シアトルのダウンタウンに住む人が増え、観光客の数もコロナ前に近いところまで戻ってきています。一方で、生活コストの高さは相変わらずの課題です。
しかし、今年の夏はFIFAワールドカップの試合開催も控えており、ダウンタウンにとって例年以上に注目度の高いシーズンになりそうです。Downtown Seattle Association(DSA)が毎月発表しているレポートの最新版(2026年4月版・3月データ)をもとに、ダウンタウンの今をまとめました。在住者の方も、シアトルへの訪問や移住を考えている方も、ぜひ参考にしてください。
住民数は増加、ただし生活費は高水準
シアトルのダウンタウンに住む人が増えています。2026年第1四半期のアパート入居戸数は約6万1,500戸と、2025年第1四半期比で2%増、2019年比では約30%増となりました。
一方、生活コストの高さは変わらず課題です。RentCafe によると、シアトルの生活費は全米平均より44%高く、なかでも住居費は全米平均の2倍以上(107%高)となっています。ダウンタウンの1ベッドルームの平均家賃は月額2,500ドル前後が目安で、食費・医療費・交通費も全米平均を上回っています。移住や長期滞在を検討している方は事前に把握しておきたい数字です。
通勤者数はコロナ禍前の60%程度 来訪者数は回復基調も、カナダからの観光客の減少が影響
在宅勤務が定着した影響は数字にも表れています。3月の平日の通勤者数は2019年同月の60%ほどにとどまっており、オフィス街としての賑わいはまだ道半ばです。
一方、国内からの観光客を含む総来訪者数は増加傾向が続いており、2026年の年間宿泊来訪者数は1,000万人に達すると見込まれています。
しかし、3月のダウンタウンへの来訪者数は280万人超で、2019年同月比93%まで回復したものの、前年同月比では5%減となりました。ホテルの客室販売数も32万室超で、2019年比91%の水準にとどまり、前年同月比で2%の減少となっています。
Visit Seattle が2026年3月の年次総会で発表した2025年データによると、シアトルのあるキング郡への来訪者数は3,960万人と前年比0.9%減少し、来訪者の消費額も88億ドルと前年比0.2%の減少となりました。Visit Seattle のCEOタミー・カナバン氏は「全国的に観光業は不確実性に直面しており、国外からの観光客の減少、運営コストの上昇、コンベンション出席者数への影響などの逆風があった」と述べています。
この背景には、カナダからの観光客の大幅な減少もあります。トランプ政権の関税政策やカナダを「51番目の州」とする発言を受け、カナダ全体でアメリカへの渡航を自粛する動きが広がっており、全米でのカナダ人来訪者数は2024年の約3,900万人から2025年には約2,900万人へと大きく落ち込みました。
3月末に開業したライトレールの新区間、初日は大盛況
©︎Sound Transit
明るいニュースもありました。3月28日に開業したサウンドトランジットの「Crosslake Connection」(シアトル〜ベルビュー間)は、開業初日に20万5,000人以上が乗車し、同機関の歴史上2番目に多い乗客数を記録しました。ジャングルシティでもお伝えしたこの路線、多くの人が楽しみにしていたことが伺えます。
また、2月のシーホークスのスーパーボウル・パレードはダウンタウンに最大1,660万ドルの経済効果をもたらしたとされており、イベントが街の活気を後押しする力を改めて感じさせました。
今夏のワールドカップとクルーズシーズン、期待と不安が交錯
今年のクルーズシーズンは4月から10月にかけて330回の寄港が予定されており、200万人以上のクルーズ客がシアトルを訪れる見込みです。また、FIFAワールドカップではルーメン・フィールドで6試合が開催されます。
一方で、懸念材料も少なくありません。トランプ政権の移民政策や入国審査の厳格化を背景に、ヨーロッパやカナダをはじめとする国外からの観光客の間でアメリカへの渡航を避ける動きが広がり続けています。米国・イスラエルによるイラン攻撃を受けた中東情勢の悪化も影を落としており、シアトルで試合が予定されているイラン代表チームの参加自体が危ぶまれました。さらに、中東情勢による原油価格の高騰が航空運賃を押し上げており、物価高とあわせて渡航コストは増加しています。
こうした状況を受け、Visit Seattle はワールドカップの経済効果予測を当初の9億2,900万ドルから8億4,600万ドルに下方修正。国外からの観光客の落ち込みを国内からの観光客で補う見通しで、「来訪者数の減少ではなく、訪れる人の構成の変化」としています。(シアトル・タイムズ)
ウォーターフロントやパイク・プレイス・マーケット周辺の賑わいは期待できるものの、当初の見込み通りにいくかどうかは、夏が終わってみないとわからない部分も多そうです。
