第9回 アメリカの救急医療体制「911」ってなに?

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看護師 岡本 優子さん

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突然、具合が悪くなったり、事故や事件に巻き込まれたら、日本では119番に通報しますが、ここアメリカでは911番に通報します。

緊急事態では緊張や動揺で正しい判断ができないこともありますし、英語で状況や状態をとっさに伝えるのは大変なことです。そこで今回は、アメリカの「Emergency system 911」についてご説明します。

世界で最も心肺停止の蘇生率が高い地域、ワシントン州キング郡

Seattle & King County Public Health によると、キング郡は心肺停止した人の蘇生率が62%以上と、世界で最も高い地域です(2014年5月19日発表)。ニューヨークやシカゴなどの他都市の蘇生率は一桁。これはなぜでしょう?その理由は、この地域では、医療機関に到着するまでの最初の対応が迅速であるからで、特徴として、以下のことが挙げられます。

  • 質の高い CPR(cardiopulmonary resuscitation)を受けることができる。
  • 911をすると、電話でも CPR の指導をしてくれる。
  • CPR トレーニング(心肺蘇生術)が多数の市民に提供されている。
  • 公共の場所での AEDs(Automated external defibrillators)の設置が増加している。
  • Paramedic(救急救命士)が国の基準よりも高い訓練を受けている。
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911って、どう使ったらいいの?

では、911を正しく利用するために知っておくことを整理しましょう

1)いつ電話したらいい?
緊急事態になったら、または緊急事態と思ったら、またはどうしていいかわからない場合は、まず「911」に電話しましょう。

必要がないときに911をしてしまうことがありますが、The National 911 Program によると、本当に緊急の事態でない時に911することで、911システムがオーバーロードしてしまうことがあります。

消防車の場合、必要ないのに出動させてしまうと、出動費を請求されることがありますので、注意が必要です(管轄する部隊や地域によって、請求額や請求の有無が異なります。これについては公表しているところとしていないところがあります)。

救急車の場合、出動させ、現場に到着していろいろチェックしてもらうだけという結果になれば、料金は発生しません。でも、救急車に乗ると料金が発生します。

2)実際に911にかけると何が起こる?
911のコーディネーターは必要な機関(警察、消防、医療)に情報を迅速に伝え、いち早く出動させるために次々と質問し、指示を出してきます。このとき、電話を切らないでください。かけてきた人が緊急事態に慣れていなくて動揺している場合は、コーディネーターが電話をかけた人を落ち着かせ、その状況の安全・改善に協力します。ですので、まずは落ち着いて、質問に答えましょう。受ける質問内容は基本的に以下のとおりです。

  1. 名前、所在地、住所(所在地がわからない場合はストリートの名前、目印になるものなどを説明しましょう)
  2. 万が一電話が切れた場合かけなおせる電話番号
  3. 警察、消防、医療機関など、どの機関が必要なのか
  4. 何が起きたのか詳細な説明:事件、犯人の特徴、火災の状況、けがの症状、医学的な問題や症状(たとえば、胸が痛い、呼吸困難があるかなど)

緊急医療が必要な場合に作動する EMS って?

緊急医療が必要な場合に作動するのが、EMS(Emergency Medical Services)です。

1)EMS とは何か?
EMS は迅速に医療を提供するシステムで、救急車両や救急ヘリコプターが知られていますが、病院までの搬送だけでなく、地域の健康・安全を確保し、増進させるために次のような機関やサービス、システムと連携しています。

  • 公的・私的な機関
  • コミュニケーションと移送のネットワーク
  • 高度医療システム、病院、高度医療センター、特別ケアセンター
  • リハビリテーション施設

2)EMS Response(稼働)と移送の要請ガイドラインでは、以下のような状態の時には911するよう勧めています。

  • Acute, life-threatening medical condition or complaint(急性、命にかかわる状態、病気)
  • Medically unstable patient(症状が安定していない患者)
  • Immediate health risk(緊急な健康被害)

911すると、前述の質問を受けます。さらに、病歴、治療、状態の変化などを質問されます。電話は切らずに、指示を受けましょう。

そして、EMS が到着したら、医師、看護師、ヘルスケアプロバイダー、EMTs(Emergency Medical Technicians)が来ます。その際、次の情報を提供してください。

  • 患者の年齢と性別
  • 詳細な病状や医療の問題
  • 意識のレベル
  • 体温、血圧、脈拍、呼吸、酸素濃度、心電図
  • 病歴
  • 処方薬の情報

必要に応じて酸素や点滴、投薬、心電図などが行われ、移送の場所や計画、医療の指示などを受けます。

EMS が必要ではない場合は?

EMS が到着し、evaluation/assessmen(医学的な評価」をし、緊急搬送の必要ない場合や患者の意思により緊急車両の乗車を拒否する場合は、EMT は帰還します。その場合、費用は請求されません。救急車両に乗車し、搬送された場合は基本的に有料となります。保険によって負担額が異なります。

Seattle & King County Public Health(シアトル・キング郡公衆衛生局)では症状が安定している患者の移送や緊急でない患者は私設の救急車両(AMR、Tri-Med、Hope Linkなど)を要請するように勧めています。

自分で運転できる、バスやタクシーなどを利用できる、または家族や友人に運転を依頼できる状態なら、それらを利用して、医療機関(ER や Urgent Care)に行きましょう。 その場合は自分で ER や Urgent Care に事前に連絡しておくと、状態によって迅速に対応してもらえます。

1970年にアメリカで初めて Medic One Program(救急隊員プログラム)を導入したのはシアトル消防署です。EMS と Medic One Program は今では国の基準となっています。

このようなすばらしい地域に私たちは住んでいるのです。

私たち個人ができることとして、いざという時のために CPR トレーニングを受けておくことをおすすめします。

参考:
911
EMS( Emergency Medical Services)
King County Public Health

掲載:2016年11月

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。

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