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第10回: 連邦遺産税

今回は連邦レベルで課される遺産税(Estate Tax)についてご説明します。

注:下記はいずれも米国連邦遺産税が住民(Resident)として適用される場合を前提とした説明です。非住民(Nonresident)には異なるルールが適用されます。また、住民か非住民かは必ずしもビザの分類とは一致しない場合がある(つまり米国永住権を持っていない人でも、これらの法律上は住民とみなされる場合もある)ので注意が必要です。

前回お話した連邦贈与税は、生前に財産を無償で譲渡した場合に生じる税金ですが、今回の遺産税はそれと対照的に死後の財産譲渡に対して課される税金です。贈与税と遺産税は基本的に同じ性質の税金で、どちらの対象になるかは譲渡が起こるタイミング(つまり生前か死後か)によります。

贈与税と同じく、遺産税には何種類かの控除項目が設けられています。以下に、その主なものをご紹介します。

1.夫婦間控除(Marital Deduction)

贈与税と同じく、夫婦間での遺産の相続は額に無制限で無税です。しかし、これもまた、受取人の配偶者が米国市民でない場合は適用されません(遺贈する側、つまり亡くなった人は永住者でも構いません)。

受取人が米国市民でない場合には、相続の際に遺産税がかかります。しかし、QDT(Qualified Domestic Trust)という特殊なトラストを設立することによって、配偶者の死後まで税金を先延ばしにすることができます。QDTを作るにおいてはさまざまな細かい規則があり、このコラムではこれらの詳しい説明はできかねますが、原則としてQDTというのは米国市民でない配偶者が相続した財産を国外に移動してしまうことを防ぐためのものです。配偶者が米国市民の場合は、先立った配偶者の死亡時に税金を控除しても、いずれ残された配偶者の死亡時に税金を取ることができますが、配偶者が米国市民でないと遺産を持って他の国に移住してしまう可能性が高い、つまり米国遺産税の課税対象から逃れてしまう可能性が高いため、このようなルールがあるのです。

この点についてご心配される方はとても多く、よく質問を受けるのですが、現実的にQDTを作ることが必要となってくるのは、下記の遺産税課税免除額を超えた額の相続がある場合です。現在この免除額はかなり大きくなっていますので、実際はQDTの心配をしなくても税金は免れることが多いです。


2.慈善寄付控除(Charitable Deduction)
これもまた、贈与税と同じく、IRSにより501(c) (3)団体として非課税処置を受けている団体に遺贈した場合は、額に関わらず無税となります。


3.遺産税課税免除額(Estate Tax Credit)
前回、贈与税課税免除額により1人につき生涯$1,000,000の贈与まで贈与税が免除になるとご説明しました。これを使わずに(つまり課税対象となる贈与をせずに)一生を終えた人は、残った分が遺産税課税免除額の一部となって遺産税から差し引かれます。そして、残された贈与税の免除額に加えて、更に大きな額が遺産税課税免除額として与えられます。

今年の遺産税課税免除額は$1,500,000です。それを例にご説明しますと、Aさんは生涯$1,000,000まで贈与税無税で贈与できます。Aさんが全く贈与しないまま亡くなった場合、彼の死後の遺産税免除額は贈与税の免除額の$1,000,000プラス更に死後初めて与えられる$500,000を合わせて$1,500,000となります。Aさんが生前$500,000の贈与をした場合は、生前に贈与税の免除額の半分を使ったことになりますので、死後の遺産税免除額の総額は$1,000,000−$500,000+$500,000で$1,000,000となります。$1,500,000のうち、生前に贈与額の免除として使えるのはあくまでも$1,000,000までですので、もしもAさんが生前に$1,500,000の贈与をした場合は、そのうち$1,000,000までは免除で残りの$500,000に贈与税がかかり(これは生前に支払いが必要です)、死後に新たに$500,000の免除額概算税に対して与えられる、ということになります。

この遺産税課税免除額は今のところ上昇する予定で、2005年に亡くなった方の遺産に対しては$1,500,000、2006年から2008年に亡くなった方の遺産に対しては$2,000,000、そして2009年に亡くなった方の遺産に対しては$3,500,000となる予定です。さらに、2010年に亡くなった方の遺産には遺産税が全くかからない、つまり遺産税が廃止となることになっています(ただし、贈与税の免除額はこれらの変化に関わらず$1,000,000止まりであることにご注意ください)。

しかし、この法律が定められた時の条件として、2010年の末までにこの法律を継続するように連邦議会が議決しなければ、これらのルールは消えてなくなり、2011年からは免除額が$1,000,000に引き下げられることになっています(なぜこのような条件がついたかというと、この法案は連邦政府の財源に影響を大きく与えるものだったため、条件無しで可決するには議会の3分の2の承認が必要だったのですが、当時はそれ程の票が得られなかったため、仕方なく条件付で可決されたからです)。

従って、この先遺産税の免除額がどのレベルで落ち着くかは不明です。いったん、ある程度の額まで上がった免除額を$1,000,000まで引き下げることは政治的に賢い動きではないのでおそらくそれはないだろう、などとさまざまな予測がされていますが、実際どうなるかはしばらく不透明なままと思われます。


ここで上記1の夫婦間控除に戻って、なぜ多くの移民家庭ではQDTの心配がいらないかをもう少し詳しくご説明します。この遺産税課税免除額は亡くなった方が米国遺産税法において「住民」であれば、市民であってもなくても適用されます。ですから、例えば夫婦両方がグリーンカード保持者で、2人の財産が合わせて$3,000,000あり、全てがコミュニティ・プロパティ(第2回参照)だった場合、先に夫が亡くなると、彼の課税対象となる財産は$1,500,000となります。彼は米国市民ではありませんが「住民」なので、$1,500,000まで遺産税が免除されます。ですから、彼の財産全てを妻に残した場合、夫婦間控除が効かないのは事実ですが、免除額のおかげで遺産税はかからないので、結果的には遺産税はゼロになります(この場合、QDT以外の理由(例えば妻の死後の税金対策)で夫の死後にトラストを作ることは考えられますがそれは妻が米国市民でないこととは関係ありません)。対照的に、この夫婦の財産が$5,000,000だった場合、夫の半分は$2,500,000ですから、そのうち$1,500,000までは免除されるものの、残りの$1,000,000についてはQDTを作らない限り、妻は遺産税なしで相続することはできません。

遺産税の申告は遺言状で指名された執行人(遺言が無い場合は方で定められた執行人)が行わなければなりません。申告書は死亡日から9ヶ月以内に提出する必要があります。課税率は累進課税で、2005年現在45%から47%です。


第8回の「州遺産税」に関する補足・その2
第9回で補足を書いた時点では州の遺産税の法案が出たばかりでした。その後、2つあった法案のうち、上院の法案がつい先日可決され、州知事の署名を待つばかりとなっています。それによると、この法律が立法された後に亡くなったワシントン州住民の遺産は2005年には遺産税が$1,500,000まで免除され、2006年以降は$2,000,000までの免除となります。それ以上免除額を引き上げる予定はないため、もしも連邦遺産税の免除額が2009年に$3,500,000となれば、また州と連邦政府の遺産税の免除額に差が出てくることになります。


(2005年5月)


= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。

なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。
第10回 連邦遺産税
第9回 連邦贈与税
第8回 州遺産税
第7回 委任状(Durable Power of Attorney)
第6回 プロベート
第5回 リビング・トラスト(Living Trust)
第4回 プロベートを通さない遺産相続(Nonprobate Transfers)
第3回 遺言状(Will)
第2回 コミュニティ・プロパティ
第1回 エステート・プランとは?
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