シアトル中心部の海沿いに完成した新しいウォーターフロント・パークが、国際的な都市公園団体「World Urban Parks(ワールド・アーバン・パークス)」から2025年の「Outstanding New Park Project Award(最優秀新規公園プロジェクト賞)」を受賞しました。
世界が認めたシアトルの新たなシンボル
2025年10月27日、シアトル市公園局(Seattle Parks and Recreation)は、2024年秋に公開されたウォーターフロント・パークが、世界的な表彰を受けたことを発表しました。この賞は、世界各都市の中で最も優れた新規公園に贈られるもので、デザイン性、環境再生、地域社会との連携などが評価の対象となります。
シアトル市公園局のAP・ディアス局長は、次のようにコメントしています。
「この受賞は、自然とのつながりを育み、地域コミュニティが集う空間を創造する “公園の力” を証明するものです。ウォーターフロントパークは、シアトルの活気と多様性を象徴しています」
ウォーターフロント再生の背景
After現在のウォーターフロントパーク
1953年に開通して以来、66年にわたりシアトルの主要幹線道路の一つとして利用されてきた州道99号線のアラスカン・ウェイ高架橋(Alaskan Way Viaduct)。全長約3.4キロメートルの高架橋は、最盛期には1日約10万台の車両が利用していました。しかし、老朽化と2001年2月のマグニチュード6.8のニスカリー地震による損傷が確認されたことから、耐震性の問題が浮き彫りとなり、撤去と地下トンネルによる代替が決定しました。
2018年撮影
地下トンネル工事は2013年に始まり、予定より約3年遅れて2019年2月に開通。その直後に高架橋の撤去作業が始まり、約21か月をかけて2020年11月に解体が完了しました。
2019年撮影
この跡地を活用して進められてきたのが「ウォーターフロント・シアトル計画」で、今回世界的な評価を受けたウォーターフロント・パークは、その中心的存在です。
約20エーカーにわたる “海と街をつなぐ公園”
ウォーターフロント・パークは、パイオニア・スクエアからスタジアム・ディストリクト、そしてピア62にかけて広がる約20エーカー(約8ヘクタール)の公共空間です。
- パイク・プレース・マーケットとウォーターフロントをシームレスにつなぐ高架歩道橋(Overlook Walk)
- 海沿いを歩けるプロムナードと自転車・スクーター専用レーン
- 子ども向けの2つのプレイグラウンドと9点のパブリックアート作品
- 原生植物の栽培と、雨水をろ過して海を守る環境設計
- 年間を通じた無料イベントや音楽・ヨガ・フェスティバルの開催
Copyright © 2025 Office of the Waterfront and Civic Projects
同公園の運営は、市と非営利団体「Friends of Waterfront Park」、およびシアトルセンター公社による協働体制で行われています。
サステナブルでインクルーシブな公共空間へ
ウォーターフロントパークの開発は、単なる再開発ではなく、「街と自然の共生」をテーマにしたサステナブル・アーバンデザインのモデルケースとして注目されています。バリアフリー設計や多文化イベントの開催を通じて、誰もがアクセスしやすいオープンで包摂的な公共空間を実現。今後は、海辺の生態系回復やサーモンの生息環境への配慮に加え、地域ビジネス・観光・文化イベントとの連携をさらに深め、多様な人々が交わるコミュニティ形成の場としての発展が期待されています。
