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第73回 ビジネス経営と個人資産の保護について

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起業に関するコラムで企業体の種類とその長所と短所について簡単にご説明しましたが、今回は、会社を設立した後、借金の支払いをする際に個人財産を保護するための主な注意点をいくつか取り上げます。

まず、企業体の種類によって、個人財産が事業から発生する借金の対象になるかどうかが異なります。Sole Proprietorship(個人事業)やPartnership(合名会社)の場合は、事業から発生する借金の支払いは、通常個人からも求められます。それに対して、LLC(有限会社)やC Corporation/S Corporation(株式会社)の場合は、通常、事業活動から発生した借金の支払いを個人がすることはありません。

ただし、LLCやC Corporation/S Corporationの場合でも、下記のような場合は、個人財産からの支払いを求められるので、注意が必要です。

  1. 個人的保証をする契約書を交わした場合。たとえば、リース契約をする際に、たいていの家主 (Landlord)は企業の責任者としての署名と個人的保証としての個人からの署名を求めます。それは支払いを確実にするためと、企業経営者が詐欺行為を目的に企業を設立し、支払いが滞ったときに個人が支払いを拒むといったリスクを避けるためです。もし家主が個人的保証を前提にリースをした場合は、通常、その責任を避けることはできません。
  2. 個人財産を担保にした企業経営をする場合。起業の際は、時として銀行から借金をして、それを企業資本金や必要経費の支払いのために充当します。その融資を受けるため、たとえば、持ち家や他の個人財産を担保にして銀行から借り入れすることがよくありますが、このような資金繰りをすると、企業に借金が残った場合は個人財産(担保として扱った個人財産)からの賠償責任(返債義務)が求められます。
  3. 個人名での契約を交わした場合。企業経営の際に必要な書類や契約書に会社名や役職名を記入せず、個人名で契約した場合は、個人としての契約であると判断されます。したがって、契約書署名の際は、自分の立場や役割(企業の経営者として署名をするのか個人的に署名をするのか)を明確にする必要があります。
  4. 個人口座・個人名義のクレジットカードと企業口座・企業名義のクレジットカードの混同をした場合。企業に必要な資金の支払いを、個人口座または個人名義のクレジットカードからしたり、また個人の借金を企業の資金から支払いをしたりすると、個人財産と企業財産の混同をしたとみなされ、企業の借金の支払いの際にも個人財産からの支払いを求められることがあります。
  5. 企業資金と個人財産についての事実の誤認をした場合。たとえば、債権者に虚偽の書類を提出したり、虚偽の文書を提出したり、企業記録の保管を怠ったり、また特に税金対策のために財産の移動をする行為と操作を意図的にした場合は、詐欺行為とみなされることがあります。独裁経営(または家族経営)をしている経営者に特に多いケースで、個人への返済義務を逃れるためにこのような金銭取引をし、仮に企業に利益がもたらされていても、負債があるかのように見せるような取引をした場合は、Piercing the Corporate Veilといって、個人からの返済義務が発生するだけではなく、個人的に処罰を受けることがあります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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