第9回 妊娠後期の不快症状

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic
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妊娠も36週を過ぎるといろいろな不快症状が出てきます。もう妊娠はたくさん、という状態になって、怖いけどお産が待ち遠しいという気持ちになれるようです。

むくみ

妊娠後期には、誰でも少しはむくむものです。特に暑い日、長いこと立っていたり、じっと座っていた日にはむくみがひどくなります。靴がきつい・ソックスが食い込む・指輪が抜けない・足首が象のように太くなるなどの自覚症状が出てきます。対策としては、1日にコップに7~8杯の水を飲む・塩分を少し控える・横になる ・プールで泳ぐ・ぬるいお風呂にゆっくりつかるなどがあります。普通のむくみは心配ありませんが、中毒症の症状として出るむくみは大変危険です。びっくりするほど 急にむくんだり、心臓から上がむくむ・痛み止めが効かないほどの頭痛がする・目が チカチカする・肝臓が痛むなどの症状が出たら、夜中でも担当の医師・助産婦などに連絡し、治療を受けましょう。

妊娠線

ある程度は防げますが、出る人は何をしても出るものです。出やすい人は、お母さんや姉妹に妊娠線が出た人、体重増加の多かった人、急にお腹の大きくなった人などがあります。成長期に足や胸に肉われの出た人は妊娠線も出やすいでしょう。急にお腹が痒くなって妊娠線に気が付く人が多いのですが、痒みは乾燥を防ぐとある程度おさまります。痒みがあまりひどい時は、他の合併症がある可能性があるので、担当の医師や助産婦に相談してみましょう。妊娠中は赤くて目立ちますが、産後は白っぽくなってあまりめだたなくなります。

胸焼け

ホルモンの影響と、大きくなった子宮の圧迫で胃液が逆流しやすくなっています。油っこいものや、スパイスの効いた食べ物は避けましょう。食事の時にあまり水分をたくさん取ると胃液が薄まって消化が悪くなり、かえっていつまでも酸っぱいものが上がってきたりします。水分は食事とは別に取りましょう。胃の容量は小さくなっているので、普通の量の3食を食べるのはあきらめ、1日5食の軽食を摂るようにしましょう。食前30分前にミント味の液体クロロフィルを大さじ1杯とアロエジュースを大さじ2杯混ぜて飲むと良いという人もいます。

リニアニグラ

自覚症状は別にありませんが、お腹の真中のミズオチから恥骨まで、まっすぐ縦に黒い線が出る人がいます。これはリニアニグラと呼ばれ、妊娠のホルモンの影響です。お臍のまわりも色が濃くなり、乳首のまわりも真っ黒になる人もいます。顔にT字型に黒ずんだ色がつく人もいます。これは、お産のあと数ヶ月すると色が薄くなります。

毛深くなる

妊娠中には毛が濃くなる人がいます。髪の毛も太くなり、早く伸び、抜け毛が少なくなるので、毛が多くなります。お腹に長い黒い毛が生えたりすることもあります。逆に、産後は妊娠中抜けなかった分がいっぺんに抜けるので、こわいほど抜け毛が目立ちます。数ヶ月するともとに戻ります。

不眠

体のあちこちが痛かったり、暑かったり、トイレに行ったりと、いろいろな理由で眠りが浅くなります。異常だと思わず、赤ちゃんにおっぱいをあげる練習だから、昼寝をすればいい、と気楽に構えましょう。眠らなければ、とあせると余計にストレスがたまります。カフェインをいっさい取らない・就寝時間から3時間以内には 運動をしない・夕食は就寝時間3時間以上前に消化のよいものを食べる・かけ布団や室温を調節し、涼しく眠れる環境を作る・寝る前にカップ半分ぐらいのカモミル茶 (Camomile Tea)を飲む・ラベンダーの香りをタオルにつけ、それを部屋の中においてリラックスする・ボディピローを使って快適に横向きに寝られるようにするなど工夫できます。

足の付け根や恥骨の痛み

赤ちゃんの頭が神経や恥骨の結合部を圧迫するため、痛みがでてきます。サポート型の妊婦用腹帯を使い、赤ちゃんの重みを持ち上げると少し楽になります。また、歩いた時に恥骨がずれないよう、すこし低めに腹帯を締めて骨盤を安定させると痛みが少なくなります。

妊娠ホルモンの影響で腸の運動が弱まり、便秘になりやすくなります。また、貧血で鉄剤を飲んでいる人はその副作用で便秘がひどくなることが多いようです。そして、妊娠後期になると、胎児の頭と大きな子宮が肛門のあたりの血液をうっ滞させ、痔になりやすくなります。食事や生活習慣で痔の予防をしましょう。食事は繊維を多くとります。特に、Bran Cerealsなどの朝食、野菜、果物を多くとり、それでも繊 維質が足りなければ、Metamucilなどで繊維を補給しましょう。洋ナシや無花果が便秘に効くという人もいます。便は歯磨き程度の柔らかさにしておくと、痔になりにくいです。痔になってしまったら、排便後は紙ではなく、炎症を押さえるタックス (Tucks)という薬の入った濡れタオルで拭きましょう。そして、毎日肛門をお湯で 洗いましょう。できればシャワーの中で、肛門の中の襞の間まで指で丁寧に洗いましょう。痛みがひどかったり、出血があるよ うなら医師や助産婦に相談して薬をもらいましょう。

妊婦の水泳

妊婦の水泳は妊娠後期の不快症状にいろいろな形で役だちます。足の付け根や恥骨が痛い人は、浮力で赤ちゃんが持ち上がるので、からだが楽になります。 また、むくみがひどい人は、細胞の外に出てしまった水分がプールの水圧で血管の中 に押し戻され、尿として排泄することによってむくみが軽くなります。妊娠中はホルモンの影響で関節が弱くなり、インパクトのある運動は避けた方が良いのですが、水泳は関節の負担が少ないので、お腹が大きくなっても続けることができます。水の中では音がよく伝わるため、胎児が周りの音に早くからさらされ、知能の発達が良くなるという報告もあります。

掲載:2001年12月