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第43回 契約社員・独立契約者と正社員の誤分類 (Misclassification)の増加とそれに伴う問題

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2008年のバブル崩壊以来、さまざまな企業が経営の生き残りをかけて経費削減とともに新事業の開拓に力を入れてきています。その中で、経費削減の手段として人件費の削減が挙げられます。解雇するのか、給料を減らすのか、それとも経費や税金のかからない契約社員・独立契約者を必要な時に採用するのかという選択は時としては否めません。

今回は、人件費削減の一環として採用される契約社員・独立契約者(Independent Contractor)の誤分類によって発生する問題と正しい分類による採用についてご説明します。

米国で採用される契約社員・独立契約者(Independent Contractor) は、日本の嘱託や派遣の方とは法的な扱いが異なり、また正社員とは税金支払いの分類も異なります。これらの契約社員は、国税庁 (IRS) 指定の Form 1099 を提出します。これに対して、正社員は Form W-2を提出します。雇用者は契約社員に対して、社会保障 (Social Security)、高齢者医療保険 (Medicare)、失業保険 (Unemployment Taxes)、 労働災害保険 (Workers’ Compensation Insurance), 最低賃金(Minimum Wage)、残業代 (Overtime Wages) 等を支払う必要がありません。これによって、正社員に支払う給料の約30%は節約できます。2006年の政府説明責任局(GAO)の統計によると、社員を契約社員・独立契約者として誤分類したために、実際に納められるべき企業からの税金を27億2千万ドル下回り、また、財務局の調査によると、2009年には誤分類のために、実際に納められるべき企業からの税金を540億ドル下回った可能性があるとのことです。

この雇用関係の誤分類から発生する税収の差は深刻な問題で、最近は国税庁や労働省から企業に対して厳しい調査が行われています。たとえば、もし雇用者が本来ならば正社員の被雇用者を契約社員・独立契約者として扱ったために、社員の社会保障 (Social Security) を支払わなかった場合は民事上の罰則 (Civil Penalty) として税金未支払い分の支払いと罰則金を課され、さらに未支払いが意図的だった場合は、一件10,000ドルと5年間の刑務所入りの刑事処分が課されます。従って、業務内容と雇用関係を十分考慮した上で、社員にするか契約社員にするかを選択する必要があります。

下記は、契約社員・独立契約者 (ここでは契約者で統一します)の正しい分類をするための質問です。

  1. 独立・契約者契約書(Independent Contractor Agreement ) に署名がされ、Form 1099が提出されているか?どのような契約社員も、一定の雇用者から年間600ドル以上の収入を得ている場合は、Form 1099を IRS に提出しなければなりません。
  1. 契約者の仕事は雇用者のビジネス経営に重要な役割を果たしているか?もし雇用者のビジネスとは関係ない仕事または特に重要でない業務をしている契約者は、おそらく契約社員として分類されます。たとえば、事務所の掃除やコンピュータの修理等の業務です。
  1. 契約者は個人で仕事をしているか、それとも会社を経営しているか?もし雇用者が企業設定をしていない個人を採用した場合は、正社員としてみなされることがあります。
  1. 契約者は、雇用者の事務所で一定の時間働く必要があるか?もし事務所で、しかも決まった時間の業務が前提となっていた場合は、おそらく正社員とみなされます。
  1. 契約者はひとつの企業・一人の雇用者のみと業務をしているか?契約者は法的に雇用者の支配下で管理されるべきではないので、他の企業・雇用者と自由に働くことができます。これを阻止する雇用者は、この契約者を正社員として扱っているとみなされます。
  1. 契約者に保険や休暇等の福利厚生が与えられているか?もし雇用者が福利厚生を与えていたら、ほぼ間違いなくこの社員は正社員です。契約者ではありません。
  1. 契約者は会社の他の正社員と同等・同様の業務をしているか?もし契約者が正社員と同様・同等の仕事をしている場合は、誤分類と判断される可能性が高いだけではなく、差別の問題も発生する可能性があります。
  1. 契約者は管理者の下で働いているか?契約者は雇用の自由と融通性の得点を利用して業務をすることが基本なので、管理者に支配されていては、その得点が生かされません。従って、管理者の指示に従う契約者は社員として認められる可能性が高いでしょう。
  1. 契約者との契約書に競合禁止条項があるか?競合禁止条項によって契約者得点の業務活動の自由を束縛する契約書や雇用者は警告されます。
  1. 契約者は、雇用者の会議やトレーニング等の研修に強制参加されているか?契約者に求める業務は結果であって、その雇用者の指示に従いながら効果的な業務過程を求めないので、研修等を必要としないというのが契約者に対する基本的な見方です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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