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アメリカでの出産・育児「産後うつのサポート – 家族やまわりの人ができること」

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産後うつの場合、薬やカウンセリングなどの治療を受けると同時に、生活習慣を変えたり、家族のかかわり方を変えたりすることも回復の助けになります。また、うつになった人だけでなく、家族全体の精神衛生を考えることも大切です。

もくじ

睡眠の大切さ

睡眠は精神衛生にとても大切です。産後には、睡眠が足りなかったり小刻みになったりして、うつやそのほかの精神病を悪化させる要因になります。

家族が協力して産後のお母さんをサポートできるようなら、邪魔されずに4時間眠れる時間を、一日に2回(合計8時間)、とれるようにしてあげましょう。母乳をあげているとおっぱいが張ってくるので、8時間続けて眠ることは難しいでしょうし、8時間も母乳をあげないでいると、母乳の量が減ってしまいます。夜はお父さんやおばあちゃんが赤ちゃんと一緒の部屋に寝て、2〜3時間で起きてしまったら、搾乳した母乳を与え、4時間ぐらいお母さんが寝たあとに赤ちゃんが起きたら、お母さんの部屋に連れていって授乳をする、というような工夫ができます。

関わり方の工夫

精神的なサポートも大切ですが、うつの人とかかわるのにはちょっとした工夫が必要です。

うつになると自信がなくなり、「自分はダメな母親だ」と思い込んでしまいます。その時に、「あなたはダメなお母さんではないよ。よくがんばっているよ、良いお母さんだよ」などと説得しようとすると、逆効果になります。はげましたり、説得しようとするのではなく、話を聞いてあげないといけません。うつになった人は、自分を恥じてあまりものを言わなくなったり、あるいは、はっきりと論理立てて自分の思っていることを説明する能力が落ちてしまったりしているので、根気よく耳を傾けてあげましょう。

家事の負担を減らす

うつの人は、家事や育児をうまくこなせなくなる場合が多いのですが、決して怠けているわけではありません。ちょうど、風邪で高熱を出すと寝床から起き上がるのも難しくなるように、うつになると行動を起こすことがとても難しくなるのです。まわりの人が協力して、家事の負担をできるだけ減らしてあげましょう。食事を作る、洗濯をする、赤ちゃんのおむつを変える、お風呂に入れる、などを他の人が受け持つようにしましょう。

状態を把握し、軽視しない

ちゃんと食べているかどうか、運動をしているか、カウンセリングや投薬などの治療をちゃんと続けているかどうかも、家族が把握しておきましょう。また、治療を始めてから急に症状が悪くなったような場合には、早急に主治医に連絡して、診てもらいましょう。自殺したい、とか、この子は生まれてこない方が良かった、ということを言い出したら、決して軽く見てはいけません。すぐに主治医に連絡をしましょう。

周りの人も自分のケアを

うつの人と暮らすのは、精神的にとても負担になるものです。うつの人が自分を避けたり、イライラしてばかりいたり、何をしてあげてもうれしそうな顔をしてくれなかったりすると、自分をきらいになったのではないかと思ったり、自分自身がうつになってしまったりします。

精神的なサポートをするのが苦手で、仕事に打ち込むタイプの男性もいます。夫としては、赤ちゃんの分も稼ぐために自分はがんばっているんだ、と考えるのが普通ですが、無意識のうちに、うつの妻とのかかわりを避けるために長時間働いている場合もあるかもしれません。家族それぞれの精神状態にもよく気を配って、必要ならカウンセリングも受けましょう。うつになると、性欲も落ちてきます。また、抗うつ剤の副作用で性欲がなくなる場合もあります。夫婦間でそれが大きな問題になるようでしたら、専門のカウンセラーに相談するのが良いでしょう。

サポートグループに参加する

うつになった人は、「自分だけがこんな思いをしている」と考えがちです。人に会うことができるぐらい元気になってきたら、サポートグループに参加すると良いでしょう。「自分だけではないんだ」「他にもこんな思いをしている人がいるんだ」ということがわかるだけでも気が楽になります。シアトルには日本人だけのサポートグループはありませんが、英語でもよければ、大きな病院にはこうしたグループがある場合が多いので、参加してみましょう。

一口に産後うつ、といっても、病状もさまざまで、治療法に対する反応も個人個人で異なるため、その後の経過もまちまちです。一般的には、治療を受けると数週間から1年ぐらいで良くなる場合が多いのですが、治療を受けないと3年たっても慢性的なうつの症状がある、と言われています。また、一回産後うつを経験すると、次の出産後に産後うつになる可能性は50%ぐらいのようです。一回産後うつを経験した人は、次の妊娠時に早めに主治医に相談して、予防、早期発見、治療のための適切なプランを立てておきましょう。

情報提供:ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士 押尾祥子さん

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