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アメリカでのリモートワークの弊害とその対策

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新型コロナウイルスの影響で、十分な準備もないまま始まり、現在も続いているリモートワーク。表面上は特に問題なく実務が行われている企業も多いと聞きますが、本当にすべてが問題なく行われているのでしょうか?今回はリモートワークの弊害にスポットを当てて考えてみたいと思います。

先日、リモートワークを題材とした日本のニュース番組を観ていたところ、リモートワークのメリットを尋ねられた多くの従業員の回答が、「通勤がなくて楽になった」「子供の面倒を見れるようになった」「家事をする時間が増えた」などプライベートにまつわる話が多く、職務や社内コミュニケーション等に関する意見はほとんど聞かれませんでした。

日本特有の通勤事情や政府主導の「働き方改革」の流れはあるにせよ、「働く」という本来の目的と異なる部分のメリットばかりが取り上げられ、やがて本末転倒にならないかという一抹の不安を抱かずにはいられません。

ここアメリカでも同様の話はよく聞かれます。リモートワークは上記のように従業員に多くのメリットをもたらしたことも事実ですが、その反面、パフォーマンスの低下を感じるという管理職からの声も少なくありません。

もくじ

リモートワークで失われたもの

真面目な従業員は、自宅であれカフェであれ、オフィス勤務と変わらないパフォーマンスを発揮している、現在のところ・・・。しかし将来についてはどうなのでしょうか?

必要性を感じなくなったオフィスの縮小や廃止に舵を切る企業も出始めていると聞きます。ではオフィスに集まって仕事をすることにメリットはなかったのでしょうか?オフィス勤務をしないことで失われたものを挙げてみます。

・気軽なコミュニケーション
オフィスでは業務の妨げになる私語は原則禁止です。しかし、気軽な会話を交わすことによって相手の人柄を感じ、信頼して助け合う人間関係が生まれたという経験をした方はいないでしょうか。助け合うことで相手の仕事を理解し、知らず知らずの間にクロストレーニングが行われていることさえあります。

・社風
全員がリモートワークの場合、よほど意識しない限り良くも悪くも社風というものは希薄になっていきます。立派なビジョンやミッションがあっても実践している従業員が近くにいなければ、その重要性を感じることは難しくなります。

・他の従業員からの「経験の伝承」
些細な成功体験や失敗体験などは、実は社内で雑談として共有されていることが多いです。他人の経験を知らず知らずのうちに自分の糧としているのです。残念ながら、リモートワークによりその機会は減ることになるでしょう。

・相手への信頼
顔が見えないことで、信頼度は低くならざるを得ません。例えばオンラインミーティングを実施しても、音声や動画を OFF にしている従業員がアクティブに参加していると考えられるでしょうか。ひょっとして8時間働いてはいないのではないか、などと疑心暗鬼になる管理職もいるでしょう。また、仕事とは結果と同様に過程も大切だと考えた場合、リモートワーク環境ではどのように過程を評価することができるでしょうか。

・モチベーションの維持
最初のうちは邪魔が入らず集中して仕事ができると感じていた環境も、ひとりで孤独に仕事をする時間が長くなるほど、意外に誘惑が多いことに気づきます。ペットや子供などアクティブに邪魔が入る以外にも、リサーチ用のウェブサイトや動画など、仕事の延長から始まる誘惑もあります。

このように失われたものを列挙して初めて、オフィスに従業員が集まって仕事することのメリットが見えてきます。また、上記の共通点が「コミュニケーション」であることにもあらためて気づかされます。つまり、リモートワークの状況では、意識してコミュニケーションを強化することが必要なのです。

リモート環境でのチームビルディング

オフィス勤務にすることなくコミュニケーションを取り戻すにはどうすればよいのでしょうか。アメリカでは以前から日本よりリモートワークが進んでいたとはいえ、現在これらへの対策が注目されています。以下にいくつかの例を紹介します。

チームビルディングゲーム:
アメリカでは学校や職場で新たにチームが結成された時、互いを知り一体感を高めるゲームを実施することがあります。オフラインでも可能なチームビルディングゲームには下記のようなものがあります。

・3つの真実と1つのウソ:各自が自分のことについて4つのことを話すが、1つだけ混ざっているウソをチームで見つけ出していくゲーム。これはチーム間のコミュニケーションを高めることに注力したものです。

写真紹介:各自が自分にまつわる写真を一つずつシェアし、それについて説明します。こちらは自己紹介に似ていますが、他のメンバーからの質問に回答することでより深く個人を知ることができます。

ドーナツ会議: 少人数のグループを毎回作り、各自がスナックを食べながら仕事関係にない会話をする場を設け、週1回から月1回くらいの頻度で行います。弊社でも数年前から毎週金曜日のランチを会社で用意して、各自持ち回りで仕事と関係のないトピックを準備・発表させています。この方法は個人で完結する業務が多い職場ほど、コミュニケーション向上に有効です。

リモートでのパフォーマンス評価方法

同じ職場にいない従業員のパフォーマンス評価は、意外と難しいもの。従来よりも頻繁にフィードバックを与え、各人の現状を把握しておく必要があります。

計画と詳細な目標設定: 1週間単位のアクションを「過程」も含め目標化し、「結果」として見られるようにする。ネガティブなイメージのあるパフォーマンス改善プランをポジティブに実施すると考えればわかりやすいでしょう。

仕事での成長を確認する: 不得手な業務をいかに克服したか、得意な業務をどのように成長させたかなど、本人のモチベーションにつながる「成長」を見出し、ほめることを中心にフィードバックします。

コロナ禍で十分な昇給予算がなくても従業員の理解が得られ、従業員をランク付けするのではなく、モチベーション維持に着眼し、評価します。

コミュニケーションを意識する

上記以外にもさまざまな手段がありますが、意識的にコミュニケーションを図ることが、このコロナ禍のリモートワークを成功させる上でもっとも重要です。

コロナ終息後もこのような方法を継続すれば、より快適で効率的な職場環境を提供でき、従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

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