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赤ちゃんの健康のために 第5回 : 母乳と黄疸


注:この手引きは、北米でも有数の母乳の権威、ジャック・ニューマン先生(カナダの小児科医)が一般教育のために提供しているものを、なでしこクリニックの押尾祥子が翻訳したものです。ニューマン先生のウェブサイトには、この手引きの他にも、実際に目でみることのできる画像も無料で提供されています。そうした画像をまとめた DVD を購入することもできます。詳細はこちら をご参照ください。

はじめに

黄疸というのは、古い赤血球が壊れた時、黄色い物質が血液中にたまって起こるものです。体内では常に寿命が来た赤血球が破壊されているのですが、普通はそうしてできたビリルビンを肝臓が代謝して腸内に排出しているので、黄疸が起こりません。新生児の場合には、肝臓の中でビリルビンを代謝するための酵素がまだ少し未熟なので、黄疸がよく起こります。さらに、新生児は成人よりも赤血球の数が多いので、結果的に一定時間内に破壊される量が多くなります。特に、未熟児や難産だった場合、お母さんが糖尿病を患っていた場合、あるいは普通より多量の赤血球が破壊されている場合(血液型不適合など)には、ビリルビン値が普通より高くなります。

まず、黄疸には2つのタイプがあります。肝臓で代謝されたビリルビンは、身体から出やすい形に変わります。こうして変化したビリルビンは、抱合型ビリルビン、直接型ビリルビン、または水溶性ビリルビンなど、いろいろな名前で呼ばれますが、原則的には同じものです。もし、肝臓がうまく機能していなかったり(感染症を起こしている場合によく起こる現象です)、あるいは、ビリルビンを腸内に運ぶ管が詰まっていたりすると、血液中のビリルビンが異常にたまって、黄疸になります。こうした現象が起こっていると、尿の中にビリルビンが出てきて、尿が褐色になります。尿が褐色になるというのは、この黄疸が、「生理的な、普通の」黄疸ではない、という証拠です。抱合型のビリルビン値が高くなるというのはあきらかに異常な状態で、早急に原因を追究しないといけません。なお、こうした場合でも、母乳をやめる必要はありません。代謝異常があって母乳を代謝できない赤ちゃんがこうした黄疸を起こすことがあるので、その場合には母乳をやめなければいけませんが、そうした事態は本当にまれです。

肝臓で代謝される以前の形のビリルビンが血液中にたまるのは生理的黄疸と呼ばれ、ほとんどの場合は正常です。代謝される以前のビリルビンは、遊離型ビリルビン、間接型ビリルビン、または脂溶性ビリルビンなどと呼ばれます。生理的黄疸は生後2日目ぐらいから始まり、3日目から4日目に一番ビリルビン値が高くなり、その後、消えていきます。ただし、生理的黄疸でも、ひどくなると治療が必要になることがあります。治療が必要になった場合でも、原因が母乳と関係なければ母乳を続けるべきです。たとえば、なんらかの理由で赤血球が大量に壊されていくので黄疸がひどくなった場合などは、母乳をやめる理由はまったくありません。母乳栄養を続けるべきです。


母乳性黄疸とよばれる現象

母乳性黄疸と呼ばれる現象があります。どうしてこういう現象が起こるのか、はっきりわかっていません。この診断をするためには、生後1週間以上たっている必要があります(母乳性黄疸になる赤ちゃんは生理的黄疸も強い傾向があります)。こうした赤ちゃんは、体重も順調に増加していて、うんちも普通に出ていて、おしっこも透明で量も充分出ているものです。こうした赤ちゃんに黄疸が続くときに、母乳性黄疸と呼ばれます。ただし、ごくまれに、尿路感染症、甲状腺機能不全、あるいは、もっとまれな病気が原因で黄疸が続くこともあります。母乳性黄疸は、生後10日から21日ぐらいから下がりはじめますが、中には、2-3ヶ月、この状態が続くこともあります。母乳性黄疸は正常な現象です。ほんの一時的にだとしても、母乳をやめなければいけない理由はほとんどありません。光線療法が必要になることもほとんどありません。母乳性黄疸が赤ちゃんに害になることはないのです。母乳をやめて診断をしましょう、といわれることがありますが、その必要はないのです。繰り返しますが、赤ちゃんが母乳だけで元気なら、母乳を足したり、母乳をやめたりする必要はまったくないのです。

黄疸があるということは異常なのだ、という考え方は、人工乳でそだっている赤ちゃんを基準にしてものを考えるから起こるのであって、まったく道理の通らないことです。医療関係者にとって、人工乳で1週間以上育っている赤ちゃんに黄疸が起こることは非常にまれです。もし、万が一、そんな黄疸が見られたら、明らかになんらかの異常があるのです。そこで、母乳の赤ちゃんに母乳性黄疸があると、医療関係者は、「なんとかしなければ」と思ってしまうのです。私たちの経験では、母乳だけで元気に育っている赤ちゃんというのは、生後5-6週か、それ以上黄疸が続くことが多いのです。逆に言えば、母乳だけで育っているのに黄疸が出ない、ということが普通ではないのではないでしょうか?結論としては、母乳性黄疸では、母乳栄養をやめる必要がない、ということです。


母乳不足のための黄疸

母乳の量が充分でない場合には、生理的黄疸よりも高い値のビリルビンが出て、しかもそれが長く続いたりします。母乳の出始めるのが少し遅かったり(最初から赤ちゃんがしっかりおっぱいに吸い付いて飲んでいれば、あまりこうした問題は起こらない はずです)、あるいは、病院が母子を離してしまっていたり、しっかり吸いつけてないために、出ている母乳を飲めていない、という場合によく起こります。

もし、赤ちゃんが充分飲めていない場合には、うんちの回数や量が少ないため、赤ちゃんの腸の中に排出されたビリルビンが便と一緒に体外に出るかわりに、再吸収されて血液中を循環し続けます。母乳不足のための黄疸を防ぐのには、正しい吸い付き 方、飲み方が最初からできるようにすることです。赤ちゃんの飲んでいる母乳の量が足りないからと言って、人工乳を与えるのが解決策ではありません。もし、母乳に正しく吸い付いて飲めていれば、もっと頻繁に授乳することによって、ビリルビンの値が下がってくるでしょう。この場合は、何もせずに待っていれば大丈夫です。うまく吸い付けていない赤ちゃんの場合は、正しい吸い付き方で、きちんと飲めるようにしてあげましょう。それだけで、もっと母乳が飲めるようになってくるでしょう。さらに、乳房を圧迫して、出てくる母乳の量を増やすようにすると、さらに良いでしょう。

もしも、正しく吸い付いていて、乳房圧迫法を使っても、まだ問題が解決しない場合は、チューブを胸につけて補足授乳することが必要になるかもしれません。また、赤ちゃんが飲むことができる母乳を増やす手立ても考えましょう。正しく吸い付くためのサポート、よく飲めている場合のあごの動き、乳房圧迫法などの実例については、こちら のページにあるビデオを参照してください。


光線療法

光線療法を受けている間、赤ちゃんは脱水になりやすく、水分をもっと必要とします。赤ちゃんがよく飲めているようなら、もっと頻繁に飲ませることで、充分な水分が取れるようになります。もし、それ以上に水分摂取が必要だと判断したならば、チューブを胸につけて、補足授乳をしましょう。補足する内容は、搾乳した母乳が一番良いのですが、それで足りなければ、搾乳した母乳に糖水を足したもの、あるいは糖水だけのほうが、人工乳を足すよりも良いでしょう。


母乳栄養の手引き #7. 黄疸 2005年1月改訂 ジャックニューマン著 (c) 2005 押尾祥子訳

※ニューマン先生は、WHO が出している 『母乳代用品の宣伝に関する国際倫理基準(1981)』 に反した人工乳の販売目的にこの手引きが使用されることを禁止しています。ただし、それ以外の目的であれば、この手引きの内容の転載に許可を必要としていません。


(2007年10月)
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