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更年期からの女性の健康(4) 更年期の対処法-ホルモン療法とそのほかの薬

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic

【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
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はじめに

更年期症状の程度は人によって異なりますが、20人に一人ぐらいの割合で、のぼせ・ほてり・寝汗などがひどくて生活に支障をきたす場合があります。そんな場合は、適切な薬を使うことによって乗り越えることができます。

一番効果的なのはエストロゲン製剤の使用によるホルモン療法です。ところが、歴史的に、ホルモン療法の効能と安全性についての研究が進むにつれて医学界の意見が変わってきているので、身体に良いことなのか、悪いことなのか、混乱している人も多いと思います。結論としては、閉経前後の不快症状がひどい場合に短期間だけホルモン療法を使うのが最適です。以下に概略を説明してみます。

エストロゲン製剤を単独で使う危険性

かなり昔から、エストロゲン製剤だけを使うと、閉経後の出血が起きたり、子宮体がんが増えることがわかっています。したがって、すでに子宮摘出手術をしてあって子宮体がんの可能性がない人以外は、エストロゲン製剤だけを単独で使わず、プロゲステロン製剤を併用して、子宮体がんを引き起こさないようにします。

閉経後10年以上たってからホルモン療法を開始する危険性

閉経して10年以上たってからホルモン療法を開始した場合は、心臓病・血栓症・乳がんなどをわずらうケースが多くなることがわかっています。したがって、閉経後10年以上たっている場合は、利点とくらべて危険性が高いため、新しくホルモン療法を始めることは避けた方が良いです。

適切にホルモン療法を使った場合の効能と副作用

閉経前後の45歳から55歳ぐらいまでの比較的若い人の場合、ホルモン療法はのぼせ・ほてり、性交痛、膀胱炎、イライラなどの更年期に多い症状を軽減する効果があるだけでなく、それ以外の健康上の利点も多いです。女性の健康に影響するホルモン療法の効果をまとめると、次のようになります。

予防効果:心臓病、死亡率、骨折、糖尿病、大腸がん
危険性を少し高めてしまう効果:脳卒中、血栓症、胆のう炎

乳がんをわずらうケースは、エストロゲン製剤だけを使うと少なくなり、エストロゲン製剤とプロゲステロン製剤を併用すると、少し多くなるようです。ホルモン療法が症状に影響するような病気もあります。持病のある人は、ホルモン療法をした方が良いのか、しない方が良いのか、かかりつけの医師や婦人科に聞いてみましょう。

局所的な効果だけのための治療

膣の乾燥・痛み、頻繁に繰り返す膀胱炎などの治療には、膣内にホルモン剤を使うこともあります。クリーム、リング、錠剤など、いろいろなタイプがありますが、局所的な効果だけなので、のぼせ・ほてりなどには効果がありません。そのかわり、血栓症などの大きな副作用もほとんどありません。

ホルモン以外の更年期症状治療薬

「ホルモン療法に利点があることもわかったけれど、それでも乳がんが心配だ」とか、「血栓症や脳卒中が家族に多いのでホルモンは避けたい」という場合は、他の種類の薬を使うことができます。

抗ウツ剤:SSRI や SNRI と呼ばれるタイプの抗ウツ剤の多くが、のぼせ・ほてりの症状を半減させることがわかっています。Effexor とか Paxil という名前の薬が特によく効くとされています。もともとウツの治療薬なので、のぼせ・ほてりを軽減すると同時に、更年期前後に多いイライラや、ウツにも効果があります。また、気分が良くなると、のぼせがそれほど気にならなくなる、という効果もあるようです。

抗てんかん薬:ガバペンチンというてんかんの薬も寝汗、のぼせ・ほてりに良く効きます。眠気を引き起こす副作用があるので、夜中に大量の汗をかいて不眠症になる、という人にむいている薬です。

これらの薬は、家庭医、婦人科医、助産師に受診すると処方してもらえます。ひとりひとりの症状、病歴、家族歴、目的などについてきちんと相談し、一番適切な薬を処方してもらいましょう。また、1種類使ってみてあまり効果がなかったときには、違う種類の薬を試してみることもできます。

(2014年7月)

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