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第7回 バイリンガルの夏

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ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー
清水 楡華(しみず ゆか)さん

14640 NE 24th Street
Bellevue, WA 98007
【電話】 (425) 785-8032
【公式サイト】 ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー土曜学校
バイリンガル幼稚園BCA 現地校(英語サイト)
Willows Preparatory School ミドルスクール現地校(英語サイト)
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この夏、我が家の3匹の仔豚たちがそれぞれに一人歩きをし始めました。

子供たちが巣に戻って来ない、初めての夏です。それぞれが責任のある仕事を持ち、休みは取れないとのこと、July 4th の週末もどうやら一人ぼっちになりそうです。まあ、贅沢は言わず、ありがたく思わなければなりません。

親の都合(仕事)でアメリカへ連れて来られ、父親を癌で亡くし、仕事を持つ母親に最低限の環境で育てられ、アメリカの社会で生きる子供たち。日本人の両親に育てられ、日本語を話し、日本の文化を持ち、小学校の時に宮沢賢治を音読、朗読してきた子供たち。それでも “バイリンガル” どころか、「自分はアメリカ人」と言い張っていたあの高校・大学時代。社会に出た今、どう思っているのでしょうか。意識して育てはしたものの、日本式の甘い母親に守られ育てられ、そのために今不自由してはいないか、アメリカ社会で戦っていける精神力を十分に備えているか。私も「子供たちが健康で、自分で生活さえできればいい」と願う数多い母親の一人です。願わくば彼らの存在が人の役、世の中の役に立てば幸いです。それでも心配は尽きません。いよいよ親としての成績表が出てきそうです。

この就職難の中、3人とも簡単に自分の仕事を手に入れました。やはりバイリンガルというステータスは有利なのだと思います。でも、これからは彼らの腕次第。人種の坩堝であるアメリカ社会の中で戦っていくバイリンガルの戦士として、どうそれを利用して戦略を立てていくのか。はらはらしながら見守っていくだけです。

成績優秀なバイリンガルなのに、有名大学を卒業後、アメリカの社会に適応できない子供さんについて、よく相談されます。そういった子供さんは、戦っていくたくましさと気力においてアメリカ人に負けているようです。バイリンガルとして文化や言語を教え伝えるのは簡単です。それと同時にバイリンガルの戦士たちが日本の文化・言語だけでなく、 “心構え”、つまりアメリカ社会で生きていく力を身に付けることも大切な課題です。しかし、母親が一度もアメリカ社会で戦ったことがない場合、その心構えを教え育てるのは簡単ではありません。

日本と違い、アメリカには多くの選択肢があります。学校選びも然りです。公立学校、私立学校、宗教系学校と、いろいろな中から選べます。昼間の学校は日本人の母親には与えられないものを学んでくる、アメリカ社会での根付けの場です。できるならば、太陽の光がたくさん降り注ぐ、よく肥えた、天敵のいない場所であれば最高です。

我が家の仔豚たちの最初の畑は私立学校でした。3人分の学費は我が家の唯一の投資でした。現地の家族やお友達と分け隔てなく交わり、受け入れられました。放課後も週末もたくさん予定があり、アメリカの家庭と社会を実感する機会に恵まれたのは彼らにとって財産です。それを与えてくれた現地の友達には感謝の思いでいっぱいです。今でもお付き合いがありますが、もちろん私はまだ修行中です。

この夏休み、バイリンガルの戦士たちにアメリカの家庭・社会をなるべく多く体験させてあげてください。バイリンガルの戦士たちが、将来の戦場で戦い勝ち抜いていくたくましさの種をまいてください。親にはできないことがあることをはっきり認識し、その分はアメリカの社会に少し手伝ってもらいましょう。

「自分はアメリカ人だ」と言い張っていた子供たちが、いつか「自分はアメリカ人と日本人の両方だ」と胸を張って言ってくれる時のために、マザーグースは巣を守り続けます。

掲載:2013年7月

このコラムの内容は執筆者の個人的な意見・見解に基づいたものであり、junglecity.com の公式見解を表明しているものではありません。
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