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第48回 : 2006年を振り返って

今回は、昨年度の H-1B ビザの状況および米国移民法の動きを振り返り、ますます複雑になる企業従業員のためのビザ確保・保持の戦略のための一考察とします。

昨年は、5月26日に H-1B 専門職者ビザの一般枠での年間発給数が上限に達しました。H-1B 専門職者ビザとは、特殊技術や知識を必要とする専門職に就く外国人労働者に適合するビザで、専門分野での学士号、または同程度の実務経験が必要となります。 通常、米国の4年制大学を卒業した外国人に利用されることが多いビザですが、国外で学士号を取得した、 あるいは同程度の実務経験がある外国人労働者にも適合します。H-1B ビザは職歴のない新卒者でも申請可能なので、在米企業にとっては、アメリカの大学を卒業したばかりの新規採用者に利用しやすいビザです。

ただし、H-1B には、会計年度ごとで年間の発給数に上限があります。移民局の会計年度である10月1日から翌年の9月30日までの1年間に移民局が発給できる H-1B ビザの数は65,000件と決まっていますが、 そのうち6,800件は貿易協定によりチリとシンガポールの国籍者に優先的に割り当てられるため、一般枠は実質58,200件しかありません。H-1B は、発給の6ヶ月前から申請ができ、5月26日に上限に達した一般枠の発給数は、2006年10月1日からの2007年9月30日までの会計年度(2007年度)分でした。従って、次に H-1B の新規申請を行うためには、2007年10月1日就労開始の分(2008年度枠)まで待たなければならず、その申請受付開始は2007年4月1日です。

一般枠に対して、修士号枠と言われる免除枠は、米国で修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した方に与えられている枠のことで、毎年20,000件が上限となっています。その修士号枠も、昨年7月26日に、20,000件の上限に達しました。昨年は、一般枠が申請受付開始から2ヶ月以内、また修士号枠も4ヶ月以内という史上最短のスピードで発給数の上限に達してしまいました。今年もこの傾向は続くものと考えられ、また現時点で議会で H-1B 専門職者ビザに対するなんらの救済策も実現していないことを考慮すると、H-1B 専門職者ビザを必要とする新卒者に対しては、早急の採用・ビザ取得計画を立てることが必要です。

すでに H-1B ビザを取得し、過去において発給数のカウントをされた人を転職採用する場合においては、H-1B ビザのトランスファーという形での H-1B 申請が可能です。H-1B のトランスファーは、上記年間発給数の制限を受けることなく、他の申請要件が整っているとすれば、常時申請が可能です。ただし、ここで気をつけたいことは、H-1B 専門職者ビザは、原則最長6年間しか有効ではないことです。この6年間という制限は、すべての H-1B ビザ保持者に当てはまることなので、転職採用時のみならず、現在 H-1B として雇用している従業員に対しても、「6年目以降のビザをどうするか」という問題が課せられます。従業員のグリーンカードのサポートを早く始めるにこしたことはありませんが、雇用関係に基づくグリーンカード申請において最も一般的な EB3 カテゴリがリトログレッションという状況では、H-1B の6年間の間にグリーンカードの取得まで進むかどうか、見通しは定かでありません。

H-1B を6年目以降も延長させるためには、雇用関係に基づくグリーンカード申請の第一ステップである労働認定証(レイバー・サティフィケーション)の申請もしくは移民ビザの申請を行ってから365日以上経っており、かつそれらに基づく永住権の申請がまだペンディング中であることが必要です。その場合であれば、H-1B は6年目以降も1年毎の延長が可能です。また、移民ビザの認可がすでに下りているが、プライオリティ・デート(グリーンカード申請における優先順位)が現行にならないために、永住権申請が進められないH-1B 保持者は、6年目以降でも3年間毎の延長が可能です。

先に述べた EB3 カテゴリのリトログレッションとは、このカテゴリーの移民ビザの年間発給数以上の申請があるために発生した待ち時間のことであり、原稿執筆時(11月末時点)では、そのプライオリティ・デートは2002年8月1日です。EB3 カテゴリのリトログレッションという状況は、一部の国を除いて、2005年の後半までは発生していなかったのですが、レイバー・サティフィケーションのバックログ縮小のための審査のスピードアップにともなって、EB3 カテゴリでの申請が可能になった人が急激に増加した結果、全ての出身国でリトログレッションという状況が発生しました。

2005年3月28日から施行されたレイバー・サティフィケーションの PERM というシステムでは、それ以前に施行されていたRIRもしくはスタンダードという方法に比べて、審査期間が格段に短くなりました。そして現在の移民ビザの審査状況から考えると、PERM 労働認定証と移民ビザの2つの申請プロセスが、365日以上ペンディング状態になるということは非常にまれなケースと言えます。従って、上記した6年目以降の H-1B の1年毎の延長に必要な条件というのは、レイバー・サーティフィケーションが PERM に移行した現在においては、あまり当てはまらない条件となっているということが言えます。ですから、今時点から従業員の6年目以降の H-1B の延長を図るのであれば、従業員の移民ビザの認可の取得を早急に目指すべきでしょう。

前回のコラムでもお伝えしましたように、移民局は昨年8月28日より雇用関係を通じた移民ビザの申請のプレミアム・プロセス・サービスを開始しました。このプレミアム・プロセス・サービスの移民ビザへの適用開始によって一番メリットがある人は、レトログレッションの影響を受けて、雇用ベースのグリーンカードの審査期間が何年もかかってしまっている H-1B ビザ保持者でしょう。なぜなら、上記でも説明しましたように、移民ビザの認可が得られれば、6年目以降の H-1B でも3年間の延長が可能になるからです。従業員の H-1B の6年目の期限が迫っている企業にとっては、プレミアム・プロセス・サービスは、 PERM も含めて、積極的に追求していく価値のある方法と言えるでしょう。

さらに、2006年10月、労働局は、すでに Backlog Elimination Center に転送されている2005年3月28日以前にファイルされたスタンダード申請を RIR 申請に変換することを認める内容のメモを発表しました。特に、いつまでに RIR に変換しなければならいないといった期日はありませんが、Backlog Elimination Center に転送された申請が動き出したら、つまりスタンダードでファイルした申請の求人募集活動が開始されたら、RIR へ変換する資格を失効することになります。

RIR に変換するには、変換のリクエストを提出する前の6ヶ月間に、求人募集活動を行い、その結果、米国市民やグリーンカード保持者である求職者の中には適格な人材がいなたかったことを証明し、その証拠となる書類を Backlog Elimination Center に提出します。ただし、前述の通り、スタンダードでファイルした申請の求人募集活動が開始されたら、RIRへ変換する資格を失効します。また、残念ながらスタンダードでファイルされた申請の詳しい進展状況は明確には分からないため、いつ求人募集活動が開始されるかは不明です。そのため、RIR に変換する準備のため、求人広告を掲載したり、求職者との面接などに時間や労力を費やした挙句、それが無駄になる可能性もあります。従って、リスクを踏まえた上で、RIR への変換を試みるかどうかは、申請者と雇用主次第ですが、一般的は、スタンダード申請にかかる時間を考えると、RIRへの変換は利点が多いと考えられています。

なお、Backlog Elimination Center で処理されているスタンダードと RIR 申請の進展状況は、こちらのサイトでご確認いただけます。 ただし、前述の通り、詳細は表記されず、申請期間中なのか(In Process)、認定されたのか(Certified)、却下されたのか(Denied)、あるいは取り下げられたのか(Withdrawn)など、大まかなことしか分かりません。

(2007年1月)

= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関しては、米国移民法弁護士にご相談下さい。
2008年
第65回 米国移民法・最新情報
第64回 シアトル地域における結婚に基づくグリーンカード申請の状況
第63回 再入国許可証でのバイオメトリックス採取義務化
第62回 H-1B 申請について
第61回 ビザ申請料金の値上げ
第60回 有効期間のないグリーンカードの更新

2007年
第59回 就労ビザに関する最新情報
第58回 J-1ビジネス研修ビザ
第57回 DV-2009(抽選永住権)のお知らせ
第56回 E ビザ・L ビザ保持者の配偶者 ソーシャル・セキュリティ番号
第55回 申請料金の値上げ
第54回 PERM 最新情報
第53回 プライオリティ・デート
第52回 H-1B ビザ申請・最新情報(3)
第51回 H-1B ビザ申請・最新情報(2)
第50回 米国市民との結婚によるグリーンカード申請 最新情報
第49回 H-1B ビザ申請・最新情報(1)
第48回 2006年を振り返って

2006年
第47回 プレミアム・プロセス
第46回 DV-2008(抽選永住権)のお知らせ
第45回 雇用に基づく永住権申請に関してよく聞かれる質問(2)
第44回 雇用に基づく永住権申請に関してよく聞かれる質問(1)
第43回 H-1B ビザ最新情報
第42回 E-1条約貿易商ビザ
第41回 雇用ベースの短期就労ビザ、および移民ビザのサービス・センター変更
第40回 雇用ベース移民ビザのリトログレッションについて
第39回 H-1B ビザ申請
第38回 L-1A ビザ保持者から永住権申請へ
第37回 L ビザの申請基準について
第36回 帰化申請(3)

2005年
第35回 永住権保持者が長期間米国外に滞在する場合の永住権の維持について
第34回 DV-2007 (抽選永住権) のお知らせ
第33回 PERM 申請
第32回 雇用に基づく永住権申請
第31回 永住権と離婚
第30回 I-864 Affidavit of Support(扶養証明書)
第29回 抽選永住権当選後の永住権申請
第28回 永住権申請時の健康診断
第27回 移民法に関する情報が入手できるウェブサイト
第26回 シアトル地域移民局・最新情報 永住権申請時のバックグラウンド・チェック
第25回 H-1B ビザ最新情報

2004年
第24回 J-1研修生ビザ
第23回 F-1学生ビザ保持者の社会保障番号・申請基準の変更
第22回 E/L ビザ保持者の配偶者・就労許可証
第21回 条件付永住権
第20回 シアトル地域移民局・最新情報(2)
第19回 永住権インタビュー・結婚ベース米国内ステータス変更(AOS)の場合
第18回 家族関係に基づく永住権申請
第17回 シアトル地域移民局・最新情報(1)
第16回 H-1B ビザ年間発給数が上限に到達・今後について
第15回 永住権取得後の留意点
第14回 永住権申請
第13回 E-2条約投資家ビザ

2003年
第12回 永住権の自己申請(VAWA)
第11回 O-1卓越能力保持者ビザ
第10回 米国市民との 結婚に基づく永住権申請・ステータス変更手続き
第9回 K-1 フィアンセ・ビザ
第8回 帰化申請(2)
第7回 帰化申請(1)
第6回 H-1B 専門職者ビザ: H-1B ビザに関してよく聞かれる質問集(2)
第5回 H-1B 専門職者ビザ: H-1B ビザに関してよく聞かれる質問集(1)
第4回 H-1B 専門職者ビザ: 転職
第3回 H-1B 専門職者ビザ: 解雇
第2回 H-1B 専門職者ビザ: 申請手順
第1回 H-1B 専門職者ビザ: 申請基準
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