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第14回: 差別訴訟を防ぐ人事対策(8):職場でのコミュニケーション
言葉や文化の壁を取り除いて職場でのコミュニケーションを円滑にする努力は、差別訴訟を防止する上で不可欠です。今回は、多国籍の従業員を抱える在米日本企業を念頭におき、コミュニケーションの向上を目的とした具体案をご紹介します。ただし、これはあくまでも一例に過ぎず、個々の職場環境に応じた対策を取り入れる必要があることを付け加えておきます。
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日本語を解さない従業員に対して十分な対応を行う
過去の訴訟を分析すると、日本語能力が劣る非日本人従業員に対する雇用者側の不十分な対応が契機となり、「出身国による差別」(national origin discrimination)の訴訟に発展したケースが見られます。最近では、アメリカでは "English-only rule" と呼ばれ、職務との直接の関連がない場合(例:休憩時間中の同僚との会話)においても英語の使用を強要した雇用者に対する差別訴訟が増加し、メディアの関心を集めました。在米日本企業が非日本人従業員に対して日本語の使用を義務とし、それに職務関連性が認められない場合には、差別のクレームにつながる可能性があります(詳細はコラム第2回をご覧下さい)。会議や社内回覧などで日本語のみを使用することで、日本語を解さない社員を除外してしまわないようにしましょう。社員の「日本語能力の欠如」を一方的に嘆くだけではなく、社内で日本語教育を行ったり、コミュニティ・カレッジなどでの日本語クラス参加に対して企業側が一部あるいは全額授業料負担という形をとったりするなどの方法で、積極的に日本語修得、ひいては日本文化理解の援助をするのも一案です。
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勤務時間外に日本人だけで社交の場を持たない
日本人の同僚同士で勤務時間外に宴会をしたりゴルフに興じたりといったことを繰り返したことが発端となって、アメリカ人従業員による差別のクレームに発展したケースもあります。日本人側からすれば、「勤務時間中ならともかく、それ以外の私的な時間では気のおけない日本人同士、日本語でしゃべりたい」という言い分もあるかもしれません。しかし、日本の伝統的企業文化では、宴会やゴルフといった社交の場における会話が結果的には仕事上の重要な決断につながることがあります。ですから、非日本人社員を招待しないことにより、「意思決定過程から排除された」と訴えられる可能性も出てきます。それよりも基本的な意味で、非日本人に除外感を与えず、良好な人間関係を築くということが重要です。日本人のみが固まって私的な集まりを行うことは避けた方が賢明でしょう。
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一方ではプライベートに見える行為が差別のクレームにつながる可能性があることを念頭におく
上記の事柄と関連していますが、仕事とプライベートの境界線が明瞭とは限らず、本人は私的であると信じている行動が、第三者の視点、更に法的視点からは必ずしもそう解釈されないことに注意します。例えば、某総合商社では、社内の会議室に日本人マネージャーが集まってアダルト・ビデオを鑑賞したことや、マネージャーの机上にヌードカレンダーが置いてあることを、アメリカ人女性社員が糾弾しました。
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日本の伝統的な慣行を強制しない
日本で伝統的とされる雇用慣行をそのままアメリカの職場に持ち込む際には注意を要します。例えば、社訓の斉唱などは、内容によっては宗教を理由とした差別とみなされることもあります。在米企業によっては「和」を重視した日本的な習慣を取り入れることにより、従業員間の連帯感を高めるのに成功したといった報告もあり、どこまで日本的企業文化が認められるかはケースバイケースと言えるでしょう。しかし原則として、多様な価値観を反映し、個人主義を尊重する移民の国アメリカにおいて、日本では広く受け止められている慣行が直ちには受け入れられない場合もあることを心しておきましょう。
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地域貢献を通して企業のイメージ向上に努める
従業員が一丸となって地域活動にボランティアで参加することは、従業員間の交流を深める契機となり、更には地域貢献という形で市民間における企業の印象を高めるという効果もあります。こうして企業のイメージ向上に努めることは、陪審員による裁判などにおいて有利なものとなります。
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雇用差別法などに関する社内教育を行う
昨今では、「当社は "equal opportunity employer" です」といった一文を企業紹介に添える雇用者も増加しています。しかし、雇用機会均等が絵に描いた餅に終わらないよう、企業側の着実な努力が欠かせません。その一環として、人事専門家や "diversity management consultant" などを招いて、雇用差別法、あるいは異文化間コミュニケーションなどといったテーマでセミナーやワークショップを定期的に開催し、従業員への啓蒙の機会を積極的に提供することをお勧めします。差別のクレームを受けた日本人の人事担当者が「私には法律のことはよく分かりません」「赴任したばかりなので知りません」といった発言をすることがあります。しかし、人事に関わる者として雇用法の基礎知識は不可欠です。
社内教育では、通り一遍のことにとどまらず、アメリカ文化に精通していない日本人にとって盲点になりやすいポイントに重点を置いた内容にすると効果的です。一例を挙げると、宗教を理由とした差別は、赴任して間もない日本人マネージャーなどにとっては一筋縄では理解し難いと言えるでしょう。「キリスト教の国アメリカでは、日曜日に教会での礼拝に出席する人が多い」といった固定観念を持つ人が少なくありませんが、現実には多様な宗教・宗派が存在し、安息日や礼拝などのしきたりも大きく異なります。その上、連邦法タイトルセブンでは宗教を理由とした差別の場合、「差別をしなかった」だけでは不十分とされ、「適切な措置」(reasonable accommodation)という更に突っ込んだ義務が課されます(詳細はコラム第4、5回をご覧下さい)。こういった点は、人種差別・性差別などと比較すると、日本人人事担当者には見逃しやすい点と言えるかも知れません。
(2005年9月)
= お断り =
このコラムはあくまでも一般的な情報を読者に提供するのが目的です。法的トラブルが起こった場合は個々のおかれた具体的な状況によって法律の適用が異なることもあり得ますので、個人的に弁護士に相談されることをお勧めいたします。 また、当コラムでは連邦法を中心に説明していますが、雇用関係には州法、更にはローカル法(市や郡の条例など)が関連してくる場合もあります。
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第17回
セクシャル・ハラスメント
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第16回
雇用訴訟ケース・スタディ(2)
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第15回
雇用訴訟ケース・スタディ(1)
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第14回
差別訴訟を防ぐ人事対策(8):職場でのコミュニケーション
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第13回
差別訴訟を防ぐ人事対策(7):採用における注意点
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第12回
差別訴訟を防ぐ人事対策(6):採用面接 (2)
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第11回
差別訴訟を防ぐ人事対策(5):採用面接 (1)
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第10回
差別訴訟を防ぐ人事対策(4):履歴書と求人広告
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第9回
差別訴訟を防ぐ人事対策(3): 人事ファイル
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第8回
差別訴訟を防ぐ人事対策(2): 雇用ハンドブック
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第7回
差別訴訟を防ぐ人事対策(1): 中小企業の場合
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第6回
差別的な効果 "Disparate Impact"
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第5回
宗教を理由とした差別(2): "Reasonable Accommodation"
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第4回
宗教を理由とした差別(1): 概要
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第3回
性差別と「顧客の要望」
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第2回
言葉の壁がもたらす差別
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第1回
雇用平等法とその重要性
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