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第10回 別離の心の痛みのメカニズム

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夫婦とは、家族関係を形成することにより、互いを支え、責任を取り合うことを誓った間柄です。そのため、婚姻関係の根底には互いへの強い愛着と安心感があるものです。一方、離婚とは、家族関係の解消で、家族であった人との別れはお互いの心に大きな損失をもたらします。通常、別れを切り出す側と切り出される側の心の痛みの程度には差があります。別れを切り出された側は自分が相手から拒絶・否定されたと感じるため、別れを切り出した側に比べて心の痛みが大きく感じられるでしょう。別れを切り出された側が離婚を望んでいない場合、本人の心の苦しさは更に大きいでしょう。では、別離の心の痛みのメカニズムとはどのようなものでしょうか。

愛着を感じる相手との別離は、その人の人生全般に対する基本的な安心感を根底から揺さぶります。愛着を持つ相手との別離の悲しみの経験の原点は赤ちゃんが親から引き離されるときに表現する不安感とその後の抑うつ状態です。赤ちゃんは自分の意に反して親が自分から離れて行く時、泣き叫んで抵抗します。赤ちゃんにとって親とはいざという時に自分を守ってくれる存在です。その親が自分から離れることは自分の生命の危険につながる可能性があるため、親と離れることに強い抵抗を示すのは理にかなっています。

恋人や伴侶が自分から去って行く時に引き起こされる心の反応も、その基本は親から引き離された赤ちゃんの心の反応と同じものです。特に相手が自分から去って行くことを経験する人は、自分にとって大切な人を意に反して失うことにより、恐怖感に近い、強い不安と次のような感情を経験します。

  • ショック
  • 悲しみ
  • 怒り
  • 自責の念
  • 寂しさ
  • 疲労感
  • 無力感
  • 相手を切望する

別れの衝撃は身体的な症状で現れることもあります。例えばお腹の辺りの空虚感、胸やのどのつかえ、息苦しさ、気力のなさ、口の渇き、食欲の変化、睡眠障害などです。

思考能力に影響が出ることもあります。

  • 別離という事実が信じられない
  • 思考の混乱
  • 記憶力の低下
  • 四六時中、相手のことが頭から離れない

別離の現実が行動に影響を及ぼすこともあります。

  • 上の空で行動する
  • 涙が出る
  • 別れる相手が出てくる夢を見る
  • 別れる相手を思い出すような場所や物事を避ける
  • 社会から引きこもる
  • 別れる相手を求める
  • ため息が多くなる

戸村 みゆきさん PhD, Psychologist

臨床心理学者。1998年、シアトル大学心理学科卒業後、2002年に同大学の心理学科修士課程卒業。2010年、セイブルック大学の心理学博士課程卒業。専門は心理療法とペアレンティングエバリュエーション(Parenting Evaluation/離婚訴訟時の子育て能力審査)。日英両語で、個人、家族の諸問題に幅広く対応。豊かな人間関係を育みたい、自己の可能性を広げたい、健やかで充実した人生を送りたいと望むあなたの心の旅をサポートします。

【住所】 3035 Island Crest Way, Suite 108, Mercer Island, WA 98040
【電話】 (425) 429-2069
【メール】 miyuki@islandtherapy.net
【公式サイト】 www.islandtherapy.net

掲載:2013年1月

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。



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