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第44回 Promissory Note(約束手形)とLease Agreement(賃貸借契約)における準拠法

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企業間・個人間でお金の貸し借りや賃貸借契約をすることはよくありますが、その際に相手を信用し、貸付金・賃貸物の返済方法や期限を明記した契約書を結ばないために、後に返金・返還を求められなくなるということがよくあります。特にこの貸付金・賃貸借が米国内ではなく、他の国の企業や個人相手の場合、後に厄介な問題になりかねません。ちなみに下記は、約束手形を交わす際の重要項目です。

  1. 企業名・個人名とそれらの住所・連絡先
  2. 貸付額
  3. 金利
  4. 返済方法
  5. 返済期限
  6. 滞納の際の条件
  7. 未納金の返済方法と返済不可能の場合の対処の仕方
  8. 準拠法

上記の項目のうち、多くの債権者が見落とす項目は「準拠法」です。特に負債者が米国外(海外)に住み、債権者・貸主が米国内に住んでいる場合は、借金回収の際に米国法、または債権者在住の法律(米国法)と裁判所が統治権を持つように契約書を交わすことが理想的です。もし約束手形や賃貸借契約に準拠法・地が明記されていなければ、通常負債者・借主在住の法律・裁判所が統治権を得ることになります。

たとえば、負債者・借主が日本在住で、債権者・貸主がワシントン州在住だったとします。ワシントン州在住の方が日本在住の方にお金を貸し付け、返金されず、約束手形による準拠法・地が明記されていない場合、通常、日本の裁判所に管轄権があります。物品等の賃貸に関してもこの仕組みが該当します。最近の案件ですが、ある米国人が1950年代製造の米国車を日本人に貸したところ、その車が第三者に盗まれ、日本に運搬されていたことが発覚しました。このように、いったん貸付金・賃貸物が他の土地に移動してしまうと、貸付金・賃貸物の現存する場所が管轄地になるため、車を貸した米国人は日本法・裁判所を相手に法的手段に訴える羽目になりました。

借用者が日本在住、貸主が米国在住で、契約書での準拠法明記のとおり米国の裁判所に訴えたとしても、たいがいは米国での訴訟は借主に無視され、結局は返金・返済されないのが現実にある問題です。一般的に、企業同士の約束手形や賃貸借契約書上では、仮に両企業が二国間にまたがっていても、契約書での準拠法明記によって問題が法的に対処されることが期待されますが、別々の国に住む個人間の賃貸の場合は、仮に契約書が交わされても回収が難しいのが現状です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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