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第70回 経営判断の原則(Business Judgment Rule) について

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第58回のコラムで、会社の取締役や役員(Director)の法的責任についてご説明しましたが、今回は、これらの経営管理者の株主(Shareholder)および会社 (Corporation)に対する経営判断の原則(Business Judgment Rule)と過失に対する法的処理についてご説明します。

経営判断の原則とは、取締役の経営判断の責任範囲を決め、その責任範囲で判断をし、間違いが発生しても、取締役として個人的に法的責任に問われないことを約束する原則です。つまり、取締役の役割と責任を緩和する原則です。取締役の責任範囲・義務は、基本的に、企業に対して誠意と忠誠心を持ち、企業の利益と繁栄のために正当な注意と判断をすることです。たとえ、その判断が間違いが発生し、経営不振につながっても、企業に法的責任や経済的損害があっても、経営判断の原則に従って経営をした取締役は個人的に法的責任に問われることはありません。特にこの原則は、もし株主や企業自体が取締役に個人としての過失責任を求めた際に弁解方法として利用されます。

ただし、取締役の過失弁解の度合いには、限界があります。たとえば、企業買収の商談が進む中で、取締役が相手企業から財務情報や企業経営にかかわる資料を収集をせずに株の販売をした場合は、過大過失として判断され、取締役は個人的に法的責任に問われます。また、取締役が他の企業の株主で、2社間で取引をする中で、相手企業の株主である立場を利用し、その相手企業の利益のために自社企業の情報を共有したり、取引上相手企業に有利になるような契約をした場合は、弁解の余地がありません。また、取締役個人の財産と会社の資産の混合等も過大過失または不当行為として法的に咎められます。

通常、企業が訴訟や法的問題に直面しても、企業がその損害に対する責任を負っても、個人の取締役や株主は賠償責任等から保護されています。しかし、上記のように、もし取締役が自分の役割と責任を超え、過大過失を企業にもたらした場合は、個人として法的責任を負わなくてはならないこともありえるので、取締役としての役割と法的限界を理解し、企業経営をすることは、結果的に個人財産を守ることになります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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