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第30回 オンラインショッピングに関する法律問題

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年末に近づくにつれ、クリスマス・プレゼントなどの買い物をインターネットでする消費者が過去10年間のうちに急増しています。それとともに、インターネットでの買い物から発生する問題も多く見られます。米国では今年に入って小売市場の4.1% はインターネットでの商品売買によって占められ、売り上げ総額33億ドルにも上っています。そこで今回はインターネットでの商品売買によって発生した顕著な問題をいくつか取り上げます。

1. 商品発送

Federal Trade Commission (連邦取引委員会法) では消費者を守るためにさまざまな規定や指針を設けています。たとえば、FTC の Mail Order Rule( 通信販売規定) では、小売業者は消費者に発送日を指定しなければなりません。ウェブサイト上で発送日を指定していない場合は、30日以内に消費者に商品を届けなければならないことになっています。(消費者が小売業者のクレジットカードの申し込みをしていた場合は50日以内の発送になります。)もし30日以内の発送が不可能な場合は消費者に連絡し、発送延期の理由と新たな発送日を伝えます。この時、消費者は発送・購入を拒否する権利があります。消費者が購入の取り消しを要求した場合は、小売業者は速やかに商品購入の取り消しと返金の手続きをしなければなりません。それでも商品が消費者の手元に届いた場合は、この商品をギフトとして受け取ることができます。なお、この通信販売規定に従わない小売業者は FTC に罰金を科されることもあります。

2. 個人情報保護方針(Privacy Policy)

米国 (連邦法) の個人情報保護方針は、日本の個人情報保護法に比べて緩やかですが、13歳以下の子供を対象にした商品を販売する小売業者はChildren’s Online Privacy Protection Act (COPPA) を通して厳しく取り締まっています。企業のウェブサイトの Privacy Policy では

1) 子供のどのような情報を入手するのか
2) 情報入手に関して親へ告知をすること
3) リンクを通して第三者に子供の情報が漏れる可能性があることに対し親からの同意を得ること
4) 親がいつでも子供の情報を削除できること
5) 必要以上の情報を子供から入手しないこと

などが定められています。この規定は、オンラインで米国の子供を対象とした商品を販売する米国外の小売業者も対象となっています。もしこの Privacy Policy をウェブサイトに記載せず、子供に商品を販売してその情報が第三者に漏れるようなことがあれば、罰金の対象になります。

3. 広告(Advertisement)

オンラインでの広告は一般の広告と同様の法律が該当します。特に広告に関しては知的財産所有権と密接に関わっているため、オンライン小売業者はしばしば訴訟の対象になってきました。また、知的財産権所有者にとっても、オンラインの情報量からして自分の所有権がオンラインを通して侵害されているかどうかの確認が難しくなってきているので、権利保護が非常に難しくなってきています。さらにオンライン業者としては広告効果を利用して消費者をだますことによって商品を売り込むこともよくあります。昨年のケースで、ある大手小売業者が商品の売り上げを伸ばすために宣伝専門企業と提携をし、商品に対する良いコメントと評価をウェブサイトに掲載し、消費者からの苦情があったため、訴訟問題になった事件がありました。これはこの大手小売業者に限らずかなり多くの小売業者が使う売り込み手段でしたが、問題があまりにも増えたため、昨年、FTC の指針と規定が改定されました。改定後は、宣伝会社が小売業者から報酬またはそれに相応する支払いを受けている場合、その関係と内容について公開しなければならなくなっています。この規定は小売業者と宣伝企業はもちろん、ブログや Facebook 等のソーシャル・ネットワーキング・サービスやキャンペーンを担当する企業にも該当し、消費者からの苦情があった場合は罰金の対象になります。

いずれにしても、オンラインショッピングに関する法律は今後も頻繁に改定・改善され、規定内容はますます厳しくなると言われています。米国の消費者を対象としたオンライン・ショッピングを提供する企業は、米国連邦法に基づいて、ウェブサイトに必ず販売方針や個人情報保護に関する声明文を記載することが必要です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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