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第9回: 連邦贈与税

※ワシントン州遺産税に関する法律は、第8回・第9回の執筆時から大きく変更しています。最新情報は第10回をご一読下さい。

前回お話した州遺産税と別に、アメリカには連邦政府が課する連邦贈与税(Federal Gift Tax)と遺産税(Federal Estate Tax)があります。贈与税と遺産税は基本的には同じ概念に基づいた税金で、財産を無償で他人に渡すことに対して課される税金です。これが生前に行われれば贈与なので贈与税の対象となり、死後に行われれば遺贈なので遺産税の対象となります。今回は贈与税についてご説明します。

注:下記はいずれも米国連邦贈与税が住民(Resident)として適用される場合を前提をした説明です。非住民(Nonresident)には異なるルールが適用されます。また、住民かそうでないかは必ずしもビザの分類とは一致しない場合がある(つまり米国永住権を持っていない人でも、これらの法律上は住民とみなされる場合もある)ので注意が必要です。

全ての贈与は基本的には贈与税の対象となりますが、控除項目がいくつか設けられているため、実際は多くの贈与が無課税となっています。以下は、主な控除項目です。

1.年間控除額(Annual Exclusion)
 
毎年、贈与を受ける人1人につき$11,000までの額なら無税で贈与できます。(ちなみに、この$11,000という額は物価指数とともに徐々に上昇しますが、$1,000単位で切り捨てられるため、なかなか上昇しません。2002年1月1日までは$10,000でしたので、その額を覚えておられる方も多いと思います)。

なお、贈与を受ける人の数だけ控除額が増えることにご注意ください。例を挙げると、夫婦2人が子ども2人に贈与する場合、夫から子供1人につき$11,000、妻からも子供1人につき$11,000贈与できるので、合計すると毎年$44,000まで子供達に贈与できることになります。

最近注目を浴びている529プランという学資投資はこの年間控除額を使って行われます。529プランの場合、特別なルールによって、通常ならば毎年$11,000の上限があるところを5年分先取って贈与できるため、1年目の投資で贈与人は受取人1人につき$55,000まで投資できるのが魅力です。


2.医療又は教育目的の控除額(Exclusion For Health and Educational Purposes)

これは、その名の通り目的が受取人の医療又は教育のためであれば、上限なしに贈与できるというものです。親または祖父母が子供や孫の大学の学費、または医療費を払うのがよい例です。

ただし、このルールが適用されるためには、医療機関または教育機関に直接支払われなければなりません。子供名義に小切手を書くと子供に対する贈与として扱われ、前述の$11,000以上なら課税対象になりますので、親が子供の学費を払う場合は、大学に直接支払いをすれば、$100,000でも無税になります。


3.夫婦間控除(Marital Deduction) 

夫婦間の贈与については、上限なしで無税となります。ただし、このルールが適用されるためには、受取人の配偶者が米国市民でなければなりません(贈与する側は永住者でも構いません)。

しかし、このルールのみでは、国際結婚など両方の配偶者が米国市民でない夫婦に打撃が大きいため、特例として、夫婦間の贈与で受取人が米国市民でない場合に限って上記1の年間控除額が$117,000に引き上げられます。(年間控除額と同じく、この額も物価指数に従って上昇します。2004年には$114,000でした)。


4.慈善寄付控除(Charitable Deduction)

IRSにより501(c)(3)団体として非課税処置を受けている団体に寄付した場合は、額に関わらず無税となります(所得税の控除には上限がありますが、贈与税の控除には上限がないことにご注意ください)。


5.贈与税課税免除額(Gift Tax Credit)

これらの控除にあてはまらない場合は厳密には課税対象となり、贈与税が課されますが、その場合でも贈与人1人につき生涯$1,000,000相応額の贈与税課税免除額が与えられるため、実際には課税対象贈与が$1,000,000を超えるまでは無税となります。ただし、この免除額は生涯$1,000,000の上限があるので、免除額を使った分は差し引かれていき、この贈与税課税免除額がゼロになると、それ以上の課税対象贈与に対して実際に贈与税の支払いが必要です。


これらのルールは少々複雑なので、例を挙げてご説明します。

夫Hと妻Wは、子供Cの年間学費$50,000全額を大学に直接支払い、子供Cには小遣いとして$20,000を渡しました。夫Hは米国市民で、、先日亡くなった伯母から相続した$30,000を自身の母校であるワシントン大学に寄付し、妻Wに$200,000を贈与しました。妻Wは日本国籍ですが米国永住権を持っています。

子供Cの学費:
これは教育目的の贈与であり、大学に直接支払ったので上記2の控除が適用されるため、無税です。
子供Cへの小遣い$20,000:
HとWはそれぞれ$11,000ずつCに贈与できるので(合計$22,000まで)、この小遣いは上記1の控除により無税です。
夫Hによるワシントン大学への寄付:
上記4の慈善寄付控除により無税です。
夫Hから妻Wへの$200,000の贈与:
Wが米国市民でないため、上記3の夫婦間控除が適用されません。しかし、特例により上記1の年間控除額が$117,000まで引き上げられるため、$200,000のうち$117,000は無税です。従って、残りの$83,000が課税対象となりますが、上記5の課税控除額があるため、贈与税の支払いは不要です。夫Hはこれまで課税対象贈与をしたことがないとすると、夫Hの課税控除額は$1,000,000ありますので、それから$83,000が差し引かれ、この先に使うことができる課税控除額は$917,000残ることになります。

これらの控除や課税免除額を使い果たし、更に課税対象となる贈与を行った場合は、額に応じて累進課税式で贈与税が課されます。課税率は2005年現在41%から47%です。贈与税の申告は贈与があった都市の翌年の4月15日が期限となります。申告は用紙をIRSから入手して自分ですることもできますが、会計士、または弁護士に依頼する方も多いです。生前に課税対象となる贈与を行ったのに申告しないでいると、贈与人の死後に遺言の執行人(または州法によって定められる執行人)が申告しなければなりません。


第8回(2005年3月1日掲載)の 『州遺産税』 に関する補足:

第8回でお話したワシントン州の遺産税について最新情報がここ数日、報道されましたのでお伝えします。予想されたとおり、州の最高裁の判決に応じ、州政府では新しい法律を作成することによって州の遺産税を再生させる動きが見られています(以下のリンク参照)。現時点では、グレゴア州知事と州上院議会がそれぞれ発表している予算案には多少の差はあるものの、いずれも州遺産税の控除額を$2,000,000まで引き上げた形で継続するという案のようです。州下院の予算案もまもなく発表されると思われますので、この先の展開が気になるところです。

参考リンク: The Seattle Times
Gregoire budget relies on patches to hold financial fabric together (2005年3月28日)
Senate submits bigger budget (2005年3月29日)
※記事の参照には登録が必要です。


(2005年4月)


= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。

なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。
第13回 2011年アップデート(1)米国連邦遺産税
第12回 2009年9月 アップデート
第11回 よくある質問
第10回 連邦遺産税
第9回 連邦贈与税
第8回 州遺産税
第7回 委任状(Durable Power of Attorney)
第6回 プロベート
第5回 リビング・トラスト(Living Trust)
第4回 プロベートを通さない遺産相続(Nonprobate Transfers)
第3回 遺言状(Will)
第2回 コミュニティ・プロパティ
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