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第82回 小規模株式会社(S Corporation)設立の利点と欠点

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第29回のコラムでは、C 株式会社(C-Corporation)の利点と欠点をご説明しましたが、今回は小規模株式会社(S Corporation)の利点と欠点を簡単にご説明します。

主な企業形態

スタートアップとして米国で企業を設立する場合、主な企業形態は次のとおりです。

  1. 普通株式会社(C-Corporation)
  2. 小規模株式会社(S Corporation)
  3. 有限会社(Limited Liability Company)
  4. 合名会社(Partnership)

上記の中で、小規模株式会社(S Corporation)は、永住権または市民権が必要とされます。この小規模株式会社(S Corporation)には、他の企業形態にはない、さまざまな特徴があります。

利点:

まず、普通株式会社(C-Corporation)を設立すると、二重課税によって多くの納税を求められますが、小規模株式会社(S Corporation)の場合は、納税の際、株主に配当する利益と企業として支払う企業税を別々に支払う必要はありません。つまり、株主の配当金/企業の純益を一本化して納税します。これをパススルー企業体といいます。

なお、同じように、二重課税ではなくパススルー企業体である 有限会社(Limited Liability Company)の場合は、企業利益に基づいた 雇用税、つまり社会保障税や高齢者医療保険税の支払いが課されますが、小規模株式会社(S Corporation)の場合は、企業主が自分の雇用税の支払いをする必要がありません。つまり、自分に支払った収入は配当として扱い、その配当に対する所得税のみの支払いが可能です。

欠点:

普通株式会社(C-Corporation)は普通株と優先株の2種類の株式を発行できるため、企業の価格上昇と売り上げが出てきた時点で、一般的に優先株を持つ株主の企業経営に対する介入を防ぎ、敵対的買収を避けることが容易にできますが、小規模株式会社(S Corporation)の場合は普通株でしか発行できず、しかも株主の数が100株主までと制限されているため、企業を拡大するには組織上、困難があります。

また、有限会社(Limited Liability Company)の場合は合名会社同様、少人数の事業主同士での契約をもとに、投資のみならず、 労力提供を約束することによって事業主として経営することが可能ですが、小規模株式会社(S Corporation)の場合は、株式の数によって企業に対する事業主の所有権・配当権・経営権が決まるため、無投資で労力を提供する立場の経営者は立場が不利になりがちです。もし事業主が1人または少人数で、それぞれの事業主の社会保障給付税や高齢者医療保険税の支払いを避けることのみを希望するのであれば、有限会社(Limited Liability Company)として事業を設定し、 小規模株式会社(S Corporation)として納税することが可能です。

しかし、実際には小規模株式会社(S Corporation)としての納税を選択すると、事業主に対する社会保障給付税や高齢者医療保険税の支払いが求められないとはいえ、会計や企業管理が複雑化して経営上での事務の仕事が増えてしまいます。

有限会社(Limited Liability Company)と小規模株式会社(S Corporation)のどちらを選択すれば良いかは個々のケースで異なるため、よく検討されることをお勧めします。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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