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卵子凍結保存について

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP
【メール】 sachiko.oshio@gmail.com
【公式サイト】 www.sachikooshiocnm.com
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仕事をしている34歳の独身女性です。将来の妊娠に備えて卵子凍結保存を希望する女性が増えてきているとニュースで見た記憶がありますが、現実問題としてこのような選択肢は可能ですか?また、成功事例、リスクなども教えていただければ幸いです。

回答:卵子凍結保存は現実に行われています。シアトル近辺の不妊症クリニックでも扱っているところがあります。卵子凍結保存というのは、体外受精の場合と同じようにホルモン剤を使って大量に排卵を起こし、それを内視鏡手術で採取し、細胞が壊れないように凍結して、妊娠したい時期まで保存しておく方法です。

クリニックによって異なりますが、保存までの費用はだいたい$10,000前後のようです。妊娠したい時期まで卵子を維持するには、年間$500ぐらいの保管料がかかります。実際に妊娠することに決めたら、その卵子を人工的に受精させ、子宮内に着床させることになりますが、その費用が1サイクルで$5,000ぐらいかかるのが一般的です。一回では妊娠できず、2回、3回と繰り返す人もいます。

不妊治療というのは、非常に精神的に抵抗があるものです。「待っていればそのうち誰かが現れるだろう」「何年かすれば自然に妊娠できるだろう」と思って検査や治療を先延ばしにしているうちに、妊孕力(にんようりょく)が下がってしまう場合が多々あります。「絶対に子供を産みたい、でも、勉強や仕事、相手などの都合で38歳を過ぎるまで子供を産めない」という女性は、考慮してみる価値がある方法です。

現在この方法が一番多く使われているのは、ガンの治療のために妊娠ができなくなってしまう人たちが、治療の開始前に卵子を保存する場合です。また、非常に高額なため、「まだ結婚相手が見つからないので、将来の不妊が心配だ」という理由だけで卵子凍結を行う人はあまり多くないようです。

卵子凍結のリスクには、母体のリスクと、妊娠のリスクと、産まれてくる子供のリスクがあります。まず、母体のリスクですが、ホルモン剤の副作用で卵巣が異常に腫れたりすることがあります。内視鏡手術の際には、麻酔の副作用、感染症、出血多量などのリスクがあります。また、将来、卵巣癌の可能性が少し高くなると言われています。妊娠のリスクとしては、自然妊娠と比べ、流産や早産などの可能性がいくらか高いようです。胎児のリスクとしては、先天性異常の可能性が少し高くなる、という意見の研究者もいますが、はっきりした証拠はありません。

なお、卵子を凍結したからといって、妊娠が保証されるわけではありません。凍結・解凍の成功率が7-8割、受精卵の着床の成功率がやはり7-8割、それに加えて、流産せずに出産まで無事に妊娠が継続する率が少し下がるので、一回の妊娠のためには10個ほどの卵子を凍結しておくことが望ましいとされています。

(2014年3月)

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