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第1回: エステート・プランとは?

エステート(Estate)は和訳すると財産・遺産の意味があります。それに関するプランニングと聞けば、遺産相続の問題、特に税金対策と考える人が多いのですが、アメリカで言うエステート・プランには、次のようなもっと幅広い意味があります
  • 死後の財産分与のみでなく、生前に自分で財産を管理できなくなった場合の対策
  • 離婚した場合のことを考えての「万が一」のプランニング
  • 未成年の子供がいる場合に自分に何かがあった場合の対策
  • 何らかの理由で医療行為に対する意思表示ができなくなった場合に代行決定権を持つ人物の指名
つまり、エステート・プランニングとは、人生に起こりうるさまざまな状況に対応するための計画なのです。


エステート・プランの基盤

アメリカでは一般に遺言(Will)と委任状(Durable Power of Attorney)の2つがエステート・プランの基盤です。そして、状況に応じ、トラストなどその他のプランをこれに追加していきます。エステート・プランの大黒柱と言える遺言と委任状ですが、これらはどのような役目を果たすもので、なぜ必要なのでしょうか。

遺言(Will): 
遺言状は法的に大きく分けて2つの役割を果たします。
1)死後の財産をどのように分配するかを定めること
2) その分配に際しての規則を定めること。
遺言状はそれを作った人の死後に初めて法的効力を発揮します。

なお、未成年の子供がいる場合はこれに加え、子供の法的保護者の指名という3つ目の役割が含まれます。

委任状(Durable Power of Attorney):
遺言状とは対照的に、委任状はそれを作った人の生前にのみ法的効力がある書類です。この書類の目的は、その名の通り、権限を第三者に委ねることです。本人が何らかの理由で意思表示ができなくなった場合は誰が代わりにいろいろなことを決定するのかをあらかじめ指定しておきます。

エステート・プランで使われる委任状には2種類あり、財産関係によるものと健康・医療行為に関するものに分かれます。医療行為に関しては、延命措置や臓器移植に関する意思表示も委任状の上で決めておくことができます。委任状は本人の権限を第三者が行使するものですから、本人が死亡した時点でその権限は終わり、第三者の力は消失します。


エステート・プランは誰にでも必要なもの

日本人に限らず、アメリカ人でも「エステート・プランは裕福な人のためのもの」と思っている方はかなり多いようです。しかし、仕事上の経験から、エステート・プランは財産の大小に関わらず作成されることをお勧めします。もちろん、財産の大きさや家庭の事情によってその複雑さには大きな違いがありますが、前述の委任状については本人が意思表示不能になってしまった場合の対策ですので、財産の有無に関わらず必要なものです。日本や他の国に比べ、アメリカには細かな規則がたくさんあります。訴訟社会の影響かもしれませんが、銀行や病院は間違いを犯すのを恐れ、法的な文書がない限り本人の情報を公開したり、口座にアクセスしたり、医療行為の合意書に署名したりできない場合がほとんどです。つまり、詐欺などに対する安全性が高い反面、情状酌量の余地が少ないため、法的な書類がないと苦労する可能性が高くなっているのです。

遺言に関しても同じく、「財産の分与は法定相続のままでいい」という人も、遺言状でプロベート(死後の財産引継ぎの法的手続き)を簡素化するように指示しておくことで、遺族の手間や費用を抑えたり、場合によってはプロベートを完全に避けたりすることも可能です。また、未成年のお子さんがいる場合、両親に何かあった時の子供の法的保護者を指定できるのは遺言状の上においてのみです。従って、それだけの理由でも遺言を作成されることをお勧めします。

次回からは、エステート・プランを形成する書類に1つずつ焦点を当ててお話していきます。

(2004年5月)


= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。

なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。
第10回 連邦遺産税
第9回 連邦贈与税
第8回 州遺産税
第7回 委任状(Durable Power of Attorney)
第6回 プロベート
第5回 リビング・トラスト(Living Trust)
第4回 プロベートを通さない遺産相続(Nonprobate Transfers)
第3回 遺言状(Will)
第2回 コミュニティ・プロパティ
第1回 エステート・プランとは?
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