シアトルのダウンタウンでは、パンデミック以降の長い低迷を経て、人出が回復基調を強めています。2025年7月には訪問者数が320万人を超え、2019年比で97%に達しました。ホテル需要も2019年を上回り、居住人口も増加するなど、街の賑わいは戻りつつあります。
しかし、その裏側では国際観光需要の減少が大きな課題となっています。経済分析会社 Tourism Economics の最新予測によると、2025年の国際宿泊客数は前年比27%減。これは全米主要都市の中で最も大きな落ち込みであり、シアトルの観光構造の偏りが浮き彫りになっています。特に最大のインバウンド市場であるカナダからの訪問者が大幅に減少していることが主な要因です。
人出の回復 ─ 2019年水準に迫る数字
ダウンタウン・シアトル協会の最新データによると、2025年7月のシアトルのダウンタウンは、訪問者・宿泊・居住の各分野でパンデミック前の水準に迫る結果となりました。
- ユニーク訪問者数:320万人以上(2019年比97%)
- ワーカー足跡:日平均154,000人以上(2019年比66%、2024年比+7%)
- ホテル客室販売数:420,700室以上(2019年比105%、2024年比+3%)
- 住宅ユニット稼働数:60,000戸(2019年比+22%)
観光客だけでなく居住者や出勤者も増加し、街の活気を取り戻す動きが加速しています。ホテル需要はパンデミック前を超えており、観光インフラの回復力が示されました。
国際観光の落ち込み ─ カナダ市場の減少が直撃
こうした「人出の回復」とは対照的に、国際観光は大きな後退を見せています。Tourism Economicsの予測によれば、2025年の国際宿泊客数は前年比27%減。全米の主要都市の中で最も大きな減少幅であり、特にカナダ市場の縮小が深刻です。
シアトルにとってカナダからの訪問者は最大のインバウンド市場であり、地理的近接性や短期滞在需要で安定した観光需要を支えてきました。しかし近年は為替や物価高、旅行傾向の変化によって減少が顕著になっています。結果として、市内の観光関連産業にとって大きな痛手となっているのです。
人の流れが戻る中で、国際観光の落ち込みと財政課題をどう克服するか。シアトルの将来像は、観光依存からの脱却と新たな経済基盤づくりにかかっています。