第12回: 差別訴訟を防ぐ人事対策(6):採用面接 (2)
前回は、女性が聞かれやすい傾向にある質問を中心に違法の質問とその対応の仕方についてお話しました。今回は、主に雇用者側の立場から、違法にあたる質問をさらに掘り下げてご説明します。
■ "Small Talk" における注意点
それでは、例として下記の質問の違法性を考えてみましょう。採用面接において試験官からこれらの質問、あるいは発言がなされた場合、どれが差別のクレームに繋がる可能性があるでしょうか?
(1) 「我が社では週末出勤もあり得ますが、大丈夫ですね?教会に行くようなことはありますか?」
(2) 「ほう、珍しい名字をお持ちですね。どこの国のお名前ですか?」
(3) 「高校を卒業されたのはいつですか?」
(4) 「リファレンスの確認をする上で必要ですので、旧姓を教えていただけますか?」
これらすべてが差別と見なされます。具体的には、(1)は信仰による差別, (2)は出身国による差別、(3)は年齢による差別、そして(4)は婚姻状態、あるいは出身国による差別(またはその両方)となります。
面接では、試験官が応募者をリラックスさせるという意図により、いわゆる"small talk"、すなわち雑談の延長のような形で話を進めていくことが珍しくありません。しかし、表面的には気楽な会話の中に、差別にあたる質問が紛れ込んでいることがあります。大半の場合は、質問をする側も差別の意図はないのが実情です。
しかし、訴訟の可能性を防ぐという観点からすれば、むしろ "small talk" の一部としてなされる質問や発言こそ注意が必要だと言えるでしょう。良識のある試験官なら、「何か宗教を信仰していますか?」「何歳ですか?」といった単刀直入の質問は控えるのが一般的ですが、何気ない会話の流れの中では、無意識のうちに違法にあたる質問をしているということも多々あります。
一度でも違法にあたる質問をすると、たとえ正当な理由(職務遂行能力の欠如)により不採用という結果になったとしても、相手側から差別であると訴えられる可能性があります。
■ 雇用者側の対策
アメリカの雇用機会平等法における差別の基本的概念については、連邦法を中心としてコラムの第1回から第6回にかけて述べましたので、そちらを参考にして下さい。
基本的には、次のような事柄についての質問は避けるべきです。
例:
性別、年齢、生年月日
婚姻状態、家族構成、子供を預ける手段 (詳細は前回のコラムを参考のこと)
人種、出身国、国籍
身体障害、健康状態、病歴、労災補償の請求歴
逮捕歴
所属する社交・政治団体など (人種、出身国、あるいは信仰による差別につながる可能性がある)
原則として、職務遂行に必要な能力や経験に関する質問のみが許されることになります。例えば、社交・政治団体への加入についての質問自体は許されませんが、該当職務内容と直接の関連のある組織に所属するか否かといった質問なら許されます。例として、弁護士の場合、ワシントン州弁護士協会の会員であるかを問われたとしても、仕事との関連性が認められます。また、母国語は何かを問うことは出身国による差別として禁じられていますが、仕事が外国語を操る能力を必要とする場合には、言語能力に関する質問も認められるでしょう。
人事側は、面接を実施する前に法律の基礎知識を身につけ、避けるべき質問をしっかりと把握しておくことが不可欠です。人事課を設置していない中小企業では、万全を期す上で、外部から雇った人事専門家を面接に同席させ、違法の質問が出ないように努めるという対策もあります。前回のコラムでもご説明したように、法律を熟知しているはずの弁護士でさえ違法の質問を行っているのが日常茶飯事ですから、アメリカに進出して間もない日本の中小企業などは、特に注意を払う必要があると言えるでしょう。
(2005年6月)
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お断り = このコラムはあくまでも一般的な情報を読者に提供するのが目的です。法的トラブルが起こった場合は個々のおかれた具体的な状況によって法律の適用が異なることもあり得ますので、個人的に弁護士に相談されることをお勧めいたします。また、当コラムでは連邦法を中心に説明していますが、雇用関係には州法、更にはローカル法(市や郡の条例など)が関連してくる場合もあります。
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