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第90回 企業内での利益相反取引(Conflict of Interest) とその対処について

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企業の役員や幹部が個人の利益のために自分が所属する企業の利益や企業に対する忠誠心を弱体化させることを、「企業内での利益相反取引(Business Conflict of Interest)」と言います。このような社内での利益相反取引行為は Breach of Loyalty and Fiduciary Duty to Company とも言われます。

典型的な企業内利益相反取引の例

  1. 私的金融取引(Self-Dealing):例えば、役員または幹部が企業内部の情報を利用し、個人または他企業(自分が別に設立した企業や親戚が経営する別の企業など)の利益のためにその企業情報を使用する場合。
  2. 贈与・賄賂(Gift):幹部が業務契約を前提に特定の企業から贈与・賄賂を受領する場合。このような贈与はビジネス法で禁止され、賄賂(Bribery)は犯罪行為として法的に対処されます。
  3. 他企業での就業:役員が他の企業で働き、その企業の仕事が自社の業務や業績に支障がある場合。
  4. 企業秘密情報の漏洩:役員や幹部が、個人の利益のために、自企業の秘密情報を外部に漏らしたり、自分の経営する他企業の利益のためにその情報を使用した場合。
  5. 家族の利害関係:家族・親族を採用し、その関係を通じて家族・親族を優遇する場合。

このような企業内での問題(法的問題)を避けるために、企業内に Conflict of Interest Policy が実践されていることが望まれます。

そのためには、定期的に役員と幹部に利益相反の可能性のある行為を開示させ、その結果、利益相反取引の可能性がある場合は役員・幹部にそのような行為を停止させるか、役員・幹部を解任することが最も大切です。

それでも企業内の利益相反取引による紛争が生じた場合は、弁護士・仲介人や Securities Exchange Commission(SEC)のような第三者の介入を通して解決するか、利益相反取引をしていると思われる役員・幹部に対して訴訟を起こすことが一般的です。

このような選択をする際、役員や幹部の行為によって企業利益に差し迫った危機があるという理由があれば、実際に被害が立証されていなくても、Injunctive Relief(差し止めによる救済)といって、役員や幹部の行為を阻止することを目的とする訴訟を起こすことは可能です。

また、このような問題解決の手続きの過程を保証するために、企業の定款や幹部・役員との契約書に企業が法的問題があった場合に解決する手段と方法を明記しておくことも必要です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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