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第25回 国際販売契約における物流用語とその法的効力

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インコタームズ(Incoterms)とは、国際商業会議所(International Chamber of Commerce: ICC)が考案した貿易条件の定義です。

国際貿易にともなう契約上の用語とその定義を取り決めたもので、1936年に制定された 『International Rules for the Interpretation of Trade Terms(貿易条件の解釈に関する国際規則)』 が改正され、慣用化されました。

例えば、EXW(Ex Works)、FOB(Free on Board)、CIF(Cost, Insurance and Freight)、DDU(Delivered Duty Unpaid)、CPT(Carriage Paid to)などの用語は通常、販売契約書の Risk of Loss (損失負担) や Warranty (保障)などの条項に挿入され、使用する用語によって販売者(輸出業者)と仕入先(輸入業者) 間の法的責任とその負担が異なります。

また、これらの用語は通常販売契約書にて説明および決定されていますが、時としてビジネスレベルでメモ書きされた Statement of Work (作業指示書)に契約書の別表・追加資料として指定されている場合もあります。

上記の用語の中でもっとも多く使用されている用語は F.O.B. で、多くの日本企業は当たり前のように F.O.B. Destination (商品が仕入れ業者の手に届くまで、または契約書に指定された場所に届くまでは、販売者が配送料を含む商品に対する法的責任を負うこと) や F.O.B. Origin(商品が運送業者または販売者の手を離れた時点で仕入れ業者が配送料を含め、商品に対する法的責任を負うこと)を採用しているようですが、これはアメリカ国内の配送に関して使用されるもので、”Freight On Board” の略語です。従って、インコタームズで規定されている “Free on Board” と区別されます。

さて、インコタームズによって規定されている F.O.B.(本船甲板渡し条件)ですが、多くの国際販売契約書では通常、商品が輸入者(仕入れ業者)が位置する港に到着した時点で輸出業者(販売者)の法的責任が解任されます。

例えば、日本企業が日本製玩具をシアトルの企業に輸出した場合は、”F.O.B. Seattle” と指定することによって、シアトルの輸入企業は日本とシアトル間の船中で起こった事故によって破損された玩具に関しては法的責任はなく、破損玩具に対する支払い義務はないわけです。ただし、シアトル港からシアトルの輸入企業までの輸送に関しては、輸入業者の責任となり、その間に起こった事故による破損に対する支払いを輸出業者に要求することはできません。

なお、上記の規定とその選択については企業間のビジネス上の力の関係や交渉力によって決定されます。年間を通じて多くの輸入・輸出商品に不備があったり破損されたりしているので、契約交渉の際、法的責任をどこまで負うのかを理解したうえで契約署名をすることが重要です。それが企業の無駄な出費を省くことにもなります。

インコタームズで規定されているそれぞれの用語とその法的効果は、こちらのリンクでご覧ください。2000年に発行されたものですが、2011年1月に改定される予定です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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