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第13回: 差別訴訟を防ぐ人事対策(7):採用における注意点
これまで2回にわたって採用面接についてご説明しましたが、今回はよく聞かれる質問にお答えする形式で、採用全般における主な注意点を述べたいと思います。
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「採用試験を実施したのですが、法律上の問題が起こる可能性はありますか?」
一口に採用試験といってもさまざまな形があります。例えば、技能あるいは知識テスト、性格テスト、心理テスト、更には日本の企業で伝統的に行われてきた一般教養テストなどです。
試験の合法性は、試験を行う目的と試験の内容の2つによって大きく左右されます。原則として、該当職務と直接関連した技能や知識をテストするものであれば問題はありません。具体的には、タイピストを雇うためにタイプの試験をするといったものです。それ以外の試験では違法とされる可能性がありますので、どうしても実行したいというのであれば、その具体的内容について人事専門家の指示を仰ぐことをお薦めします。
性格テストや心理テストでは、性的嗜好 (sexual orientation)や信仰、文化的背景などに関する質問が含まれないよう、細心の注意を払う必要があります。実際の判決をみてみると、心理テストの内容がプライバシー侵害にあたるとして訴えたケースもあります。また質問内容によっては、米国障害者法(Americans with Disabilities Act)に反するとされる場合もあります。
多民族国家アメリカに進出した日本企業が特に注意を要する点として、一定のグループ (人種や国籍、出身国などによって分類される"racial/ethnic groups")に不利な影響を与えるテストは行うべきではないことが挙げられます。例えば、日本でよくみられる一般教養テストは、職種との関連性に欠ける場合が多く、ひいては一定の文化的背景を持たない応募者には不利となる可能性がありますから、実施しない方が無難でしょう(同じ観点から、マークシート式のテストはマイノリティに不利な影響をもたらすので避けた方がいいと解釈する専門家もいます)。第6回でもご説明したように、たとえ企業側に差別の意図がなくても、一定のグループに不利な影響をもたらすこと(disparate impact)が認められれば、結果的に差別にあたるとして訴えられることも考えられます。アメリカで経営に関わる以上、理念としての平等を追求するだけでは不十分であり、結果としての平等をもたらすことが重要なポイントとなります。
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「主観的要素に従って人材を選択するのは違法となりますか?」
コラム第1〜3回でご説明したように、連邦法では人種・肌の色・出身国・性別・宗教・年齢・身体障害などによって差別行為を行うことを禁じています。逆に言えば、法律で定められた一定の範囲内であれば、雇用者側は自由に人材の選択をする権利がある訳です。また、現実問題として、職種内容によっては完全に主観的要素を除外するのは難しいという事情もあります。ですから、「身なりがきちんとしており、人あたりもよいので接客業に適している」、「積極性があるので営業に向いている」といった具合に、人柄や印象、外見などといった理由で採用に踏み切ること自体は、即座に違法とはみなされません。しかし、気をつけねばならないのは、主観的要素は往々にして差別に繋がりやすい要素を含んでいる点です。例えば、女性の応募者のみに「きちんとした外見」を重視するといった場合には、性差別のクレームに繋がる可能性があります。
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「採用者との雇用契約を結んだ方がいいのでしょうか?」
「雇用関係解消自由」(employment at will)が基本ルールとなっているアメリカでは、雇用契約自体は一般的に用いられていません。ちなみに、「雇用関係解消自由」というのは、雇用者側は差別などの不当な理由がない限り、いつ、いかなる理由により解雇をしても構わないという考え方です。言うまでもなく、従業員側にも、いつ、いかなる理由により離職しても構わないという「自由」が存在するわけです。そのような社会的土壌があるため、一定の雇用期間を文書で定めるということはあまり普及していません。
ただし、高度なレベルでの専門職などで、企業側に「どうしてもこの人材を一定の期間、確保しておかなければ困る」といった特殊な理由があれば、契約書を交わす重要性も増します。また、技術専門職などで、「企業秘密を外部に漏らされては困る」、「他社との競争を制限したい」といった場合も同様です。しかし、その場合も契約関係に入ることによる長所と欠点をリストにして考慮する必要性があります。契約を結べば、当然、契約違反として訴えられる可能性が出てくる訳ですから、注意を要します。また、企業側が用意した契約書に採用者が即座に賛同し署名をするとは限らず、契約の内容に関しての交渉が長引くことによって時間的損失もあり得ます。
(2005年7月)
= お断り =
このコラムはあくまでも一般的な情報を読者に提供するのが目的です。法的トラブルが起こった場合は個々のおかれた具体的な状況によって法律の適用が異なることもあり得ますので、個人的に弁護士に相談されることをお勧めいたします。 また、当コラムでは連邦法を中心に説明していますが、雇用関係には州法、更にはローカル法(市や郡の条例など)が関連してくる場合もあります。
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第17回
セクシャル・ハラスメント
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第16回
雇用訴訟ケース・スタディ(2)
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第15回
雇用訴訟ケース・スタディ(1)
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第14回
差別訴訟を防ぐ人事対策(8):職場でのコミュニケーション
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第13回
差別訴訟を防ぐ人事対策(7):採用における注意点
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第12回
差別訴訟を防ぐ人事対策(6):採用面接 (2)
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第11回
差別訴訟を防ぐ人事対策(5):採用面接 (1)
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第10回
差別訴訟を防ぐ人事対策(4):履歴書と求人広告
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第9回
差別訴訟を防ぐ人事対策(3): 人事ファイル
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第8回
差別訴訟を防ぐ人事対策(2): 雇用ハンドブック
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第7回
差別訴訟を防ぐ人事対策(1): 中小企業の場合
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第6回
差別的な効果 "Disparate Impact"
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第5回
宗教を理由とした差別(2): "Reasonable Accommodation"
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第4回
宗教を理由とした差別(1): 概要
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第3回
性差別と「顧客の要望」
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第2回
言葉の壁がもたらす差別
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第1回
雇用平等法とその重要性
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