして、より多くの課題や小テストがあり、欠席するとそのプロセスを逃します。大学入試があるため、ほとんどすべての生徒が同じアプローチで学習し、学び方に個性が出ることはありません。しかし、スモールステップで学習進度が保たれるため、多くの生徒が着実に学力をつけていきます。

この成果とプロセスは、教員にとっても同様です。アメリカでは管理職が教員一人ひとりの授業を年に何度か評価をします。研修などで共通理解となった教授法に当てはまるかが細かくフィードバックされ、生徒の学力向上が数字として求められます。理論と目標は明確ですが、授業は教員の個性が出しやすく、見学したすべての先生方がオリジナリティあふれる授業をされていました。そこには成果へのアプローチに自由度の高さが感じられます。

日本の高校では、地域や学校によって差はあるものの、教科としてどのように学力向上に取り組んだかが重要です。そのため、プロセスである課題や小テストを学校や教科内で統一して行うことが多く、取り組みそのものに焦点が当たり、具体的な学力向上に結びついたか検証されないこともあります。しかし、チームとしての働きが求められるため、一定の教育の質を保つことが可能で、教員間の相乗効果を期待できる良さがあります。

1年間の勤務を通じて、教育のあり方を考える機会が多くありました。帰国後の課題として、アメリカの教育の良いと思う部分を、日本の学習環境でどう活用できるのかを考えて応用していくことを考えていきます。

「小さな子どもたちの大きな世界」

地域の小学校での多文化交流イベントにて

帯同した7歳の娘は1st Gradeの1年間を、現地公立校で過ごしました。さまざまな国のルーツを持つ友人ができ、娘は小学校という小さな多文化社会の中で、大きな世界にふれました。

「(クリスチャンの)オリビアはどうして日曜日の朝に教会に行くの?」
「(アフリカンアメリカンの)先生の素敵な編み込みヘアは、アジア人の私にもできる?」
「(親が沖縄米軍基地で働いていた)べンクスはどうして日本で生まれたの?」
「(ムスリムの)エクラスはなぜ豚肉を食べないの?」

リビングルームの壁に貼った世界地図と地球儀を指差しながら、毎晩のように子どもの「なぜ?」に答えて一緒に考えるのが、家族の、楽しい日課でした。それと同時に、親としてどう答えるべきか頭を抱えた時間でもありました。

娘の小学校はアジア系の生徒の比率が低く、私たちが知る限り、娘は学校でたった一人の日本人でした。「日本人であること」を誇りに思い、折り紙、縦書きの漢字、お弁当、キャラクターなどをたびたび披露して、小さな日本代表として学校生活を送りました。クラスには日本以外の海外出身の小さな代表の子どもたちもいました。先生と友人に恵まれ、涙を流して別れを惜しむ姿を見て、ここに来て良かったと感じています。いつの日か、アメリカでできたお友達を思い出して、世の中を広い視野で捉え、世界を身近に考えられる大人に成長してほしいと願っています。

また、娘の友人の保護者との関わりの中で、多様な風習や家庭の子育てについて知ることができました。国や文化は違っても、悩みごとや子どもを思う気持ちは同じです。相談に乗ってもらった娘の友人の保護者たちは、日本のママ友同様に、心強く共感できる存在です。

「ワシントン州と兵庫県の親善と友好を願って」

兵庫県ワシントン州事務所提供

ワシントン州のシアトルと兵庫県の神戸市は1957年から姉妹都市です。また、ワシントン州と兵庫県は1963年から姉妹提携しています。山と港に囲まれた両都市は互いにどこか似ていて、シアトルの街を歩いていると神戸の元町を思い出します。船の汽笛が鳴り響き、異国情緒豊かでノスタルジックな雰囲気もよく似ています。

派遣教員の期間中には、シアトルやベルビューでの文化イベントで、兵庫県ワシントン州事務所の兵庫県PR活動に参加させてもらいました。日本好きな来客の皆さまと実際に話をするのはとても楽しかったです。これからも多くの方々に日本文化に興味を持ってもらい、両都市の親善と友好が深まることを願っております。

最後になりましたが、ジャングルシティのオオノタクミさんに、コラムを執筆する機会をいただいたことを、心より感謝申し上げます。 

 

執筆者

大野奈々恵(おおの・ななえ)
2025年度(令和7年度)ワシントン州ー兵庫県派遣教員。姉妹都市であるワシントン州と兵庫県の派遣教員として、2025年8月から2026年6月までワシントン州ユニバーシティ・プレース学区で勤務した。日本では、2007年から約18年間にわたり、4校の県立高校で英語教諭として勤務している。

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