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第60回 インターンシップに関する雇用法問題

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大学の夏休みに向けて、経験を積むためのインターンシップやボランティアを考えている方が多いと思います。今回は、このインターンシップに関連して発生する雇用問題についてご説明します。

基本的に、インターンシップの目的は、大学のプログラムを通して勉強してきたことを現実の社会に適用するために学ぶこと、またはキャリアを向上し、経験を得るために働くことです。中にはインターンシップを完了することによってクレジットを与える学校もあります。インターンシップの中には雇用者から給料を受けとれるものもありますが、インターンシップに関する定義は法的には規定されていません。

ただし、業務を遂行し、雇用者に利益をもたらすものは被雇用者として定義されるので、インターンが雇用者から支払いを受ける場合は、被雇用者として扱われます。また、雇用されている従業員(被雇用者)は差別法(TitleVII of the Civil Rights Act,)に適用されるので、もし解雇されれば、インターンでも、差別法で訴えることのできる権利が発生します。

さて、第43回のコラムでもご紹介しましたように、雇用者が人を雇う場合は独立契約者か正社員の選択があることをご説明しましたが、インターンを採用する場合は、正社員(Employee)として雇うのが通常です。それは、独立契約者は、雇用者からの監督やトレーニングを必要としないことが条件だからです。従って、インターンが支払いを受けた場合、インターンは正社員として扱われることになり、雇用者には所得税などの税金の納税が必要となります。このように、インターンに支払いをすると雇用者にとっては経済的負担になるだけではなく、さまざまな雇用法問題の引き金となるので、多くの雇用者は、無償でインターンを採用する方法を選びます。

さて、インターンを無償で受け入れるために必要な条件は、下記のとおりです。

  1. 仕事そのものがインターンの利益・勉強となっていること。
  2. インターンに正社員の仕事をさせないこと。または、退職した正社員の後任者として仕事をさせないこと。
  3. 雇用者の利益を得るためだけに受け入れないこと。たとえば、スーパーマーケットのたな卸しや掃除は雇用者の利益に直接還元され、インターンの利益・勉強になっているとは考えられない。
  4. インターンの仕事内容が、インターンが学校で勉強している内容に一致している、またはキャリアの向上につながるものであること。
  5. インターンシップの終了時にインターンが正社員になると約束しないこと。
  6. インターンが他の正社員または雇用者から直接トレーニングを受けること。

しかしながら、給料や税金の支払いを避けるため、このような条件を無視し、企業の利益とビジネスに貢献させる目的でインターンを受け入れる企業も少なくありません。インターンとして業務をする際は、雇用者とどのような経験・利益が得られるのかを前もって話し合っておく必要があります。また、雇用者としては、インターンを迎える前に、企業・組織としてインターンを教育する時間と設備に余裕があるかを考慮する必要があります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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