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第5回: リビング・トラスト(Living Trust)

リビング・トラストはプロベートを通さない相続方法の1つです。前回書いた幾つかの方法よりも少し複雑なので、今回のコラムはこれに焦点を当てます。

リビング・トラストは正式には "Revocable Living Trust" と言います。その名の通り、これはトラストの一種です。トラストと言っても生前に設立するもの、作成者の死後に初めて効力を発揮するもの、設立後も簡単に内容を変えたり破棄したりできるもの、そうできないもの、といろいろ種類があります。このうち、生前に設立するもの(従って "Living")であり、更に生前ならいつでも変更したり破棄したりできるもの(従って "Revocable")を指して "Revocable Living Trust"、略してリビング・トラストと呼びます。このコラムではリビング・トラストに限ってご説明します。

リビング・トラストはトラスト合意書に署名することによって法人として設立されます。トラスト合意書には作成者の生前のトラストの管理の仕方、および作成者の死後のトラスト運営についての細かな取り決めが組み入れられており、それに従ってトラスティー(トラスト管理者)がトラスト名義の財産を運営することになります。リビング・トラストの場合、作成者が自分自身をトラスティとして指名することがほとんどです。

プロベートを避けることを目的としたリビング・トラストの場合、トラスト合意書に署名したあとに財産をトラスト名義に書き換えることが重要です。そうしないと、せっかくのトラストも空のまま、役立たずで終わってしまいます。

作成者が自分の財産を全てリビング・トラスト名義に書き換えた後に亡くなると、名義という観点から言えば作成者は財産を所有しないで亡くなったことになります。ですから、プロベートを通して相続する財産はゼロです。作成者の財産は生前に全てトラストに移行してあるので、トラスティ(作成者がトラスティだった場合は後続トラスティ)がトラスト合意書に沿って運営を続けます。従って、作成者はプロベートを避けることに成功したことになります。

このようなリビング・トラストは、プロベートが複雑で費用が多くかかる州では特に便利です。カリフォルニア州やオレゴン州はプロベートが複雑なので、これらの州の住民はよくリビング・トラストを利用します。ワシントン州の場合、プロベートそのものが比較的簡素化されており費用も低めなので、場合によってはリビング・トラストを作る方がプロベートを通じて相続するよりも高くついてしまう場合もあり、注意が必要です。

そのほかの主な注意点は以下の通りです。

リビング・トラストを作っても所得税や遺産税を避けることはできません。名義上は財産を全てトラストにしても、税法上は作成者の財産とみなされるので、かかる税金は同じです。もちろん、遺言書と同じように税金対策をトラスト合意書の一環として組み入れることは可能です。
リビング・トラストをエステート・プランの一環として使用する場合は、必ず遺言書とセットにして作成する必要があります。この場合、主な内容(誰に財産を残すか、など)はトラスト合意書の中に組み入れられるので、遺言書には「財産の全てはトラストに渡す」と指示するだけになります。簡単なことのように見えますが、実際、トラスト合意書を丁寧に作ったのに遺言書を作ることを忘れ、しかも財産の名義変更をしていなかったためプロベートが必要になり、そのうえ遺産はトラストに書かれた受取人ではなく法定相続人に渡ってしまった、などというケースがあります。
リビング・トラストに財産を名義変更したら、必ず関連した保険なども同じく名義変更するべきです。例えば自宅をトラスト名義にした後で、ホーム・オーナーの損害賠償保険の名義を自分の名義のままにしていると、仮に火事などで損害があっても保険会社がカバーしない可能性が出てきます。

上記のように、いろいろと注意が必要なリビング・トラストですが、プロベートが簡素化されているワシントン州の住民でも、事情によってはリビング・トラストを作成したほうがよい場合もあります。特にワシントン州の住民が他の州に不動産を所有している場合はリビング・トラストを作ることによって後からのトラブルを防ぐことができます。つまり、リビング・トラストは使用方法さえ間違えなければ、とてもパワフルなツールとなりえるのです。

(2004年10月)


= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。

なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。
第10回 連邦遺産税
第9回 連邦贈与税
第8回 州遺産税
第7回 委任状(Durable Power of Attorney)
第6回 プロベート
第5回 リビング・トラスト(Living Trust)
第4回 プロベートを通さない遺産相続(Nonprobate Transfers)
第3回 遺言状(Will)
第2回 コミュニティ・プロパティ
第1回 エステート・プランとは?
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