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若い女性のために 第3回 多のう胞性卵巣症(Polycystic Ovary Syndrome)

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic

【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
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今回は生理が止まったり、時々抜けたりすることが特徴の、多のう胞性卵巣症 (Polycystic Ovary Syndrome)、略して PCO と呼ばれる状態について説明しましょう。耳慣れない方も多いと思いますが、実はこれはひとつの病気ではなく、さまざまな理由によるホルモン異常のために、卵巣から排卵が起こりにくくなっている状態のことで、若い女性には5%ぐらいの頻度で見られると言われています。

以前は、超音波で卵巣を見て、あわびの殻のように卵巣のふちに出そこなった卵胞が並んでいるのを診断基準にしたことからこのような名前がついていますが、最近ではこうした所見は正常でも見られ、また、PCO の人でもこのような卵巣にならない人もいることがわかっています。

日本人とアメリカ人では少し病気の現れ方がちがいますが、次のような症状がいくつかある場合は、PCO の可能性があります。

  • 生理がときどき抜けたり、しばらく来なかったりすることがある
  • しばらく来なかった生理が来ると、大変出血量が多い
  • にきびがひどい
  • 顔や手足の毛が濃くなる (日本人には少ない症状です)
  • 臀部より腹部が大きい「りんご」体型の肥満 (これも日本人には少ない症状です)
  • 家族に糖尿病の人が多い
  • 避妊をやめたのに、なかなか妊娠できない
  • 妊娠しても、初期の流産を繰り返す

PCO は男性ホルモンの働きが強くなるので、毛深くなったり、ニキビが出たり、男性のような肥満体型になったりします。また、この症状を持つ人は、将来糖尿病になりやすく、心臓病や、高コレステロール血症にもなりやすいようです。ごくまれですが、ホルモンを作る腫瘍によって PCO の症状が起こることもあるので、血液検査で調べてみることが必要です。腫瘍は手術などで治療します。いったん毛深くなってしまうと、ホルモン状態を治しただけでは元に戻らないので、永久脱毛などの手段を使う必要があります。

症状の程度にもよりますが、まだ妊娠を考えなくてもよい年齢の人は、経口避妊薬(避妊ピル)を飲むことによって生理が順調に起こり、ひどい出血を防ぐことができます。にきびもピルによって改善される場合がほとんどで、”Yasmin” という種類のピルは、PCO の症状に特によく利くとされています。ただし、ピルは PCO の症状を抑えるだけで治すわけではありません。将来妊娠したいときには、別の治療をする必要があります。

最近では、この症状が糖尿病の前段階のような状態から起こることがわかり、血糖を安定させる飲み薬で治療することが多くなりました。メトフォーミンと呼ばれるこの薬を飲むとインシュリンの感受性が高まり、それによって、他のホルモンのバランスも取れてきます。また、無排卵だった人が、これだけで排卵を起こすようになる場合もかなりあります。

妊娠を望んでいる人は、メトフォーミンだけで排卵が起こらなければ、クロミドという排卵促進剤を併用します。排卵促進剤には、かなり強い副作用が出ることがあります。なお、薬で排卵が起こらない状態の人は、手術で卵巣の殻に穴をあけて排卵しやすくする場合もあります。

薬を使う前に自分でできる健康管理もあります。それは定期的な運動です。1日に早足で30分から40分歩きましょう。あるいは、ジムでエアロビクスのクラスを毎日とるのも良いと思います。この症候群になる人は、糖尿病の予備軍のようなもので、血糖の代謝が悪くなっています。そうすると、卵巣の機能に影響するので、インシュリンの感受性を高めなければなりません。1週間に3回以上運動をするとインシュリンの効き目が良くなります。

また、体重の多い人は普通体重に減らすだけでも、症状がかなり良くなります。代謝にもともと問題があるので、食べるものを減らすだけでは体重は減らないと思いますが、運動と組み合わせて、健康的な食事に切り替えて体重管理をしましょう。

(掲載日:2002年9月; 最終更新日:2009年11月30日)

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