一方、日本では、50パーセントの戸建住宅の平均寿命が38年しかなく、日本全体で60%の住宅が1980年以降に建てられたものと言われている。日本の住宅の寿命が極端に短い原因は、必ずしも建物の耐久性が米国に比べて低いというわけではなく、簡単に言えば建物不動産評価額が20年で押しなべてほぼゼロになることに起因していると言えるだろう。これはどういう意味かというと、日本では住宅は消費財であって、米国のように資産投資の対象にならないということだ。文化的資産としてごく一部の住宅が取り壊されず残っているが、建物が消費財として認識される限り、自動車と一緒で、いずれ性能の高いものが市場に出現すれば、すぐに取り替えられてしまう。日本の住宅メーカーの宣伝の内容の大半は新しいテクノロジーや耐震性能や断熱精度の高さであることに対し、米国では周辺環境、景観、使用しやすいキッチンや、大きなマスターベッドゾーンなどで、両国の住宅に対する文化が明らかに違うことがわかる。そのような中で街並みの均一化は日本では不可能に近く、文脈がなくなった日本の街では、従うべきスタイルがないままに、とりとめのなく落ち着かないの顔の街が日本中で広がっているよう思われてならない。それに比べ、シアトルの街は建築家にとって新しい建物を設計する機会が少ない半面、歴史的な建物を生かして街並みを保存しつつ、その中に現代に必要な用途をいかにして取り入れていくかというチャレンジを建築家に課しているようだ(写真4)。
掲載:2014年4月