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第17回 : 割礼について


最近、割礼(かつれい:circumcision)について勉強する機会がありました。これまでも私は、「別にたいした医療上の利点がないのに手術の危険をおかす必要はない」という理由で割礼には反対だったのですが、勉強すればするほど、これはやめたほうが良い習慣だという確信を得るようになりました。皆さんにもこの件についてよく考えていただきたいと思います。とは言え、賛否両論があるかと思いますので、皆さんからのご意見も聞かせていただければ幸いです。

日本人にはあまりなじみのない習慣なので、「割礼とは何か」というところから説明したいと思います。アメリカでは、産まれたばかりの男の子に割礼をする習慣があります。これは、ペニスの亀頭を保護する包皮を全部切り取ってしまう手術のことです。一般的には、病院でお産を取り扱った医師によってお産の翌日に手術が行われます。

ユダヤ教の人は宗教上の理由で、生後8日目に割礼の儀式をするのですが、ユダヤ人の間でさえ、割礼は本当にユダヤ教の教義に乗っ取ったものかどうかという論議が行われています。ユダヤ教での割礼はもともと「ほんの少し包皮の先を切り取る」という手術だったのに、次第に「包皮全部を切り取る」という手術に変わっていったのだそうです。私の知っているユダヤ人の小児科医は、新生児代謝異常検査の際に赤ちゃんの踵を刺して採血するので、割礼の代わりに、それがユダヤ教の神との契約の血である、として儀式を行っています。

実はイギリスやニュージーランドでも割礼をする習慣があったのですが、医療的に根拠のないことだとわかり、保険が割礼の費用を支払わなくなったら、ほとんど行われなくなったそうです。アメリカでも最近は割礼をする人の数が減ってきていますが、それでもまだ、お父さんがしているから息子も、という単純な理由で続ける人が多数います。

もともと、医療上の理由というのは、マスターベーションをすることによって精神異常を起こすという誤解から始まったもののようです。「包皮を切り取ってしまうと感覚が鈍くなって、あまりマスターベーションをしなくなる」という理由で割礼が行われてきたのです。今は処置の前に麻酔の注射をする医師がほとんどですが、以前は、マスターベーションをふせぐための手術なので、麻酔無しで手術を行うことが奨励されていました。

現在では、膀胱炎を予防する、ペニスのガンを予防する、という医療上の目的で医療的な割礼が行われています。しかし、どちらの病気も包皮や亀頭を清潔に保っていれば防げる病気ですし、ペニスのガンはとても希な病気です。また、膀胱炎は抗生物質を使えば簡単に治療ができるものです。出血、感染症、手術の失敗などの危険を冒してまで外科的に予防しなければならないような理由ではありません。手術の合併症や、やり直しの必要性については、次のコラムでもう少し詳しく説明します。

日本人のお父さんたちの中には、男性雑誌に包茎の手術の宣伝がたくさん載っているのを見て、「そんなに大きな問題ならば、赤ちゃんのうちに割礼をしておいてあげた方が良いのでは?」と考える人もいるようです。日本には、正常でまったく問題のない仮性包茎を、あたかも医療的な治療の必要があるかのように宣伝する医師たちがいるのですが、これは医療倫理に反するものだ、と批判されています。勃起していない時に、包皮が亀頭を覆っている仮性包茎は、包皮が繊細な亀頭を保護し性感を高めるので、望ましいことなのだそうです。ただし、包皮が自然にむけるようになってからは、排尿の時や、入浴の時は、包皮をむいて中の清潔を保つことが大切なので、父親がきちんと教えないといけません。

将来真性包茎になることを心配して、まだ自然にむけてない男の子の包皮を無理にはがすお母さんや医療者がいるのですが、これは包皮に傷をつける原因になるのだそうです。自然にはがれるまでそっとしておけば、包皮はだんだん伸びてくるので包茎になる可能性は低いのですが、無理にむいたために傷がついた包皮には、瘢痕組織ができて伸びなくなり、包皮輪狭窄の原因になります。そうなると、手術などの治療が必要になってしまいます。そっとしておいて自然にむけてくる年齢は平均で10歳、遅い人では17歳ぐらいだそうです。


(2006年10月)
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