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第8回: 州遺産税

※ワシントン州遺産税に関する法律は、第8回・第9回の執筆時から大きく変更しています。最新情報は第10回をご一読下さい。

今回は、遺産税(Estate Tax)の中の、州遺産税についてお話しします。通常、遺産税については最初に連邦政府が課する連邦遺産税(Federal Estate Tax)、そしてワシントン州が課する遺産税(State Estate Tax)をご説明するのですが、今年2月3日にワシントン州最高裁がワシントン州遺産税を不当とする判決を出したこともあり、今回は州遺産税からご説明します。

州遺産税の歴史については最高裁の判決文にも書かれていますので詳細は省きますが、簡単に言うと2001年までのワシントン州の遺産税は "連邦政府の遺産税とコーディネートされた税金" でした。つまり、ワシントン州のように連邦政府と州政府の両方に遺産税を納めることが義務付けられている州の納税者は、当時の連邦遺産税法上、通常の連邦遺産税の一部をクレジットとして差し引いた額の連邦遺産税と、そのクレジットと同額の州遺産税を納めていました(例A)。一方、州遺産税がない州は連邦遺産税から差し引くクレジットはありませんので、通常の連邦遺産税を全額連邦政府に納めることになります(例B)。従って、州遺産税の有無に関わらず、納税者が連邦政府に納める遺産税額は同じ額でした。要するに、連邦政府がクレジットとして認める最高額が州遺産税として組み入れられていたため(Pick up)、このような仕組みは "Pick-up Tax" (ピックアップ税)と呼ばれていました。

例A)州遺産税と連邦遺産税の納税が義務付けられている州
連邦遺産税=連邦遺産税−クレジット 例:100-20=80
州遺産税=クレジット 例: 20
合計遺産税額=80+20=100

例B)連邦遺産税のみの納税が義務付けられている州
連邦遺産税 例: 100
州遺産税 例: 0
合計遺産税額=100


ところが、2002年以降、連邦遺産税法が変更され、連邦遺産税の課税免除額が急激に増加したうえ、この州遺産税に対するクレジットが2002年から2004年にかけて徐々に削られ、2005年からはクレジットがゼロになり、代わって州遺産税として納めた税金は控除(Deduction)として差し引くことになりました。つまり、これまで通り連邦遺産税法に沿って課税すると、州遺産税額が2002年から2004年にかけて1年ごとに25%ずつ低くなり、2005年以降はゼロとなることになったのです。

連邦法の変更による州の財源への影響が明らかになっても、ワシントン州の州議会が対策を議決しなかったため、ワシントン州税務局(Department Of Revenue)は独自の見解を出し、連邦政府が一方的に法律を変更したことによってワシントン州の税金が自動的に減ることはなく、州の遺産税は2002年以前の連邦法に従って徴収すると決定しました(このような結論を出すに至った根拠や理論については判決文をご覧ください)。その結果、2002年には連邦遺産税の課税免除額が$1,000,000に増加したにも関わらず、州の課税免除額は$700,000、そしてピックアップ税の額は連邦政府がクレジットをそれまでの75%に制限したにも関わらず、州遺産税額はこれまで通り100%とされ、これまで統一されてきた2つの税金のシステムが分断されてしまいました。このため、最高裁の判決が出るまでは、連邦遺産税と州の遺産税の免除額は下記のように異なっていました。

死亡した年 連邦遺産税免除額 州遺産税免除額
2002 $1,000,000 $700,000
2003 $1,000,000 $700,000
2004 $1,500,000 $750,000
2005 $1,500,000 $850,000
2006 $2,000,000 $950,000
2007 $2,000,000 $1,000,000
2008 $2,000,000 $1,000,000
2009 $3,500,000 $1,000,000


この問題が起こってまもなく、一部の納税者達が「州議会での議決なしに州税務局の独断でこのような法律解釈をするのは権限を越えている」と主張し、州政府を相手取って訴訟を起こしました。そのうちこの訴訟は集団訴訟と認められ、第1審は州政府側が勝訴しましたが、その後、納税者側が州最高裁に上訴し、その結果が今年2月3日に出された上記の判決です。実際、この分野に関わる人の多くは最高裁でも納税者側が敗訴すると予想していたのですが、州最高裁は「現存の法律を税務局が言うように解釈することは不当であり、議会が何らかの議決をするまではワシントン州は現在の連邦法に沿って課税しなければならない、つまり2005年以降は遺産税がゼロになる」という判決を下しました。

その結果、現在の法律では、2005年以降はワシントン州には遺産税が存在しないことになります。2002年から2004年の間に既に税務局の見解に従って州遺産税を納めたエステートは、亡くなった年によってその一部が還付されるものと思われますが、実際いつ、どのような手続きで還付されるかは現時点でははっきりしていません。また、最高裁の判決はあくまでも「議会が明確な決定をしない限り」とした上でのものなので、州議会が法律を変更して遺産税を再施行すれば、州遺産税が復活することになります。今後の展開には注意が必要です。

参考リンク:

ワシントン州税務局・遺産税ページ
ワシントン州裁判所・判決文ページ
シアトル・タイムズの記事


(2005年3月)


= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。

なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。
第10回 連邦遺産税
第9回 連邦贈与税
第8回 州遺産税
第7回 委任状(Durable Power of Attorney)
第6回 プロベート
第5回 リビング・トラスト(Living Trust)
第4回 プロベートを通さない遺産相続(Nonprobate Transfers)
第3回 遺言状(Will)
第2回 コミュニティ・プロパティ
第1回 エステート・プランとは?
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