■おすすめの本
手紙
東野圭吾 著
両親を早くに亡くした身寄りのない兄弟、剛志と直貴。高校生の弟・直貴を養う兄・剛志は、直貴を大学に進学させるためにどうしてもお金が必要になり、強盗殺人という凶悪犯罪を起こしてしまいます。自分は罪を犯していないのに、"強盗殺人犯の弟"
になってしまった直貴に降りかかってくる数々の苦難。せっかく仕事や夢、恋愛といった幸せをつかみかけても、兄の存在が直貴を繰り返し不幸にしていきます。理不尽とも言える差別の中で、直貴のもがき苦しむ様子に胸が締め付けられました。
私たちは毎日のようにニュースで殺人事件に触れます。当事者でない私たちは、犯人が捕まれば、「よかった」と安堵し、その事件のことは次第に忘れていきますが、加害者と被害者を取り巻く人々はいつまでも苦しみ続けるのです。
受刑中の兄が刑務所から直貴に毎月送ってくる手紙。外の世界との関係を絶たれている兄にとって、月に一度弟に手紙を出すことは楽しみであり、弟からの返事を心待ちにしている様子が伺われるのですが、直貴がどんな厳しい社会に耐えているかを想像もしない兄の、時にのん気な内容の手紙には腹立たしささえ覚えます。
あまりにも不幸な直貴に感情移入しながら読み進めていましたが、ある人物の登場でまた考えさせられることに。直貴が受けている社会からの差別は本当に理不尽と言えるのか?そして直貴がやるべきことは何か?映画化もされたこの作品。感動を与えるラストでも、読み終えた後にすっきりするものでもないのですが、おすすめの1冊です。
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